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「デジタル通貨ニーズ高まる可能性」-日銀局長一問一答

日本銀行の神山一成決済機構局長は、ブルームバーグとのインタビューで、2021年度の早期の開始を目指す中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実証実験や金融政策との関係について語った。インタビューは22日に実施した。詳細は以下の通り。

インタビュー記事はこちらをご覧下さい。

-CBDC発行が必要になる状況とは?

  「日本では、銀行券に対する国民の信頼の高さや長期化する低金利環境もあって、当面、現金の流通は減少しないと思う。しかし、紙幣や硬貨の流通に伴う目に見えないコストが意識されるようになると、長い目で見れば紙幣や硬貨はデジタル通貨に置き換わっていくだろう。需要面から見ても現金決済からキャッシュレス決済への移行は少しずつ進んでおり、どこかの時点で国民のニーズが急速に高まる可能性がある。ただ、現金に対する需要がある限り、日銀は現金の供給を続けていく」

-発行のメリットとは?

  「デジタル社会にふさわしい利便性の高い決済サービスの提供につながる可能性がある、ということだ。そうであれば、現時点ではそれほどニーズが高くなくても、金融の将来のためにしっかり今から準備していくことは日銀の責務と考えている」

  「一方、決済システムを不安定化させることがあってはならない。金融政策の有効性や金融システムの安定性への影響、サイバー攻撃や詐欺の可能性など発行に伴うリスクをしっかり洗い出していきたい。具体的な発行計画のない段階からしっかりと検討に着手し、メリットとデメリットを見極めていきたい」

-実証実験のスケジュール感は?

  「相応のスピード感を持ちつつ、段階的・計画的に進めていく。21年度の早い時期にCBDCの基本機能を検証するための概念実証フェーズ1を開始することを目指しており、すでに準備作業に取り掛かっている」

  「フェーズ1の目的が達成次第、CBDCの発行額、保有額、付利などの周辺機能を付加して検証するフェーズ2に21年度内に移行していくことを目指している。さらに必要と判断されれば、パイロット実験への移行を検討する。現時点でパイロット実験に移行するタイムスケジュールは持っていないが、CBDCの実際のデザインや機能を視野に入れつつ、民間の事業者や消費者といった幅広い主体が参加することになり、CBDCの導入を相応に意識したものになる」

-発行の判断は?

  「導入するか否かは、かなり高度な判断を要する。日銀だけでは決められず、最終的に国民の十分な理解が得られ、メリットが大きいと確認できないと進めない。決済システムの効率性・安定性を高めていくことや、便利な決済手段を国民に提供することが重要と考えており、CBDCの発行ありきではない」

-金融政策のツールとして活用の是非について

  「CBDCは金利が付かない銀行券と金利の付く銀行預金の中間的な性格を持っている。そうした中で、CBDCに金利を付けて、それを動かさなければ、金利の付く銀行預金との間で頻繁に資金シフトが起きてしまう可能性があるという議論はある。これは、金融政策のためにCBDCの付利を利用するという考え方ではない」

  「金融政策のためにCBDCの付利を利用するという議論はしていない。銀行券との併存を示している以上、CBDCへのマイナス金利付与が当面の検討の中で論点になることはない。CBDCの設計は金融政策への活用のためではなく、決済システムを便利にし、効率性・安定性を確保する観点で行われる。その上で結果として出てくるCBDCが金融政策に使えるかは別途の議論になる」

  「銀行券との併存を取り組み方針で明記しており、銀行券がある以上CBDCの金利をマイナスにして深掘りに役立つということではないと思う」

-発行でノンバンクが日銀当座預金の取引先に加わる可能性は?

  「中銀と民間部門の二層構造の下で、仲介機関の範囲をどうするかは決済システムの構造に大きな影響を及ぼし得るため、慎重に検討していきたい。利用者とのインターフェースの構築に対応する役割分担をしっかり果たせるのであれば、仲介者は銀行だけでなく、フィンテック企業などノンバンクもなり得る。その時に当座預金取引を結ぶかどうかは先行きの検討課題。他の取引先と同様、日銀の目的達成に資するか、財務の健全性と事業態様を整えているかなどを踏まえて、考えることになる」

-発行形態の具体的なイメージは?

  「現時点でCBDCの基盤システムの構成技術に関して確定しているものはない。幅広い選択肢を有しておくことが適当だ。今後の技術進展を考えれば、日本のように災害の多い国で電気が途絶しても使えるオフラインの機能は非常に魅力的だ。しかし、当面は現金が併存していく中では必ずしも優先される特性ではなく、技術進歩とともに考えていくことだと思う」

-発行額や保有額に対する考え方とは?

  「CBDCの利便性が高くなり、銀行預金が大きく減少して信用創造が抑制されるという問題が強く意識される場合はCBDCの発行額や保有額に制限を設けた上で、支払い決済手段の役割をCBDCに担わせることは考えられる。他方、制限を厳しくすると決済手段としてのCBDCの利便性も後退する可能性もある。こうしたトレードオフの関係を踏まえ、金額的な制限を設けることの是非、設ける場合の具体的な方法を検討していく必要がある」

-先行する中国を脅威と感じているか?

  「中国はデジタル人民元のローンチに少しずつ近づいており、主要中銀との対比ではリードしているが、大切なことは決済システムの改善にそれぞれの国がしっかり取り組み続けることだ。各国が自国の決済システムの改善にしっかり取り組んでいけば、特定のデジタル通貨が世界を席巻することはないはず。中国がやっていることについて、われわれが理解不能というのは望ましくないので、しっかり検討していく必要がある」

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