各地で電力供給の綱渡り、寒波で-東北電と四国電が予備率3%に
稲島剛史-
東電HDと沖縄電管内以外の全地域で電力使用率が95%以上に
-
政府から消費者に対する節電要請は現時点で想定せず-経産相

1日を始める前に押さえておきたい世界のニュースを毎朝お届け。ブルームバーグのニュースレターへの登録はこちら。
寒波で暖房用の需要が増えたことなどを受け、各地で電力供給の綱渡りが続いている。気象庁によると、寒気が南下している影響で10日ごろまで全国的に気温の低い日が続くことが予想されている。
日本全体の需給調整などを担う電力広域的運営推進機関によると、東京電力ホールディングス(HD)と沖縄電力管内を除く全地域で8日午前に電力使用率が95%以上を記録した。東北電力と四国電力管内で午後5時以降、供給予備率が安定供給のために最低限必要とされる3%まで低下する見通しとなっている。
梶山弘志経済産業相は8日の会見で、「予備率最低限3%を維持するための融通、民間の自家発からの購入を含めて対応している」と述べた。需要を抑制するための政府からの節電要請は「いざというときにはあるかもしれないが、現時点では想定していない」と語った。
コンサルティング会社クラヴィス・エナジー・パートナーズの玉水順蔵代表は、「日本を含む北東アジアの気温低下を背景とした暖房需要の増加が予備率低下の主要因」と分析。それに加えて、コロナ禍による電力需要の低迷や再生可能エネルギーの増加などにより、「発電設備の稼働率を抑える状況にあったことも12月以降の需要急増への対応が遅れた」要因となった可能性があると指摘した。
電力需給の逼迫(ひっぱく)を背景に、日本卸電力取引所(JEPX)で取引されるスポット価格は高値での取引が続いている。JEPXの8日の取引では、平日に比べて週末の需要が低下する傾向があるにも関わらず、翌日受け渡し分の電力価格(全国24時間平均)が1キロワット時当たり91.69円と前日の99.90円に次ぐ史上2番目の高値となった。

玉水氏は、「低位推移してきたJEPXスポット価格に甘え、JEPXからの調達に過剰に依存した新電力には厳しい環境」とし、それらの新電力が同取引所での決済といった資金繰りなどに「支障をきたす可能性を排除できない」とした。
電力広域的運営推進機関は7日、関西電、中国電、北陸電、四国電管内で需給が厳しくなり他地域からの電力融通を指示。8日も関西電などの管内向けの融通を指示した。その前日には、供給力不足が継続的に発生している東電HDと関西電管内の発電設備を持つ企業に対して最大出力で発電所を運転することを求めるなど異例の要請を行っていた。
卸電力価格の高騰を受け、卸電力事業者として最大手の電源開発(Jパワー)の株価は8日、前日比6.6%高の1695円と、昨年9月中旬以来の高値で取引を終えた。一方、需給が逼迫して他電力から融通を受けた中国電力や北陸電力などの株価が一時値を下げる場面もみられた。