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バイデン外交、「米国第一主義」と決別へ-同盟国は楽観も懸念残る

  • パリ協定復帰やイラン核合意に新たな息吹吹き込む可能性
  • だからと言って時計の針を2015年に戻せるわけではない-政治学者

米大統領選の勝者が民主党候補バイデン前副大統領であることが確実となり、米国の同盟国の多くは胸をなでおろしていることだろう。衝突も辞さない「米国第一主義」を掲げたトランプ政権の4年間で、同盟諸国の米国に対する信頼は揺らいできた。

  バイデン政権はトランプ大統領が進めた外交政策の一部を迅速に方向転換するとみられ、気候変動問題に関する国際的枠組み「パリ協定」に復帰するほか、新型コロナウイルス対策で他国との協力をより緊密にし、イラン核合意に新たな息吹を吹き込む可能性もある。ドイツやフランスなど北大西洋条約機構(NATO)の同盟相手を公然と非難することはなくなり、ロシアや北朝鮮など敵対国の指導者を称賛することもなくなるだろう。

  しかし、外交当局者らは、バイデン氏の勝利で何もかもを元に戻せるわけではなく、外交問題における米国の長期的な信頼に対する懸念が払拭(ふっしょく)されることもないと語る。

  選挙に先立って欧州の当局者らは、トランプ政権がさらに4年続けば、国連やNATO、世界貿易機関(WTO)などの国際機関が生き残れるかどうかに疑問を強めていた。

  ハーバード大学の国際政治学者、スティーヴン・ウォルト教授は「欧州の指導者にとって、トランプ氏とのやり取りは非常に不愉快なものだった。それが最も顕著なのは恐らくドイツのメルケル首相だ」と指摘。「トランプ氏との取引を本当に楽しんでいた人はいない。バイデン氏のスタイルは、それがどう受け止められるにせよ、彼らにとっては大きな改善になるだろう」と語った。

「われわれは戻ってきた」

  半世紀近くにわたる政治キャリアで上院外交委員会の委員長や副大統領を歴任したバイデン氏は、トランプ氏が弱体化させた戦後国際秩序における米国のリーダーシップを取り戻すと誓っている。

  「もし勝利すれば、初日にNATOの同盟諸国に電話をかけて『われわれは戻ってきた』と伝えるつもりだ」。バイデン氏は7月、アリゾナ州のテレビ局のインタビューでこう語っていた。

  同盟諸国がとりわけ期待しているのが、気候問題に対するバイデン政権の野心的な取り組みだ。バイデン氏は、向こう15年以内に二酸化炭素を排出しない電力業界を実現すべく、2兆ドル(約207兆円)規模のクリーンエネルギー投資計画を発表している。

  バイデン氏はまた、新型コロナが世界的に猛威を振るう中、トランプ氏が決めた世界保健機関(WHO)からの脱退を覆す公算が大きい。

残る対立の火種

  一方、欧州との間では方針の違いも残る。複数の外交当局者は、ロシアや中国に対する姿勢、大手テクノロジー企業への規制、自由貿易、国防費など違いは多岐にわたると指摘する。

  また、中東の同盟諸国は、バイデン氏の勝利をやや複雑な目で見るかもしれない。サウジアラビア、トルコ、エジプト、イスラエルは、自国の人権問題をトランプ氏から黙認されることで恩恵を受けてきたからだ。ただ、バイデン氏も、トランプ政権が過去数カ月で達成してきたイスラエルと一部アラブ諸国との関係正常化の流れを逆転させる可能性は低いとみられる。

  ハーバード大のウォルト教授は「米国の同盟諸国は悪夢から目覚めたように感じるだろう。しかし、だからと言って時計の針を2015年に戻してやり直せるわけではない」と語った。

原題:Allies Prepare for Quick U.S. U-Turn as Biden Shifts Priorities (抜粋)

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