日銀のETF1日当たり買い入れ減額、縮小傾向のメッセージの声
長谷川敏郎、小田翔子-
日銀は4日にETF501億円を買い入れ、16年8月以来の低水準
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金額は縮小したいメッセージ、さらに運用弾力化も-大和証・阿部氏
日本銀行が買い入れを実施する日本株の上場投資信託(ETF)は、1日当たりの買い入れ額が約4年半ぶりの低水準だった。日銀は物価目標実現に向けて3月に政策点検を予定しているとあって、今回の減額はETF政策の方向性を示唆しているとの見方がある。
日銀が4日に通常のETFを買い入れた金額は501億円。昨年12月30日の701億円に比べて29%減り、2016年8月3日の347億円以来の低水準になった。16年7月末にETFの年間買い入れペースの上限を3兆円から6兆円に倍増(昨年3月には当面12兆円)して以降、おおむね約700億円が1回あたり買入額の最低ラインだった。

12月会見で黒田総裁はETF買い入れの点検が必要との認識を示す.
Photographer: Yukie Nishizawa/Kyodo News/Bloomberg
大和証券の阿部健児チーフストラテジストは「昨日の減額自体は買い入れが市場動向次第で上下に変動しうるというこれまで示していた文言の範囲で解釈できる」としながらも、「金額は6兆円前の水準に戻った。今回減額したことは日銀は金額は縮小したい方向だというメッセージが入っていた。3月の政策点検でもその方向で動いているとマーケットは受け止めた」と述べた。
日本銀行は昨年12月18日の金融政策決定会合で、2%の物価安定目標を実現する観点から施策を点検し、3月会合をめどに結果を公表することを明らかにした。黒田東彦総裁は同日の会見で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運営や上場投資信託(ETF)などの資産買い入れの方法が対象となると述べた。

日経平均株価は昨年2月から3月にかけて急落し、日銀の1日あたり買い入れ額は一時2004億円まで拡大した。その後は日経平均が30年ぶり高値まで正常化へ向かう中で買い入れ額は縮小傾向となっていた。「3月の点検では原則6兆円は維持しながら、場合によっては買わない可能性もあるなどとさらに弾力化を示唆する文言に修正しそうだ」と、大和証の阿部氏は予想する。
一方、日銀がETF買い入れを行った4日は午前のTOPIXの下落率が0.66%だった。東海東京調査センターの鈴木誠一マーケットアナリストは、金額は減額ながらも発動条件が変わったかの詳細な確認はまだ判断しづらいとした上で、上限6兆円ペースの中でも過去の実際の買い入れ額は縮小していたと指摘。1日あたり買い入れ額が縮小してもこれまでのストック効果から株価を上げる効果はあるとして、「これまでの買い入れをずっと続けていたらとんでもない株価になる。自然な調整なのかもしれない」とみていた。
昨年12月28日に日銀が公表した17、18日会合における主な意見によると、ETFについては「財務の安定性にも配意し、市場の状況に応じた柔軟な調整の余地を探るべきだ」などの声があった。野村証券の池田雄之輔チーフ・エクイティ・ストラテジストは3月会合では、ETFの買い入れペースは変えないものの、TOPIX型へのシフトを進める可能性があるとみている。