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「密」避けやすい自販機も苦戦、マスクや紙おむつも試し売り

更新日時
  • ラストワンマイル担う重要販売網、改革を加速とサントリー食品社長
  • 「1平方メートルの不動産」マーケティングや新規出店検討にも活用

最寄り駅から徒歩30分以上、周囲に住宅も少ない「中古タイヤ市場 相模原店」の自販機コーナー。平日の正午、買い物客が次々と車で乗り付けた。目当てはハンバーガーやサンドイッチ、うどん、ガラス瓶入りのコカ・コーラなどを販売する「レトロ自販機」だ。

  昭和の時代をほうふつとさせる自販機コーナーは屋根付きの回廊のようで、生産が終了した約50台のレトロ自販機がずらりと並ぶ。コンビニエンスストアの登場から久しく食品自販機はすっかり姿を消したが、ここには多いときで1日約1000人が訪れると運営者の斉藤辰洋氏(48)は話す。

Even Japan's Vending Machines Feel the Pressure From Pandemic

斉藤辰洋氏と「レトロ自販機」

Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

  趣味が高じた斉藤氏の「レトロ自販機コレクション」はグーグルマップにも載る話題のスポットとなり、いまは本業のタイヤ交換の傍らのちょっとした副収入だ。しかし、新型コロナウイルスが流行する中、密を避けやすく優位に見える自販機ビジネスも、大手飲料会社にとっては事情が大きく異なる。

苦戦する大手メーカー

  国内清涼飲料最大手のコカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス(HD)によると、2020年上期(1-6月期)の販売数量はドラッグストア・量販店チャンネルが7%増となった半面、自販機チャンネルは15%減だった。通勤・通学機会が減り、駅や学校、レジャー施設、オフィスなどでの利用が減少した。

外出自粛で自販機が苦戦

販売チャンネル別の出荷数量で、自販機の落ち込みはもっとも顕著

出所:飲料総研

  業界2位のサントリー食品インターナショナルも国内清涼飲料市場は上期に10%減少したと想定。斎藤和弘社長は8月の会見で、自販機は「顧客とのダイレクトな接点で、ラストワンマイルを担う、われわれにとって重要なチャンネルに変わりない」と指摘。厳しい環境を契機に「自販機構造改革をさらに加速する」と語った。

  「自販機を電気と冷却ボックスの付いた1平方メートルの不動産として捉えればいい」と指摘するのは都内でIT(情報技術)関連サービスを提供するVPCアジアのドミニク・スタイナー代表だ。「その中で飲料を売る以外に何ができるのか」という発想が必要だと話す。

Even Japan's Vending Machines Feel the Pressure From Pandemic

自販機の前は閑散としている(新宿区)

  コカ・コーラボトラーズジャパンは7月から冷感マスクのテスト販売に踏み切った。売上高の8割超が自販機経由のダイドーグループホールディングスも19年11月から子供用紙おむつの販売を始めた。

  同社の自販機約28万台のうち、遠隔で在庫情報などを集められるオンライン化された自販機は2%未満。この比率の引き上げが課題で、同社は機能向上などに今後1年間で60億円を投じる予定だ。ダイドードリンコの広報担当、正本肇氏は従来は「ドライバーの経験と勘で工場などから飲料を積んで自販機に持って行っていたが、かなり無駄がある」と指摘した。

  米カリフォルニア州発のコーヒーショップ、ブルーボトルコーヒージャパンは、同社で世界初の自販機を8月に渋谷に設置した。井川沙紀取締役は販売促進効果のほか、新規出店を検討する際の消費者ニーズの把握にも役立てたいという。

  野村総合研究所ICTメディア・サービス産業コンサルティング部の小針清孝グループマネージャーは自販機ビジネスの市場は縮小しているが、「人と接触しない点でビジネスチャンスはまだある」と分析。飲料向けが中心で商材にも制限はあるが、洋服や化粧品など「オリジナルの世界」を売る自販機の登場に期待している。

(ダイドードリンコのコメントを第8段落に追加して更新します)
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