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アップルのサプライヤー、バイデン次期政権でも脱中国の動き継続へ

  • アップルは優遇税制で米国での半導体生産後押しを政府に働き掛け
  • サプライチェーン分散化の一方で中国製造業との結び付きも深める

トランプ米政権下で始まったテクノロジー業界の世界的サプライチェーン分断は、バイデン次期米大統領の就任後も続きそうだ。

  中国の工場への委託生産に頼ってきた多くのテクノロジー企業の中で最大手のアップルは、一部の「iPad(アイパッド)」と「MacBook(マックブック)」の生産を中国からベトナムに移す。中国でのアップル製品の生産を受託する台湾の鴻海精密工業(フォックスコン)は、ベトナムへの新規投資に2億7000万ドル(約280億円)を割り当てた。

  鴻海を創業した郭台銘(テリー・ゴウ)氏は一体化していたサプライチェーンが少なくとも2つに分かれる傾向を示す「G2」という造語を生み出した。

  鴻海の劉揚偉会長はインドや東南アジア、米州などは将来的にそれぞれ独自の製造エコシステム(生態系)を持つことになる可能性があるとの認識を8月に示した。インドやベトナムなどはインフラを整備し、低コストと地政学的懸念の少なさを売りに製造業を呼び込む取り組みを強化しており、こうした傾向は避けられないようだ。

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Inside the Most Ambitious Push Yet to Make iPhones Outside China

携帯電話を検査するフォックスコン系ライジング・スターズ・モバイル・インディアの従業員(2019年)

Photographer: Karen Dias/Bloomberg

  調査会社ギャブカル・ドラゴノミクスのテクノロジー担当アナリスト、ダン・ワン氏は「中国のコスト上昇と予測不可能な米国の政治動向で、企業は中国から一部製品の生産を移そうとしている」と指摘。「ベトナムとインドの競争力改善もあり、こうしたトレンドは続く」と述べた。

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  ティム・クック最高経営責任者(CEO)の指揮下で中国を中心とする現在のサプライチェーンを築き上げたアップルは、大掛かりな中国脱出の動きに抵抗していたが、ここ数年は代替となる選択肢の模索を加速。トップクラスのスマートフォンメーカーを呼び込むというモディ政権の政策もあり、アップルは組み立てパートナーを通じてインドでの「iPhone(アイフォーン)」生産能力を拡大し続けている。

  アイフォーンの受託生産大手としてインドに遅れて進出する台湾の和碩聯合科技(ペガトロン)はインド部門に110億ルピー(約155億円)を投じ、2021年後半にも現地生産を開始すると11月に発表した。

  アップルはまた、優遇税制で米国での半導体生産を後押しするよう米政府に働き掛けている。同社の主要サプライヤーである台湾積体電路製造(TSMC)はアリゾナ州で半導体工場を計画。アルファベット傘下のグーグルもウィスコンシン州でのサーバーの主要部品組み立てをフォックスコンに発注した。

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Release of the Apple iPhone 12 Pro Max and Mini Models in Stores

「アイフォーン12」のイベント(シドニー、11月)

Photographer: Brendon Thorne/Bloomberg

  アップルなど米企業から生産を請け負う台湾の緯創資通(ウィストロン)はメキシコと台湾での生産能力拡大を今月発表。同社は米ウエスタンデジタルのマレーシア工場も買収する。

  中国で生産された製品に対しトランプ政権が課した追加関税で生産体制を考え直す国際的企業は他にもある。任天堂は製品組み立ての主要パートナーであるフォックスコン・テクノロジーに中国事業の地理的な代替策を求め、今や家庭用ゲーム機「スイッチ」の一部生産をマレーシアでシャープに託す。日本企業2社の橋渡しをしたのがシャープの株主フォックスコン・テクノロジーだ。

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  サプライチェーンの分散化を図るアップルだが、一方で中国製造業との結び付きも深めている。中国の立訊精密工業(ラックスシェア)は今年、ウィストロンが中国に設けていたアイフォーン生産施設を取得することで合意。中国本土企業が初めてアイフォーンを生産することになった。

  事情に詳しい関係者によれば、中国の比亜迪電子(国際)(BYDエレクトロニック・インターナショナル)は今、タブレット「iPad(アイパッド)」の生産受注をフォックスコンや台湾の仁宝電脳(コンパル・エレクトロニクス)と分け合う。ワイヤレスイヤホン「エアポッド」の生産はラックスシェアと中国の歌爾が独占している。

  鴻海の劉会長が最近語ったのは、中国で大規模に事業を展開するのに30年かかり、インドであれどこであれ一夜にして肩を並べる公算は小さいということだ。ギャブカルのワン氏はサプライチェーンの変更には時間が必要で、「少なくとも今後5年は中国が主要なエレクトロニクス製造の中心であり続ける」と話した。

原題:Apple Suppliers’ Exodus From China Won’t Slow Down Under Biden(抜粋)

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