野村HDがM&A助言で首位快走、相談2〜3割増-採用にも注力
谷口崇子、中道敬-
パイプラインは充実、経済活動再開とともに案件着手の機運ー担当者
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東京以外の地方でもM&Aバンカー採用積極化へ、コロナ禍で差別化
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野村ホールディングス(HD)が2020年の日本企業が関連した合併・買収(M&A)の助言業務で首位を快走している。新型コロナウイルス禍で海外出張が制限されたが、国内案件で強みを発揮した。顧客が徐々に通常の企業活動を再開させる中、相談件数は例年より2〜3割増えているといい、東京以外でも担当者を積極的に採用するなどしてさらなる案件の積み上げを目指す。

野村HDのロゴ
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
野村HD傘下の野村証券でグローバルM&A責任者を務める角田慎介氏は今年の日本関連M&Aの特徴として、コロナ禍でクロスボーダー案件が物理的に行いにくかったためグループ再編などの国内案件が増加したことと、難しい経営環境下でも進めるべき重要案件を止めず、結果的に大型案件が目立ったことを挙げた。ブルームバーグの取材に答えた。

野村証券の角田氏
ブルームバーグのデータによると、23日時点の日本企業が関わった今年のM&A件数は前年同期と比べて4.6%減の3439件となったが、金額ベースでは25兆8000億円と同59%増加した。
NTTによるNTTドコモ(4兆3000億円)、伊藤忠商事によるファミリーマート(5800億円)、日立製作所による日立ハイテク(5300億円)などグループ企業の完全子会社化やセブン&アイ・ホールディングスによる米コンビニエンスストア買収(2兆2000億円)などの大型案件が目立ち、全体の金額を押し上げた。
野村HDがM&Aランキングで首位快走
グローバルで初のトップ10入りも
出所:ブルームバーグ・データ
注:年間ベース、会社発表時点の内容に基づく
野村証はNTTの案件でドコモ側、7&iHD案件では同社の財務アドバイザーを務めるなど日本企業が絡む大型案件に関与した。その結果、金額ベースでのシェアは46%で首位を走る。グローバルM&A助言でも現在9位につけている。年間のグローバルランキングでトップ10入りすれば、野村HDにとっては初となる。
東京以外にもM&A担当者配置
日本経済はコロナ禍の中でも徐々に活動を再開させている。足元のM&A環境について、角田氏は「例年に比べて相談が2〜3割多い。パイプラインは非常に充実している」と指摘。経済活動の再開とともに、温めてきた案件に着手する機運が高まっている面もあるようだと分析している。
こうした引き合いの強さもあり、角田氏は東京以外の地方でのM&Aバンカーの採用活動を「積極的に行っている」と述べた。大阪などにも大企業が拠点を構えており、コロナ禍が続く環境では現地に担当者を置くことで対面での打ち合わせなどもしやすく差別化要因になると説明した。採用人数については言及しなかった。
ブルームバーグ・インテリジェンスの田村晋一アナリストは23日付リポートで、野村HDが28日に発表予定の7-9月期(第2四半期)決算に関連して「上場企業の増資・売り出しやM&Aが大型案件を含めて急増し、証券大手の投資銀行部門収益は大きく増えた可能性が高い」と指摘した。