コンテンツにスキップする

航空会社に公的支援の備えを、資本注入や2強合併も視野-竹中氏

更新日時
  • 将来を見据えて業界再編を行う産業再生機構のような組織も必要
  • NTTのドコモ完全子会社化を受け、公正な競争確保に向け議論を

菅義偉政権が新たに設置した成長戦略会議の有識者メンバーで慶応大学名誉教授の竹中平蔵氏は、新型コロナウイルスの影響で苦境に立たされている航空業界に対して、資本注入を含む大胆な公的支援の実行に向けた備えが必要だと提言した。さらに資本注入をてこに業界再編を進めるべきだとの考えを示した。

Operations at Haneda Airport Ahead of ANA and JAL Earnings

羽田空港に駐機された旅客機(10月25日)

Photographer: Kentaro Takahashi/Bloomberg

  竹中氏は20日のインタビューで、ドイツ政府がルフトハンザ航空救済の一環として資本注入したことに「大変注目している」と発言。公平な競争をゆがめる可能性があることから「普通はあり得ない」が、新型コロナを言い訳に思い切った政策がとられているとし、「日本もやるべきだ」と語った。

  感染の拡大による移動制限などで旅客需要が蒸発し各社の業績が急速に悪化する中、英ヴァージンアトランティック航空など経営破たんに追い込まれる会社も出ている。感染再拡大による需要低迷の長期化懸念が高まる中、人員や機材の削減など自助努力には限界があるとし、国際航空運送協会(IATA)は各国政府の追加支援の必要性を訴えている

  航空会社への公的支援では、ルフトハンザの株主がドイツ政府による90億ユーロ(約1兆1150億円)の出資を含む救済案を6月に受け入れ、エールフランスKLMもフランスとオランダの政府から金融支援を得た。国内航空会社は政府系金融機関の融資や着陸料の引き下げなどの支援を受ける一方、ANAホールディングス(HD)や日本航空(JAL)は劣後ローン公募増資による財務強化を図っている。

  竹中氏は航空業界への支援について、「政策投資銀行で融資するとか、今ある仕組みでやることは止血としては当然意味があるが、もっと大きな仕組みの中でやらざるを得ない時が来る気がする」と述べた。

  その上で、不足した資本の注入だけでなく業界再編といった「プロアクティブ(先を見越した)な行為もできるような産業再生機構のようなもの」を新たに設立することも有効との認識を示した。新型コロナを契機とした業界再編では、韓国の政府系銀行の支援の下、大韓航空がアシアナ航空の買収を発表している。

「大胆な仕組み」を

  航空業界再編の具体案については新組織が考えるべきだとした上で、同氏は「この際ANAとJALが一緒になったらいい」との見解を明らかにした。両社の統合では国内線と国際線を分けるなどさまざまなやり方がありそれぞれ「一長一短あって簡単にはできない」と語る。しかし「少なくともそういった大胆な仕組みを作るチャンスだ」との認識を示した。

  一時前週末比4.3%安まで下落していたANAHDの株価は竹中氏の発言を受けて上昇に転じ、一時2.5%高の2594円まで上昇した。JALの株価も同7.2%高の2053円をつけた。

  政府は10月、安倍晋三政権下で成長戦略策定を担ってきた未来投資会議を廃止し、新たに成長戦略会議を設置。加藤勝信官房長官を議長とする同会議には、竹中氏や三井住友フィナンシャルグループの国部毅会長、SOMPOホールディングスの桜田謙悟社長など8人の有識者が参加している。

  竹中氏は「競争政策は成長戦略の1丁目1番地」だと述べ、航空業界に加え通信・電力業界の大手による市場寡占の問題や中小企業の再編など競争政策に関して幅広い議論を行うよう呼び掛けている。

  通信業界では、NTTが9月に4兆円以上を投じて国内携帯大手NTTドコモ完全子会社化することを発表。経営効率を高めることで、菅政権が掲げる携帯料金の引き下げを行う余力が生まれる可能性がある一方で、KDDIソフトバンクなど通信事業者28社は公正な競争が阻害される懸念があるなどとする意見申出書を今月総務相に提出している。

  かつて小泉純一郎政権下で総務相としてNTT持ち株会社制廃止などを目指した竹中氏は、次世代通信規格「5G」時代を迎えドコモの子会社化で国際競争力を確保する必要があることは理解できるものの、政府資本が入るNTTと民間企業の間の競争が健全と言えるのかについて専門家による議論も必要だと指摘した。

(株価を追加して更新します)
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE