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【コラム】大統領は誰から感染か、パンデミックのミステリー-ルイス

トランプ米大統領の新型コロナウイルス感染を巡る出来事で1つ奇妙なのは、大統領の正確な感染経路をホワイトハウスが突き止めようとしていない点だ。米疾病対策センター(CDC)が集団感染の調査を申し出たのに、はねつけられた。

  この結果、大統領がどこで誰から感染し、誰にどのような状況でうつした可能性があるかや、単一の感染源からホワイトハウス全体に広がったのか、そうだとすればそれは誰か、という問題は解明されないままだ。

  20年前であればパンデミックにまつわるこれら一連の疑問に答えるのはほとんど不可能だったが、今では極めて迅速かつ低コストで答えが出るはずで、なぜまだ分からないままなのかが不思議なほどだ。

  全遺伝情報(ゲノム)解読による感染症の特定・追跡の先駆者で、微生物学者のジョゼフ・デリシ氏から、この話題を巡って次のような話を聞いた。デリシ氏はチャン・ザッカーバーグ・バイオハブの共同プレジデントを務める。

  新型コロナはRNA(リボ核酸)ウイルスであり、検査をして陽性であれば、抽出した情報でそのウイルスが人から人への感染を通じてどのように変異してきたかを知ることができる。

  ゲノムが同一であれば、感染の連鎖で緊密なリンクがある公算が大きい。大統領の側近やホワイトハウスで接触のあった議員とその家族、友人の中で陽性だった人々について、ウイルスのゲノム解読を行えば、誰から誰に感染したかを示す連鎖地図を恐らくつくることができる。

  また、できる限り多くの解読ができれば、感染拡大のきっかけとなった場所がホワイトハウスのローズガーデンのイベントなのか、選挙集会なのか、それとも密閉されたオフィスだったのか探りを付けることは可能だろう。

  ゲノム解読すれば、誰がどこにいて、誰に感染させたとみられるかを突き止めることができるのに、今回の事態がどのように起きたのかを理解するために解析が使われる様子がないばかりか、基本的な接触追跡さえしていないのはとても異常と考えられる。これは米大統領の安全を危険にさらしたものであり、最も真剣に扱うべき事柄だ。

  さらに言えば、関係者全員が協力し、全標本を1つの場所に集約できれば数日で必要な作業は済むだろう。

(マイケル・ルイス氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、「ライアーズ・ポーカー」や「世紀の空売り(原題ビッグ・ショート)」などの著者。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:
Who Infected the President? A Pandemic Mystery: Michael Lewis(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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