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LNGの購買欲を刺激、売り手は新たな値決め方法を模索-供給過剰で

  • 電力市場の拡大を背景に市況に連動したLNGの売買契約が浮上
  • 電力価格連動のLNGにはニーズが出る可能性も-JERA

新型コロナウイルスの影響で液化天然ガス(LNG)の供給過剰感に拍車がかかる中、売り手側は消費国の顧客の購入意欲を高めるために従来とは異なる価格の決定方法を模索し始めている。

  東京ガスは昨年4月、世界で初めて石炭の価格に連動したLNGの売買契約を英・オランダ系ロイヤル・ダッチ・シェルとの間で締結したことを明らかにし、業界で話題となった。最近新たな動きとして浮上してきているのが、日本卸電力取引所(JEPX)で取引される電力の価格に連動したLNGの値決め方法だ。

  事情に詳しい市場関係者によると、複数のLNGの売り手が電力市場の価格を指標として採用する契約についてすでに日本の需要家に打診したという。交渉はまだ初期段階で、JEPXの市況に連動した値決め方法を一部に採用する可能性があるという。

  新たな価格体系が浮上した背景には、2016年4月の電力小売り全面自由化後、JEPX市場での電力取引が急増したことがある。大手電力会社が余剰となった電力を同市場で販売する動きが活発化。自由化直後は3%未満だった販売電力量全体に占める同取引所の取引量の割合は、最近では4割程度にまで増加している。

  電力市場の拡大に伴い発電能力に余裕のある大手電力会社は、需給要因により変動する市場の価格によって業績が大きく左右されるリスクに直面している。そのため、発電用燃料として主に原油価格に連動した価格で調達しているLNGを市場の電力価格に連動させることができれば、変動リスクをヘッジすることが可能になる。

  東京電力ホールディングスと中部電力の共同出資会社JERA(ジェラ)傘下で燃料取引を担うJERAグローバル・マーケッツ(JERAGM)の葛西和範最高経営責任者(CEO)は、発電事業者はLNGを使って発電した電力を市場で活発に取引しているはずだとし、電力価格に連動したLNGの値決め方法を提案すれば「ありがたがるお客さんがいるのではないか」との思惑が売り手側にあると分析する。

  米国を中心にLNGの輸出プロジェクトが相次いで稼働し余剰感があったところに世界的な新型コロナの感染拡大が需要を直撃し、需給ギャップは拡大。ブルームバーグNEFによると、LNGの供給能力過剰は30年まで続くことが予想されている。LNGの売り手の間に販売先確保に向けた競争が広がり始めている。

LNG余剰

供給能力が需要を上回る状況は2030年まで続く見通し

出典:ブルームバーグNEF

  葛西氏は詳細についてはコメントを控えたものの、JERAGMもJEPXの価格に連動したLNGの契約について売り手から打診を受けたことがあると明らかにした。しかし、JERAはLNGから発電した電力を年間を通じて一定量スポット市場で販売しているわけではないことなどから、本格的な協議には発展していないという。

  その上で、葛西氏はJEPXの価格変動リスクをヘッジする必要が生じた場合には、自社で電力やLNGの先物価格を活用した枠組みを構築できると述べた。一方、そういった仕組みを作る知見やリスク管理のノウハウを持たない会社もあることから「われわれではない会社からニーズが出てくる可能性はある」と述べた。

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