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日産が三菱自株売却検討着手、資本関係維持の必要薄れる-関係者

更新日時
  • 業務面での協力は継続も、仏ルノー含めた巨大自動車連合は転換点に
  • ゴーン元会長逮捕やコロナで経営環境激変、日産は生き残りへ全力

日産自動車が、保有する三菱自動車株について売却を含めた資本関係の見直しの検討に着手したことが分かった。三菱自を巡ってはカルロス・ゴーン元会長(特別背任罪などで起訴)が巨額の出資を決断して傘下に収めた。その後、元会長の逮捕や新型コロナウイルスの感染拡大など会社を巡る状況が変化し、資本提携からわずか4年で大きく方針転換することになる。

Nissan, Renault and Mitsubishi Motors Heads Hold News Conference as Ghosn Seeks to Regain Clout

アライアンスの会議体発足会見に出席したルノーのスナール会長(左)、当時の日産の西川社長(真ん中)と三菱自の益子会長(2019年3月12日)

Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

  事情に詳しい複数の関係者が公にされていない情報だとして匿名を条件に明らかにした。関係者らによると、日産が三菱自株売却を検討する背景には新型コロナの影響などで業績が悪化している三菱自の回復に想定よりも時間がかかるのではないかとの懸念があるほか、仏ルノーを含めたアライアンス(企業連合)で協業体制を構築しており、資本関係を維持する必要性が薄れてきたと判断された。

  関係者らによると、三菱自を含むアライアンスでの業務面での協力関係は重要で今後も継続していく予定。日産による三菱自株の売却はより幅広いアライアンス関係の見直しの第一歩になる可能性があるという。

  前週末比上昇で取引されていた三菱自株は売却検討の報道後に下落に転じ、一時同3.6%安の190円まで値を下げた。その後は再び上昇に転じ、同2.5%高の202円で取引を終えた。日産株は上げ幅を拡大し、6月9日以来の日中高値となる5.7%高の470円まで上昇し、終値は469円だった。

  日産広報担当の百瀬梓氏は電子メールで、アライアンスの基本方針は各社のブランド戦略や成長戦略を前提にその実現のために相互にメリットのある案件で協業をすることであり、三菱とは現在、プラットフォームの共用化やパワートレインの共通化なども進めているとし、三菱自と「資本関係の見直しを行う予定はない」とした。

  三菱自広報部の井上徹二氏は、「日産とはさまざまな協業を進めており、資本関係を見直す予定はない」とコメントした。ルノーの担当者はコメントを控えるとした。

大穴シナリオ

  日産は2016年、燃費不正問題で経営危機に陥っていた三菱自の第三者割当増資に応じて約2370億円を出資し、同社の発行済み株式の約34%を取得。三菱重工業や三菱商事、三菱東京UFJ銀行などを抜いて筆頭株主となった。これにより、ルノー・日産・三菱自アライアンスは年間生産台数が1000万台規模に拡大し、トヨタ自動車や独フォルクスワーゲンに匹敵する世界最大級の自動車グループに成長した。

  東海東京調査センターの杉浦誠司アナリストは、ルノー・日産・三菱自のアライアンスに「効果はない」とし、関係を見直すべきと指摘した。その上で、「いっそのこと一つになるか別れるか」の判断をすべき、との見方を示した。

  三菱自への出資にあたっては自動車業界の覇権を目指していたゴーン元会長が三菱自の当時の益子修会長(故人)とトップ同士で交渉を重ね、短期間で合意にたどり着いた。三菱自との資本提携見直しでゴーン元会長が築いた体制からの脱却がさらに進むことになる。

  関係者らによると、三菱自株の売却先としては同社の20%を保有する第2位の株主である三菱商事などが候補となる可能性もあるが、具体的なことは何も決まっていないという。

  ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストは、三菱自は「三菱グループ内への出戻りとか三菱グループが出資を増やすのがメインシナリオ」とした一方、「大穴シナリオ」として中国メーカーやプライベート・エクイティ・ファンドなどが日産保有の三菱自株の売却先として考えられると述べた。

  18年11月のゴーン元会長の逮捕以降、日産とルノー、三菱自の業績は急激に悪化。日産はゴーン時代に始まった過度な値引きの抑制やガバナンス体制の大幅な見直しなどを通じて立て直しを図ってきたが、今年に入って新型コロナの感染拡大で業績は厳しさを増している。日産は今期(2021年3月期)に6150億円の純損失を見込んでいる。

資金調達

  SBI証券の遠藤功治シニアアナリストは、「日産も三菱自もルノーもお尻に火がついた状態」だとし、アライアンスによる中長期的な取り組みよりも「今は短期的な火消しが一番必要」と指摘した。

  経営再建に取り組む日産は金融機関からの借り入れなどで手元資金の確保を進め、9月末時点の手元資金は2兆4791億円となり、3月末の1兆6430億円から大幅に増加した。また9月にドル建て債とユーロ建て債で1兆円以上の起債を決定し、同月末の時点で約2兆円の融資枠が未使用で残っているとしていた。

  子会社株などの資産売却も模索していたが、関係者の1人は一連の資金調達で当面の資金繰りの問題はなくなり、三菱自株を含めた資産の売却を急ぐ必要はないとの見方も示した。

  遠藤アナリストは、日産は「あちこちからお金を借りてほっと一息」をつけている半面で、来年の短期の銀行借り入れ返済に備えて「いろいろと資産売却を考える」必要があると指摘。その上で、低迷する三菱自の株価を踏まえると、今「何もこんな安く売っても仕方ないという話はあるだろうが、一応いくらかにはなる」と述べた。

(三菱自コメントや株価情報などを追加して更新します)
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