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日経平均のリスクヘッジ需要が急減-株価急変や2度の痛打響く

更新日時
  • 日経平均オプションの総建玉、一時は2009年以来の低水準に
  • レンジ相場や株価急落に対する確信が持てず-三井住友DS・生永氏

日経平均株価の将来の価格変動に備える投資家のリスクヘッジ需要が約11年半ぶりの低水準に落ち込んだ。株価レンジが急速に変化したことによって先行きの株価想定が描きにくいことに加え、ことし2度あった苦い経験の記憶なども一因ではないかとの声が聞かれる。

  日経平均をあらかじめ決められた期日に特定の価格で売買する権利である日経平均オプションの総建玉(残高)は、4日の株価指数先物・オプション12月限の特別清算値(SQ)通過後に約113万枚と、2009年5月以来の低水準に落ち込んだ。その後も120万枚強程度と、SQ直前の6割程度の水準にとどまっている。

09年水準まで急減

  三井住友DSアセットマネジメント・投資情報グループの生永正則氏は「参加者がオプションのポジションを積極的に取ろうとするのはレンジ相場になるか、急落リスクが高まるときだ」と語る。過剰流動性の中で新型コロナウイルスワクチンによる経済活動の正常化期待が強い上、急激にレンジ相場を上放れた現在は新たなレンジもまだ想定しづらいとして、「ポジションを取るまでの確信が持てないことが建玉の増えない要因」との見方を示す。

  日経平均は2017年後半以降、2万2000円を中心として弱気ムードが高まる際は2万-2万2000円、強気ムード下では2万2000-2万4000円のレンジでおおむね推移していた。こうしたレンジ相場が続いていたこれまでは、上値でのコール(買う権利)売り、下値でのプット(売る権利)売りのポジションを取ることで参加者は安定的に収益を得ることが多かった。

ことしは急落と急騰が発生

  ところが、ことしの日経平均は過去2年以上続いた株価レンジを大きく外れる場面が2回あった。2月後半からは新型コロナの感染拡大で日経平均は1万6358円まで一時急落したが、金融政策や財政政策の期待からその後は急反発。11月の米大統領選の重要イベントを混乱なく通過した後は株価が急騰し、日経平均は29年ぶり高値を付けた。

  「3月のSQは急落場面で2万円などのプットの売り手、12月のSQにかけてはコールの売り手が損失を被った。両方ともそれなりにインパクトのある痛打だった」と、生永氏は振り返る。売り手が有利になりがちなオプション市場で、「ことしは珍しく2回も痛い目にあったことが慎重にさせているのだろう」と推測する。

市場機能の低下

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘チーフ投資ストラテジストは、資金特性が影響を与えている可能性があるとみる。「債券市場に向かっていた世界中の有り余るマネーが利回りを稼げず、絞り出されるように株式市場になだれ込んでいる」と藤戸氏。そうした資金は「デリバティブを使わず、代表的な大型株を中心とした現物株指向が強い」と言う。 

  盛り上がりに欠けるオプション市場の状況は、18日には18.07とコロナ急落後の最低水準を付けた日経平均ボラティリティー・インクデックス(VI)の低下からも見て取れる。新型コロナ変異種への警戒が高まった22日も、上昇は限定的だった。「米金融緩和が長期化する見通しの中で、急落に対するニーズは減少する。一方で株価急上昇で来年のアップサイドも相当織り込み、上下どちらも大きく振れるシナリオは描きにくい」と、藤戸氏は語る。

  オプションの総建玉は、13年をピークとして長期的にみてもじりじりと下降トレンドを示している。いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は「日本株のボラティリティー(変動性)は以前に比べて低下した。日銀が上場投資信託(ETF)を買い続ける中で、いびつな市場となっている」と分析。総建玉の低迷は「日本株の市場参加者が減少し、市場としての機能が低下している表れの可能性がある」と述べた。

  25日の日経平均株価は小動きに終始し、日中値幅が78円33銭と1月20日以来11カ月ぶりの小幅にとどまった。東証1部売買代金はことし最低。三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之シニアストラテジストは、「年末接近で利益確定売りは出ているが、下値では買いそびれた向きからすかさず買いが入る。今月はこうした繰り返しとなっていることで、ほとんど株価指数は動かなくなっている」と話した。

(最終段落に日経平均の日中値幅11カ月ぶり記録を追加します)
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