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トランプ大統領敗北の場合、「負け組」となる外国の指導者は誰か

  • トランプ氏退陣を歓迎する国は多いだろうが、惜しむであろう国も
  • 米国が従来型の外交政策に回帰するのを不安視する指導者たち

トランプ米大統領が11月の選挙で敗れた場合、敗者はトランプ氏だけではない。

  型破りで時に支離滅裂なトランプ氏の退陣を多くの外国政府は歓迎するだろうが、退陣を惜しむであろう国もある。トルコや北朝鮮、イスラエルなどはトランプ政権の交代ですぐに問題に見舞われるだろう。

  中国のような国にとって有利か不利かはより微妙だが、トランプ時代が有利に働いたのは、大半が権威主義的な政治指導者だ。こうした指導者たちは今、トランプ氏が敗れれば米国が従来型の外交政策に回帰するとの不安を共有しているだろう。

  つまり、米国が同盟国との関係を修復し、民主主義や人権、気候変動対策といった普遍的な価値を追求する可能性があるためだ。民主党候補のバイデン前副大統領は最近のタウンホールイベントで、トランプ氏は「世界の全ての悪党を受け入れている」と表現した。

金正恩朝鮮労働党委員長

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トランプ米大統領と金正恩党委員長(2019年、ハノイ)

撮影:ゲッティイメージズ経由のソール・ローブ/ AFP

  米国の対外関係において北朝鮮との関係ほど、トランプ時代に変化したものはない。脅しや侮辱の応酬で始まった関係が、3度の直接会談や20数通余りの書簡をやり取りするまでに発展し、「不思議ながらも素晴らしい」相性を示した。

  とはいえ、劇的に変化した米国のアプローチをもってしても、北朝鮮の非核化は実現できなかった。バイデン氏は前提条件なしで金氏に会うことはないと表明しており、北朝鮮経済を苦しめている制裁の早期解除はますます遠のく見通しだ。


ムハンマド・サウジアラビア皇太子

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トランプ米大統領とムハンマド・サウジ皇太子(2017年)

撮影:エヴァン・ヴッチ/ AP

  トランプ氏は大統領就任後初の外遊先にサウジアラビアを選び、サウジは米外交団が滞在する豪華ホテルの正面にトランプ氏の巨大な肖像を投影して歓迎の意を示した。

  それ以来、トランプ氏はサウジの宿敵・イランとの核合意から離脱するなど、ムハンマド皇太子は多くの恩恵を享受した。2018年にサウジ出身のジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏が殺害された事件に皇太子の関与が疑われた際にはトランプ氏は個人的に皇太子をかばい、制裁を求める議会の決議にも反対した。

  サウジの指導者らはバイデン政権に移行した場合でも両国関係の維持に自信を示しているが、トランプ氏が退任すれば人権重視など米国は従来の路線に回帰し、イラン核合意復帰への道も開かれる。

エルドアン・トルコ大統領

  政治的な保護でサウジのムハンマド皇太子以上にトランプ氏を頼りにしている外国の指導者がいるとすれば、トルコのエルドアン大統領だろう。トルコは北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるにもかかわらずロシア製の地対空ミサイル防衛システム「S400」の購入を決定した。米議会は制裁を科そうとしたが、トランプ氏は事実上1人で反対した。

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トランプ米大統領とトルコのエルドアン大統領(2019年)

撮影:ゲッティイメージズ経由のピーター・ニコルズ/ AFP

  米国はシリア北部のクルド人地域から軍を撤退させ、トルコが軍を派遣し同地域を制圧することを可能にしたが、これは個人的な関係を強みにエルドアン氏がトランプ氏を説得したことによる。トランプ氏はこの決定を米国防総省のほか、同地域で米軍と協力して過激派組織「イスラム国」(IS)と戦っていた英国やフランス、クルド人部隊などにも相談せずに下した。

  バイデン氏は以前、トルコ野党への支持を呼び掛けたこともある。対トルコ制裁の準備も進むとみられる。

習近平中国国家主席

  トランプ氏は最近のどの米大統領よりも中国に対して攻撃的な姿勢を取っているが、プラスマイナスで見て中国指導部はトランプ政権の継続を望むだろうと、複数の中国当局者は述べている。

  中国が地政学的な野心を果たす上で制約になっていると考えていた第2次大戦後の体制をトランプ氏は揺るがし、「米国第一」政策を追求するため国際的な合意からも脱退し、米国の国際的な地位は失墜した。習近平国家主席には貿易から気候変動に至る全ての問題で、リーダーシップの空白を埋めるチャンスが生まれた。

  バイデン政権誕生となれば、貿易やテクノロジーで制限が維持される一方、対中国で国際的に協調した包囲網が敷かれる展開を中国は懸念する。ただ、そうなっても米中関係が感情に振り回される度合いが低下することで中国は恩恵を受けるかもしれないと、南京大学国際関係学教授の朱鋒氏は語った。


プーチン・ロシア大統領

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トランプ米大統領と握手するロシアのプーチン大統領(2018年、パリ)

撮影:ゲッティイメージズ経由のルドビッチ・マリン/ AFP

  ロシアは16年の米大統領選挙に干渉した疑惑が持たれ、この疑惑について米国では正式な調査も行われた。それでもプーチン氏は幾つかの点で賭けに勝った格好だ。トランプ氏はNATOの価値や、ドイツなど同盟国の地位に疑問を呈した。スターリン以来の歴代ソ連・ロシア指導者がくさびを打ち込もうともくろんだ米欧関係は弱体化した。

  だが、プーチン氏は望んだほどの具体的な成果をほとんど手にしていない。対ロシア制裁は解除されず、軍縮も進展していない。ロシア当局者は関係改善の見通しはまず望めないと考えており、バイデン政権ではなおさらだろう。

その他にも

  このほか、トランプ大統領と政治的に近いブラジルのボルソナロ大統領は、米国の世論調査がバイデン氏有利に傾くにつれ、対米関係の先行きについて懸念を深めていると、政府の主要閣僚が明らかにした。

  よりリベラルな欧州指導者の中にあってポーランドとハンガリーの指導者もトランプ氏と近く、ハンガリーのオルバン首相は公にトランプ氏支持を表明している。バイデン氏はベラルーシと並んでハンガリーとポーランドを名指しし、NATOにとって「世界各地での全体主義的な体制の興隆」がリスクだと警告した。

原題:Defeat for Trump Would Mean Some Other Leaders Also Lose Out(抜粋)

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