コンテンツにスキップする

遺伝情報活用の医薬品、コロナワクチン開発成功を機に期待高まる

  • モデルナやビオンテックのワクチンはmRNA技術を利用
  • 2、3年以内にがん治療で初のmRNA医薬も-ビオンテックCEO

新型コロナウイルス感染症(COVID19)ワクチンの実用化は、このウイルスのパンデミック(世界的大流行)との闘いにおける画期的な出来事にとどまらない。がんから心臓病に至るまで、治療が難しい他の疾病の克服につながり得る型破りの技術の確立に向けた足掛かりになりそうだ。

  米食品医薬品局(FDA)が11日に緊急使用許可(EUA)の付与した米ファイザーとドイツのビオンテックのワクチンと、近くEUAを与えられる見込みの米モデルナのワクチンは、いずれもメッセンジャーRNA(mRNA)技術に基づく。この技術はこれまで臨床試験以外で使われたことがなく、治験で示されたコロナに対する有効性の高さは、最も熱心な提唱者の一部も驚くほどだった。

Chairman of Biontech Ugur Sahin

ビオンテックのウグル・サヒンCEOは約20年前、妻と共にがん治療におけるmRNA技術の研究を開始した

写真家:Florian Gaertner / Photothek via Getty Images

  元ハーバード大学の幹細胞生物学者で、2010年のモデルナ創業を支援したデリック・ロッシ氏は「われわれは今、mRNA治療の時代に入りつつある」と指摘。「全世界がこれを目にした。この分野での投資とリソースが増えるだろう」と述べた。

  コロナのパンデミックは、ファイザーなど資金力が豊富な企業に一層のリスクテークを促すきっかけになるなど、新しい技術を試す上で申し分のない機会を提供したとも言える。ただ、ビオンテックとモデルナが長年にわたってmRNA医薬の開発に取り組んでいなければ実現しなかった。

  mRNAはDNAから転写された遺伝情報を基にタンパク質を合成する。mRNAワクチンはこの仕組みを利用し、体内の細胞を実質的にワクチン工場に変えるものだ。体で分解される前に細胞に届ける必要があり、mRNAのもろさが大きな難点の一つだった。コロナワクチンでは、mRNAの修正された形態を活用し、ナノ粒子でコーティングすることでそれに対処した。

How mRNA Vaccines Work

The vaccine spurs healthy cells to produce viral proteins that stimulate a potent immune response

Sources: Pfizer, Bloomberg research

  ビオンテックのウグル・サヒン最高経営責任者(CEO)は約20年前、妻で共同創業者のオズレム・トゥレチ氏と共にがん治療におけるmRNA技術の研究を開始した。サヒン氏によれば、この研究から学んだことを活用することでコロナワクチンのプロジェクトを迅速に進めることができたという。

  サヒン氏はインタビューで、がんの分野で2、3年後に初のmRNA医薬が承認されているかもしれないと語った。

  ロッシ氏は、今後10年から20年後にはほぼ全ての感染症ワクチンがこの技術を使うようになると予想。より迅速かつ低コストの開発が可能なことが理由の一つという。ロッシ氏はモデルナ株を依然として保有しているが、同社との関係はなくなっている。

がんやCMV感染症に有望か

  mRNAは従来のアプローチでは効果がなかったウイルスに対するワクチンの開発に役立つ可能性がある。モデルナでコロナの次に最も開発プログラムが進んでいるのは、サイトメガロウイルス(CMV)に対するワクチンだ。

  CMV感染症は妊娠中の母親から胎児にうつることで先天性欠損症を引き起こし得る。科学者はこれに対するワクチン開発に50年間取り組んできたが、モデルナはmRNA技術が同社に優位性を与えると考えている。中期段階の臨床試験の暫定結果は有望な内容で、来年にも最終段階の試験を始める可能性がある。

  ビオンテックの研究はコロナ以外ではがんの領域が中心。予防ではなく治療に照準を定めており、幾つかの異なるアプローチを試している。コロナワクチンの成功がもたらすキャッシュフローは、同社ががん患者を対象とする臨床試験を推し進めることも可能にするとみられる。

原題:
First Covid Vaccines’ Triumph Raises Hope for Cancer Fight(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE