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日銀のETF購入開始から10年、残高膨張で高まる有効活用論

  • 別勘定移転や個人へ譲渡案、塩漬けなら財務の健全性にも影
  • 株高下の購入にバブル助長の声、市場の評価は功罪二分

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日本銀行が上場投資信託(ETF)の買い入れを始めてから15日で10年が経過した。金融緩和の一段の長期化も見込まれる中、大規模購入の継続で積み上がった保有残高の有効活用やリスクを巡る議論が足元で高まっている。

  ETF買い入れは白川方明前総裁時代に年間4500億円程度で開始。黒田東彦総裁が2%物価目標に向けて異次元緩和を進める下で段階的に増やされ、現在は約6兆円を原則に、新型コロナウイルス対応で当面、約12兆円を上限としている。

  ニッセイ基礎研究所の推計では、日銀のETF保有残高は11月末時点の時価ベースで45兆603億円。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を上回り、日本株の最大の保有主体になったとみられる。

  日銀で金融市場局長を務めた山岡浩巳フューチャー取締役は、日銀が塩漬けのままETFを保有し続けること自体が「産業構造の変化に伴う中長期的なリスクが高い」と語る。保有ETFを別勘定に移転し、「投信化して売却していく、入れ替えをしていくといったスキームを考えていかざるを得ない」とみる。

  市場では年金資金への売却や個人に直接譲渡する案など日銀保有ETFのさまざまな活用方法が指摘されている。日本の家計資産の過半を現金・預金が占める中、政府が旗を振っても動きが鈍い「貯蓄から投資」を促す利点があるとの声も出ている。

成長するクジラ

日銀保有ETFの時価は約45兆円に増加

出所:ニッセイ基礎研究所

備考: 11月30日現在のデータ

  日銀はETF市場の流動性改善を狙いに、保有ETFの貸し付けを今年6月から実施しているが、11月末の貸付残高は1802億円にすぎない。

  償還期限のないETFは、買い入れとともに根雪のように日銀のバランスシートに積み上がる。将来的な金融緩和政策からの出口を展望しても、国債が満期を迎えて減少していく一方でETFは残り続け、日銀財務の健全性に影響を及ぼすことが日銀内でも懸念されていると関係者は指摘する。

  関係者によると、2%の物価安定目標の実現が遠い中で、新型コロナウイルス感染症の影響が加わって、日銀内では金融緩和の持続性と副作用に配慮した政策運営が強く意識されつつある。

  政井貴子審議委員は11月16日の会見で、ETFの保有残高が相応の規模になっているのは事実とし、「さらなる柔軟性向上や市場の育成といった観点を含めて、前広に議論を重ねていく必要がある」と指摘。鈴木人司審議委員も今月4日、「ETFには期日がないことを考えた上で、持続力・柔軟性についてさまざまな工夫が必要だ」と語った。

  関係者によると、日銀内の一部ではESG(環境・社会・企業統治)投資に活用する案もささやかれているが、支持が広がっているわけではない。

弾力的な買い入れ

日銀は5月以降、ETF買い入れを抑制

出所:日本銀行、ブルームバーグ

備考:12月は14日までのデータに基づく

経営規律・価格発見にゆがみ

  ブルームバーグが今月1日から4日にかけて38人のエコノミストを対象に行った調査では、日銀のETF買い入れは「効果が上回る」と「副作用が上回る」との回答が同数の19人となった。

  株価が年初来高値を更新し続けても、日銀が買い入れを継続していることを疑問視する声も増えている。伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは、今回のような相場上昇局面での買い入れは「バブル化を助長するのみ」と警告する。

  クレディ・アグリコル証券の森田京平チーフエコノミストは「株式市場が本来持つ経営への規律付け機能のゆがみや、時価発見機能の低下をもたらしている可能性がある」と指摘する。

  黒田総裁は11月24日の参院財政金融委員会で、ETFを通じた日銀の株式保有割合は市場全体の6%程度にとどまっているとし、「株式市場の機能度が著しく阻害されているということはない」との見解を示した。

  弾力的な買い入れ方針の下で、通常ETFの購入額は相場が急落した3月の1兆5232億円から、11月には1402億円まで減少した。ブルームバーグ調査では3割が早期に原則の年間約6兆円の買い入れペースに戻すべきだと回答した。

  明治学院大学経済学部長の佐々木百合教授は、ETF買い入れは「株価下落による資金調達の難化を和らげ、消費マインドを冷やさないための効果があった」とする一方、「株価が下落することを恐れてこの政策はそのまま継続されてしまった」と指摘。コロナ収束を想定し、早期に「出口について考えておくことが重要だ」と語る。

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