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月給3万円のコンビニ経営者も、コロナ禍で事業モデル再構築急務

更新日時
  • 海外進出や非上場化による抜本的な対策など各社打開策を模索
  • 利益分配の見直し不可欠、契約更新しない加盟店も-専門家

兵庫県姫路市の国道沿いで「ファミリーマート」の店舗を経営する酒井孝典さんは、緊急事態宣言が出された5月に約350時間、1日平均で10時間以上も店頭に立った。しかし、諸経費を支払った後に自身の収入として手元に残ったのはわずか3万円。新型コロナウイルスの感染拡大で客足が減り、賞味期限を過ぎた廃棄食品の費用などが重しとなったためだ。

  酒井さんは「このままの現状だったら1年持つか持たないかだ」と窮状を訴える。公正取引委員会が公表したコンビニ調査によると、新型コロナがまん延する前の今年1月1日時点で、自前の店舗を持たない本部店舗型契約のオーナーの個人資産はすでに65%が「債務超過状態」または「500万円未満」という厳しい状況だった。酒井さんは「今の環境を大きく変えていかないと駄目だ」と強調した。

FamilyMart Stores As Itochu Making $5.6 Billion Bid for The Chain

ファミリーマートの外観(7月・都内)

Photographer: James Whitlow Delano/Bloomberg

  日本フランチャイズチェーン協会の統計によると、コロナ禍の影響で8月のコンビニ店舗売上高は前年同月比5.5%減の9479億円と、6カ月連続のマイナスとなった。来店客数も同9.6%減と6カ月連続で減少した。

  東京都江東区内の住宅地で「セブン-イレブン」の店舗を経営する吉村英二さんは、駅周辺や繁華街の店舗に比べれば状況はまだ良いものの、「1人当たりの購入単価が上がっていても全社的に客数はずっと減っている」とし、「客数が減っているのが一番の痛手」だと話した。

  コンビニ大手各社も環境の変化に対応する動きを加速している。伊藤忠商事は7月に傘下のファミリーマートに対する株式公開買い付け(TOB)を発表し、年内にも非上場化を完了させて抜本的な改革に乗り出す計画だ。セブン&アイホールディングス(7&iHD)は8月、自社の時価総額にも迫る210億ドル(約2兆2000億円)を投じ、米コンビニ3位のスピードウェイの買収に打って出た。ローソンも9月にポプラから140店舗を継承すると発表した。

  ローソン株の50%を保有する三菱商事コンシューマー産業グループリテイル本部の川崎圭介プロジェクトマネージャーはブルームバーグの取材に対し、「今般のコロナ禍による影響を踏まえれば決して楽観視できない事業環境」とした上で、「多極化、細分化していく消費者のニーズをくみ取り、商品やサービスの在り⽅を変えていくことは、コンビニ業態においても市場からの期待値が⾼い」と書面でコメントした。現時点で保有比率の引き上げは検討していないという。

テジタル化

  人手不足で上昇した人件費の対策として、無人のセルフレジやキャッシュレス支払いの導入、商品の自動発注などコンビニ店舗のデジタル化は以前から進められており、コロナ禍で動きはさらに加速している。

  ローソンでは2月末時点で約1800店舗だったセルフレジの導入店舗数が、9月4日時点では約9000店舗と半年で5倍に拡大した。ファミマは約5000台を導入済みで、来年2月までに2000台の追加を予定している。セブンーイレブン・ジャパンも9月から全国の店舗でセルフレジの導入を順次開始した。

  大田区や品川区を中心に16店舗の「ローソン」や「ナチュラルローソン」を経営する鈴木俊介さんは、デジタル化を「かなりのスピード感でやってほしい」と期待する。現在1店舗には平均で15人を配置しているが、デジタル化が進めば人件費を今の約半分に抑えられると考える。

Inside A Lawson Inc. Convenient Store Ahead of Earnings Announcement

ローソン店内のソーシャルディスタンスのサイン(6日・都内)

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  一方で単純にはデジタル化を歓迎できないとするオーナー側の声もある。セブン-イレブンを経営する吉村さんは現状人工知能(AI)による商品の自動発注の精度は高くないため、依存すると逆に廃棄が増えるリスクもあると指摘する。また、ファミリーマートを経営する酒井さんは、デジタル化により端末に入力しなければならないデータが増えた結果、手間が増えるという側面もあると話した。

  店舗の売上高が減少する状況では、コンビニチェーン本部と店舗オーナーの間の利益分配の仕組みを見直す必要がある。流通経済研究所の根本重之理事は、両者間の「粗利配分やコスト配分の仕切り直しを考えなくてはいけない」と指摘。オーナーの取り分を増やさなければ、現状のままでは契約を更新しないオーナーが増える可能性があるとの見方を示した。

利益配分見直す動き

  コンビニのフランチャイズ契約では、売上高から販売商品の原価だけを差し引いた粗利益を本部と加盟店が分け合っている。国内コンビニ4位のミニストップは9月、粗利益の分配ではなく、粗利益から人件費や廃棄分のコスト、固定費を引いた事業利益を双方で分配する新形式の契約を2021年9月から導入すると発表した。

  同社は発表文書で、「昨今の社会環境、経済情勢の大きな変化に従来のフランチャイズシステムでは適合が困難」となり、さまざまな不都合が発生していると説明。さらに、現在の社会通念に照らすと、本部を主体とした現行のフランチャイズ契約は「一方的と言われてもやむを得ない内容」で、適切に契約を改正しなかったことを真摯(しんし)に反省すると謝罪した。

  吉村さんは、ミニストップによる業界初の試みが今後大手3社にも波及することに期待を寄せている。しかし、7&iHD広報担当の藤本英之氏は現段階で粗利分配の考え方を変更することは考えていないとコメントした。ただ、3月から加盟店に対するロイヤルティーの減額は実施しており、今後も適宜見直しを検討していくとしている。

  ローソンは、本部が重視する経営指標としてこれまで売上高を活用していたが、4月以降は指標を店利益に変更していると書面で回答。ファミマ広報担当の大月新介氏は、契約の改正は現時点で検討していないとした上で、本部と事前協議の上で時短営業を可能にするよう決定したほか、複数店舗経営に対する奨励金や廃棄ロス対策など年間110億円の加盟店支援を実施しているとコメントした。

  ファミマが7日に発表した6-8月期決算は、新型コロナの影響や有形固定資産の減損で純損益が165億円の赤字に転落した。前年同期は179億円の黒字。今期(21年2月期)の業績予想は据え置いた。沢田貴司社長は会見で、「数を追うよりも中身を強化する」ため、社内の改革を進めている最中だと述べた。

(ファミリーマートの決算の詳細を追加して更新しました)
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