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アントIPO失敗が示す条件付きの金融開放-習主席と共産党が力誇示

  • アントにIPOを認めれば金融システムにおける過度の影響力与える
  • 香港と上海が一流の金融センターとして存続できるかという点に疑念

史上最大の新規株式公開(IPO)を突然やめさせた中国は、世界中の投資家に対し明白なメッセージを送っている。いかなる金融開放であれ、習近平国家主席と共産党に利する条件でのみ行われるということだ。

  当局は中国2位の富豪でアリババグループ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が持つフィンテック企業アント・グループのIPOを停止させ、投資家に衝撃を与えた。停止は上海と香港、いずれの市場でも上場を予定していた5日の直前、3日に発表された。IPOには個人投資家から3兆ドル(約313兆円)超える応募が殺到していた。

  このIPO停止決定のタイミングは、共産党総書記でもある習主席と党にとって金融・政治の安定が、経済運営を特に民間企業に譲るよりも重要であることをあらためて示した。政府の観点からすれば、アントにIPOを認めれば事実上、金融システムにおける過度の影響力を同社に与えることになり、究極的には党の権力支配を損ねかねない広範なリスクが生じる。

The Opening Session of The Chinese People's Political Consultative Conference (CPPCC)

習近平国家主席

写真家:Qilai Shen / Bloomberg

  中国の金融システムに関する著書のある米カリフォルニア大学サンディエゴ校のビクター・シー(史宗瀚)准教授は「共産党による力の誇示だ。馬氏に対して、世界最大のIPOをしようとしているのだろうが、そんなことは世界2位の経済大国を統治する共産党にとってたいしたことではないと言っている」と述べた。

  反体制派を黙らせる手段には事欠かない共産党だが、労働争議や投資詐害、環境災害など生活の基本に関わる問題での怒りの噴出への対応には手を焼くこともある。金融システムそして党の安定を揺るがしかねない脅威を小さくしようと、習政権は発足後のほぼ10年間、ビリオネアや民間企業などひとひねりだと強い姿勢を打ち出してきた。

  アントを巡る動きを受けて、香港と上海が一流の金融センターとして存続できるかという点について外国人投資家に疑念が生じている。中国は先週、外国へ市場開放と人民元・資本動向規制の段階的緩和というこれまでしてきた約束の実現に向けた工程を示す新たな5カ年計画で、一段の開放を示唆したばかりだ。

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  中国金融の脆弱(ぜいじゃく)さを論じた「レッド・キャピタリズム(赤い資本主義)」の著者フレーザー・ハウイー氏は、アントIPO失敗の流れとタイミングは開かれた現代の資本市場に必要な透明性への中国のコミットメントに関し外国人投資家の疑いを招くと指摘。

  「しばしば相反する多くのシグナルが送られている」と分析、 「それ故に投資家は中国の上場プロセスに不安を抱くはずだ。ディスクロージャー(情報開示)を懸念し、監督当局の恣意(しい)的な動きを心配するだろう」と語った。

Key Speakers at Viva Technology Conference

馬雲(ジャック・マー氏)

写真家:Marlene Awaad / Bloomberg

  ショッキングなタイミングだったが、アントのIPOに待ったをかけたのは賢明だと見なすアナリストも多い。アントのビジネスモデルは、国有銀行がリスクの大半を引き受ける傍らで同社が高めの手数料を課すことを事実上容認するものだとの認識を中国当局は示している。

  アントが上場を目指していた同じ時期、当局は金融持ち株会社の資本要件を引き上げる規定の策定を急いでいた。その上、デジタル人民元の導入計画もある。これは決済システムの安定性をコントロールし続ける取り組みの一環だ。

  中国証券監督管理委員会(証監会)は4日、「性急」なIPOを止めた上海証券取引所の決定を支持するとの声明を発表。フィンテック業界規制の変化はアントの事業構造と利益モデルに「重大な影響」を持つとコメントした。

Ant Group Headquarters as Fintech Giant Plans $17.5 Billion Hong Kong IPO

アントの本社(浙江省杭州市)

原題:Derailing of Jack Ma’s Mega Ant IPO Shows Xi Jinping’s in ChargeChinese Regulator Says It Backs Suspension of Ant’s ‘Hasty’ IPO(抜粋)

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