コンテンツにスキップする
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg Economics
cojp

国内の自殺者が前年比3カ月連続増、女性と子供で顕著-コロナ影響か

更新日時
  • 自粛期間中は減少も7月から増加に転じる、4-6月は13%減少
  • 8月の女性自殺者4割増、子供は倍増-専門家は対策の必要呼び掛け
relates to 国内の自殺者が前年比3カ月連続増、女性と子供で顕著-コロナ影響か
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg Economics

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、前年比で減少が続いていた国内の自殺者数が7月以降増加に転じている。女性と子供の増加率が特に顕著で、コロナ禍での生活様式の変化がストレスとなって心の健康に影響している可能性があることを日本の状況がいち早く示している。

  警察庁の最新統計によると、全国の自殺者数は9月に1805人と前年同月比8.6%増となり、7月から3カ月連続で増えた。政府の緊急事態宣言の下、外出自粛が広がった4ー6月は全国で約13%減少していた。

  7-9月を通じて男性がほぼ前年並みだったのに対し、女性の自殺者の増加率は7月16%増、8月40%増、9月28%増と著しく多かった。厚生労働省のデータによると、小学生から高校生までの8月の自殺者数は59人と前年の28人から倍増し、自ら命を絶つ子供が増えていることも浮き彫りとなった。

  子供の自殺予防に詳しい精神科医の松本俊彦氏は、外出自粛が広がる中で女性や子供の自殺が増えていることについて「仕事といった外との交流から傷付くことが多い中高年の男性と比べて、女性と若者は身近な人間関係にストレスを感じる」傾向がある、と指摘する。

  自殺者の多さから対策を迫られてきた日本はNPO団体による積極的な働き掛けもあり、先進国の中でも自殺に関するデータを定期的に公表している数少ない国の一つだ。新型コロナを巡っては、経済活動を止めることによりウイルス原因の死者数よりも自殺者が多くなることを懸念する意見も一部の識者から出ている中で、日本でのデータはコロナによる大規模な失業や社会的孤立に見舞われている他国の今後の状況も示唆している可能性がある。

  日本では年初以降の新型コロナによる死者が2000人以下にとどまっているのに対し、生活困窮や育児、いじめ、孤立など社会とのつながりの中で「追い込まれた末の死」と政府が位置付ける自殺者の数は約1万3000人に上っている。

相当な心理的負担

  政府は自殺について、多くが防ぐことのできる社会問題ともとらえているが、新型コロナがもたらした精神的な負担や失業などの経済的な代償は、女性や子供など特定のグループに偏っており、自死のリスクを高めていると専門家らは危惧している。

  男性を失業に追い込んだ過去の不況と異なり、コロナショックは女性の雇用を直撃している。国際労働機関(ILO)は、世界中で新型コロナによる雇用者数の減少は男性よりも女性の間で大きいと報告している。

  自殺の社会的な要因を研究している桃山学院大学の平野孝典准教授は、こうした雇用不安が女性の自死リスクを高めていると説明する。

  女性の職域が人との接触を伴う医療・福祉、小売り、飲食サービスなど感染リスクにさらされる産業に偏っているとも指摘。これらの職業に従事する女性たちに「相当な心理的負担」が生じている可能性があるという。

  日本では4月、女性の就業者数が前年比で約8年ぶりに減少した。総務省の労働力調査によると、3月時点と比べて8月の就業者数は男性22万人減、女性51万人減と2倍以上の差があり、非正規雇用の約7割を占める女性の立場の脆弱(ぜいじゃく)さが露呈した。

状況は悪化

  労働政策研究・研修機構(JILPT)の分析によれば、7月末時点で休業していた女性の比率は男性の3.9倍で、女性は男性と比べて職場復帰も遅れている。

  経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で自殺率が最も高い韓国では、3月から6月にかけて女性の自殺者数が急増した。韓国自殺防止センター長のパイク・ジョン・ウー氏は、自死増加の背景にある3つの要因として、若い女性を中心に高まる失業率、休校により増加した家事育児の負担、そしてコロナ禍で広がる社会的孤立を挙げた。 

  警察庁の統計によると、日本の自殺者数は2003年に3万4427人とピークを迎えた。10年以降は減少を続け、昨年は2万人程度まで減っていた。一方で、19歳以下のグループでは、17年以降は増加が続いている。

  子供の自殺は以前から問題だったが、コロナの影響で「状況が悪化した」と話すのはNPO法人で「フリースペースたまりば」(川崎市)の西野博之理事長だ。不登校の子供に長く寄り添ってきた西野氏は、「日本は子供の数が減少してるのに自ら命を絶つ子供の数は増えている」と指摘、「幼稚園の年中(5歳)から小2で死にたいという言葉を聞く」と述べた。

  精神科医の松本俊彦氏は、10代の子供たちを診察する中で、緊急事態宣言前後から自分の体を傷付ける行動が増加していると明かす。

ステイホームの余波  

  松本氏は休校やテレワークが実施され、「ステイホーム」が叫ばれた結果、子供たちが家庭内の葛藤に追い込まれたと指摘。虐待やネグレクト(育児放棄)、親の夫婦不和などの問題を抱える家庭の子供にとって緊急性は一層高まると懸念を示した。

  家庭以外の環境で息を抜いたり、友人との会話の中で癒やされたりすることもあるとし、「3密など公衆衛生のメッセージとしては大事だが、公衆衛生や感染症対策だけで人類は生きているわけではないことも理解した方が良い」と訴える。松本氏は、もし子供から心配な相談を受けた時は、「善悪のジャッジよりも先に背景にある問題を優しく聞く姿勢」を見せてほしいと呼び掛けた。

今悩みを抱えている方は、こちらから相談できます
(末尾のホットラインの項目を追加して更新します)
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE