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中国のワクチン外交、見返り要求で逆効果にも-信頼得るデータ不可欠

  • 「中国は外交を持ち出すたびに大失敗する」とメキシコの元大使
  • 中国政府は7月以降、100万回以上の緊急ワクチン投与-中国外務省

中国企業が開発した新型コロナウイルス感染症(COVID19)ワクチンの臨床試験を行っている新興国の中で、パキスタンほど中国に友好的な国はそうないだろう。中国が何年にもわたり道路・鉄道・発電所に700億ドル(約7兆2600億円)近い融資をしたパキスタンでは、2つの中国製ワクチン臨床試験が進行中だ。政府高官さえも接種を受けている。

  だが同国最大の都市カラチで配車アプリ「バイケア」の二輪車運転手として働くファルマン・アリ・シャーさんは、中国製ワクチンの接種を「受けるつもりはない。信用していない」と言う。

Sinovac Seeks Covid Vaccine Approval Globally, CEO Says

中国シノバックのワクチン「コロナバック」

撮影:ニコラス・ボック/ブルームバーグ

  パキスタンなど中国製ワクチンの臨床試験が進む国々で重ねたインタビューや調査などで示されたのは、中国製ワクチンが十分な信頼性を得ていないということだ。こうした不信感に加え、ワクチン供給を中国に依存せざるを得ない貧しい数十の国々で国民が質の劣ったワクチンを与えられたと感じれば、世界的に大きな政治問題になる可能性もある。

  中国政府が打ち出した各国へのワクチン供給計画が意図していたのは、明確な外交的勝利だ。だがこれまでのところ緊急使用を認めているのは中国を除けばアラブ首長国連邦(UAE)だけだ。   

Views of Beijing as the CPPCC Opens

中国の習近平国家主席を描いた横断幕(北京で、5月21日)

撮影:Qilai Shen / Bloomberg

  メキシコの元駐中国大使で現在はマクラーティー・アソシエーツのシニアディレクターを務めるホルヘ・グアハルド氏は「中国にはワクチン外交を行い、人々の命を救う製品を配布する絶好の機会がある」と指摘。その上で、 「私の経験では中国は外交を持ち出すたびに大失敗する。支援を受けた国々を怒らせてしまうのだ」と話す。

  同氏によれば、ワクチン供給と引き換えに中国が相手国に求めているのは、米政府が制裁を発動している華為技術(ファーウェイ)の第5世代(5G)移動通信技術を利用するという約束、あるいは重要セクターに中国が投資することを認めることだ。「こうした言動の歴史を踏まえれば、また繰り返されても驚くことではない」と語る。

Data compiled by Bloomberg

  中国外務省はブルームバーグからの質問に対し、ワクチン開発中の中国企業は法律を厳格に順守し、臨床試験の第1、2相でワクチンが安全で効果的であることが示されたと説明した。中国政府は7月以降、100万回以上の緊急ワクチン投与を行い、「深刻な副反応は見つかっていない」ともコメントした。

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  米外交問題評議会(CFR)のグローバルヘルス担当シニアフェロー、 ヤンジョン・ホアン氏は「中国製ワクチンが唯一の選択肢である国では接種を受けるか拒否するかのどちらかだ。だが異なるワクチンの中から選べるとすれば人々は合理的になり、確実に欧米企業のワクチンが選ばれるだろう。すでにデータが公表され安全だ。中国は今のところ系統立ったデータを一切持っていない」と述べる。

  同氏はまた自国民14億人に一斉にワクチン接種し、人口の多い幾つかの新興国の需要をまかなうことができるとする中国は能力を過大評価している可能性があるともみている。中国製ワクチンを入手できなければ、新興国は他の供給国に目を向け「中国はてこを失うことになる。経済的損失だけでなく、外交および戦略上の利益も損なわれるだろう」と予想する。

Health Workers Administer Covid-19 Vaccines At Bronx Nursing Home

ファイザー・バイオテックのワクチン接種(ニューヨーク、12月21日)

撮影:エリック・リー/ブルームバーグ

  各国の指導者が使用を認めた全てのワクチンが等しく安全だと自国民を説得できなかった場合、二流品を与えられたと感じる人々は反発するかもしれない。中国が今年統制を強めた香港でさえ、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は今月23日、米ファイザーとドイツのビオンテックが共同開発したワクチンと英アストラゼネカのワクチン、中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)のワクチンの3種類から選択できると住民に伝えた。

  香港城市大学のニコラス・トーマス准教授(健康安全保障)は「一般の人々にCOVID19ワクチンをもっと受け入れられるようにするには透明性が必要だ。データがなければ、ワクチンに対する認識が二層化するのも無理はない」と指摘している。

Inside Emilio Ribas Institute Of Infectious Disease ICU As Covid Infections Continue To Rise

エミリオ・リバス感染症研究所のCOVID19集中治療室(サンパウロ、12月4日)

撮影:Jonne Roriz / Bloomberg

 

INDONESIA-HEALTH-VIRUS-VACCINE

ジャカルタに到着したシノバックのワクチン(12月)

撮影:インドネシア大統領宮殿/ AFP /ゲッティイメージズ

Kenyan Heathcare Workers Strike Against Covid-19 Conditions

ケニアのナイロビで行われた新型コロナで死亡した医療従事者の追悼集会(12月9日)

写真家:ルイス・タトー/ブルームバーグ

原題:China Is Struggling to Get the World to Trust its Vaccines(抜粋)

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