ECB、域内銀行は引当金積み増し必要な可能性-金融安定報告
Alexander Weber、Nicholas Comfort-
緊急支援終了時に一部の企業が返済できず、銀行に負担及ぶリスク
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銀行の引当金、「一部では見方が甘い」-デギンドスECB副総裁
ユーロ圏の銀行は各国政府の新型コロナウイルス対策支援が終了し大量に増えた債務に経済が向き合わなければならない時に備え、貸倒引当金をさらに積み増す必要があるだろうと、欧州中央銀行(ECB)が論じた。
ECBは25日公表した金融安定報告で、法人向け融資の焦げ付きに備える引き当てがこれまでの危機時に比べて少なく、米国の銀行の水準も下回っていると指摘。これは各国政府とECBの措置によってデフォルトリスクが軽減されたことと、銀行の低い収益性が一因だと分析した。
懸念されるのは、緊急支援が引き揚げられた時に一部の企業が返済に行き詰まり、銀行が新たな負担にさらされることだ。
デギンドスECB副総裁は報告書で、「引当金は増えているが、一部では見方が甘いように思われる。保証と支払い猶予によって、経済パフォーマンスの弱さが貸し倒れにつながるまでの時間が長くなった可能性がある」との見解を示した。
ECBはまた、一部資産のバリュエーションが「伸び切っている」ことから、突然の下落が金融システムに衝撃を与えるリスクも強調した。
Areas of Risk
ECB sees four main threats to financial stability
Source: European Central Bank
企業が新型コロナ感染抑制のためのロックダウン中も賃金支払いを続けキャッシュフローを維持できるよう、政府はローン保証や債務支払い猶予、税繰り延べなどで支えてきた。ECBも低金利や金融緩和で政府を支援。銀行に対しては一時的に規制を緩和したが、その代償として少なくとも今年いっぱいは配当を見送るよう求めていた。
デギンドス副総裁は記者団に、事実上の配当禁止を終わらせるかどうかの決定は12月に、経済見通しについてより多くの情報がそろった時点で行うと述べた。12月10日にECBは政策決定と同時に最新の経済予測を発表する。
「配当支払いの停止はいわば異例の一時的な措置だった。パンデミックという例外的な状況への対応であり、期限付きの措置でなければならないことはわれわれも十分に承知している」と副総裁は述べた。
メルシュ理事は25日に英紙フィナンシャルタイムズ(FT)に掲載されたインタビューで、銀行の内部モデルと資本計画の「保守主義」も配当に関するECBの決定に影響するだろうと語った。
もう1つの差し迫ったリスクである英国の欧州連合(EU)離脱については、欧州委員会が英国のデリバティブ(金融派生商品)クリアリングハウス(清算・決済機関)にEU内銀行との一時的な取引継続を認めたことから「おおむね抑えられている」との認識を示した。
長期的には気候変動による問題を忘れてはならないともくぎを刺した。炭素集約型セクターへの銀行融資が減っている兆候はほぼ見られないと指摘した。
原題:
ECB Warns European Banks May Need More Bad-Loan Provisions(抜粋)