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日銀ETF:含み益10兆に拡大、保有総額GPIF抜く-遠のく出口

  • 11月末含み益は11カ月ぶりに過去最高更新、約10兆円に膨らむ
  • 株価急落時の大量購入が貢献、無尽蔵の資金の強み-ニッセイ基礎研

日本銀行が保有する上場投資信託(ETF)の時価評価が、株高の恩恵で急増している。含み益は11月に前月比2倍に膨らみ、過去最高を更新したとみられる。保有総額は日本最大株主の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を上回ったもよう。    

  ニッセイ基礎研究所の試算によると、日銀が保有するETFの時価は11月末時点で推定45兆603億円で、取得価格との差である含み益は同9兆8567億円。日経平均株価が29年半ぶりの高値を更新する中、同月には含み益が一時10兆円を超える場面もあったもよう。

Bank of Japan Governor Haruhiko Kuroda News Conference After Rate Decision

10月の日銀会合後の会見で発言する黒田総裁.

Photographer: Karina Nooka/The Nikkei/Bloomberg

  日銀の含み益は昨年12月末に推定6兆7642億円と過去最高になった後、新型コロナウイルスによる株価急落でことし3月末には3000億円程度に縮小。その後、株価上昇で増加を続けた。日銀決算によると9月末時点で5兆8469億円だった。

  ニッセイ基礎研の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「日銀は株価が急落したときの3、4月だけで2兆円台後半の大きな買い入れを行った。その後の上昇で含みが増えている」と語る。

加速する含み益

日銀のETF含み益は10兆円規模に

出所:ニッセイ基礎研究所

  日銀は2010年にETF購入政策を開始した。年4500億円ペースでスタートした買入額の上限は1兆、3兆、6兆へと増加し、ことし3月には当面12兆円になった。ニッセイ基礎研の井出氏は、「資金を無尽蔵に使えない通常の投資家」には、日銀のように株価下落局面で常に買い入れを急増させるような手法はとれないことなどを考えると、「含み益は政策を単に10年続けてきた結果でしかない」という。

  大和証券投資情報部の石黒英之シニアストラテジストは、含み益拡大が政策目的ではない以上、株式市場にとってはむしろガバナンス不全の弊害が大きいとみる。ETF買い入れペースを6兆円に倍増させた16年以降は、「経営がしっかりしていなくとも株価が上昇するため、日本企業の株主資本利益率(ROE)は上がらなくなった」と指摘する。

  また、井出氏の試算では、11月末の日銀ETF残高はGPIFの推定日本株保有額44兆8055億円(運用資産をTOPIXに完全に連動させ、9月末時点から売買を行っていないとの前提)を初めて上回った。「日銀の東証1部の保有比率は7%弱となって、おそらく日本株の最大の保有機関となった。さらに両者の保有額の差は広がっていく」と同氏は予想する。

難しい出口

  野村証券の伊藤高志エクイティ・マーケット・ストラテジストは保有比率の逆転を、両者の仕組みの違いで説明する。機関投資家のGPIFは「運用資産が増えない限り、株高の際は他の資産とのウエート調整で機械的に株を売らなければならない」。一方、日銀は「危機対応で買うときのルールは決めたが、エグジット(出口)のルールは決めてなかった。売却せず残高は積み上がるため、いつかはこうなる」という。

  富国生命投資顧問の奥本郷司社長は「年金運用のGPIFは受託者責任のもとに外部委託もしっかり管理し、スチュワードシップコードに則り成長資金を供給する姿勢で運用している」と語る。それに対して日銀は「自らの資産として貯め込んでいるだけで、誰も責任を取らない構造が見え隠れする。量が大きくなればなるほど、出口が難しくなっているようにみえる」としていた。

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