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2020年に進んだ「明と暗」-露呈した米株市場と実体経済の断絶

  • 投資家はコロナ禍の苦しみを無視し、ユートピア的な未来に賭けた
  • 富豪CEOの資産が大幅増の一方、食べ物に困る成人は2700万人に

2020年は米株式市場にとっては良い1年となり、ダウ工業株30種平均は3万ドル超の最高値付近で年末を迎えようとしている。一方、米国の新型コロナウイルスによる死者は過去2週間だけで約3万人に上る。

  最近は小型株のパフォーマンスが大型株に追いつき、ラッセル2000指数の年初来上昇率は約17%になっている。一方でハーバード大学の調査によると、米国で活動している中小企業の数は25%減った。

  テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の資産は今年、株高によって推定1400億ドル(約14兆5000億円)増加。アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスCEOとフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOの資産も合わせて1000億ドル増えた。一方、食べ物に困る米成人の数は約2700万人に増えたと推計される。

  こうした明らかな断絶を説明する際にウォール街でよく言われるのが、「株式市場は経済ではない」というものだ。市場と実体経済の明暗がはっきりと分かれる中、2020年はこの言葉がこれまで以上に持ち出された。

  では、そのウォール街はどうか。今年の相場のテーマはどういうわけか、この陰鬱(いんうつ)な現状の混乱と苦しみを無視し、ユートピア的な未来に先に飛ぶというものになった。

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  そうなるには、それなりの理由もあった。2020年に変わらず仕事を続けられた幸運な人たちは、裁量支出する先があまりなくなったことで貯蓄が膨らんだ。こうして余った資金の多くは株式市場に流れたとみられる。EPFRグローバルによると、12月15日までの1週間で米国の株式ファンドには294億ドルが流入した。これは週次では史上5番目の大きさだという。増えた貯蓄の残り分は、新型コロナの脅威が落ち着けば旺盛な消費支出という形で経済に戻ってくるだろう。

  今年の数々の出来事は、金融政策のすさまじい力と、その悲痛な限界も浮き彫りにした。経済活性化のために金利を可能な限り低く抑えようとする米連邦準備制度の努力は、債券市場で得られるリターンを圧迫し、投資家を株式市場に向かわせた。要するに米金融当局は、外食など日常的な活動でリスク回避が求められていた時に、金融市場でのリスクテークを奨励していたのだ。

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  資本市場の好環境維持は企業の存続に役立ち、新型コロナ危機が落ち着けば、今年失われた多くの雇用を取り戻すのにも寄与するだろう。

  しかし、株式市場は残酷かつ計算高い生き物であり、人々の雇用を助けることの優先順位が高いわけではない。投資家もまた、仕事および経済の恒久的な構造変化に賭けているように見受けられる。  

原題:
It’s Been a Great Year for Stocks and a Bear Market for Humans(抜粋)

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