香港不動王の鄧成波氏、資産の大規模売却図る-ブーム期に積極投資
Shawna Kwan、Venus Feng-
鄧家が保有する不動産ポートフォリオは約1兆円と評価
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流動性の逼迫による売却ではないと息子のスタン・タン氏
香港の不動産王、鄧成波氏が大規模な保有不動産売却を探っている。鄧家は不動産市場の絶頂期に事業を拡大していた。
約60年間にわたり集めた店舗用不動産を大量に保有し「舖王(ショップキング)」とも呼ばれる鄧氏は、市民の抗議活動と新型コロナウイルスの感染拡大に伴う深刻なリセッション(景気後退)で打撃を受けた1人だ。
鄧家が保有する不動産ポートフォリオは約750億香港ドル(約1兆円)と評価されているが、賃貸収入がなくなる中で、そのうち200億香港ドル余りを今年売りに出したことがブルームバーグがまとめた物件情報やニュース報道、届け出で分かった。

鄧成波氏(2018年)
出典:明報
不動産ブームのピークだった3年前、商業用不動産に10億米ドル(約1040億円)以上を投じていた鄧氏だが、今はここ10年余りで最も落ち込んでいる市場で最も活発な売り手となっている。香港一の富豪、李嘉誠氏率いる長江実業集団は約3年前、高層ビル「中環中心(ザ・センター)」の保有権益を売却。香港のオフィスタワーの売却額として過去最高だった。

鄧耀昇(スタン・タン)氏
出典:スタングループ
鄧氏の息子で鄧家の不動産事業を統括している鄧耀昇(スタン・タン)氏によれば、ここ数年進めているのは非中核資産の売却。最近の売却は地元メディアが報じているような流動性の逼迫(ひっぱく)によるものではないと同氏は語った。
鄧家の資産管理会社スタン・グループ(ホールディングス)は、売りに出している不動産の規模について異論を唱えているものの、秘密保持契約があるとして具体的な数字への言及は控えた。
鄧耀昇氏は「資本が必要で良い機会がある場合は、状況に応じて売却する」と述べ、「市場のセンチメントは悪いが、不動産の評価額は大幅には下がっていない」と指摘した。

鄧家が先月売りに出した住宅地の一角
写真家:Chan Long Hei / Bloomberg
ただ、不動産コンサルティング会社CHFTアドバイザリー・アンド・アプレイザルのシニアディレクター、アレックス・レオン氏は「このところ良い値で売ることはできない。オーナーの財務力が許せば、むしろ不動産の保有を続けるだろう。今なら損失を出して売ることになる公算が大きいためだ」と話している。
原題:Hong Kong’s Shop King Struggles to Sell Billions in Property (1)(抜粋)