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JPモルガン、華麗な貴金属デスクの裏側-組織的不正の温床と告発

更新日時
  • 不正には見せ玉注文しキャンセルする「スプーフィング」も含まれる
  • JPモルガンは捜査決着のため約10億ドルの支払いに応じる見込み

米銀JPモルガン・チェースが主催し、豪華なランチが提供されるロンドン金属取引所(LME)ウイークは、金属業界関係者にとって、さながらダボス会議のような存在だ。

  2018年10月の穏やかな日のことだった。イングランド銀行(英中央銀行)に近い中庭を渡り、ギルドホールに移動した数百人のゲストには、同行とトップ金属トレーダーだったマイケル・ノーワーク被告からシャンパンや刺身がふるまわれた。

  ノーワーク被告は40代半ばにして、年間数十兆ドル相当の金と銀、プラチナ、パラジウムの先物取引を行うグローバル・トレーディングデスクを10年余りにわたり統括してきた。ニューヨーク市のマンハッタンから離れた住宅のほか、ニュージャージー州にはビーチから数ブロックの距離にある7ベッドルームの別荘も所有していた。

  だが、元部下の1人が知らないうちに彼に一撃を加え、その世界が崩れ去ろうとしていた。

Merchant Taylors Hall

JPモルガンが2018年10月9日にLMEウイークランチを主催したマーチャント・テイラーズ・ホール

出典:写真/ゲッティイメージズを見る

  同じ日のことだ。ノーワーク被告のトレーディングデスクで長年勤務したジョン・エドモンズ元貴金属トレーダーが、米連邦検事に会うためにコネティカット州ハートフォードに自動車で出掛け、被告のチームのメンバーが単に貴金属を売買するだけでなく、自分たちと得意先のために組織的に不正を行っていると伝えた。

  元トレーダーはその日、秘匿扱いの有罪答弁で不正取引を認めた。それから程なく、貴金属デスクの他のメンバーも情報を提供し、ノーワーク被告とJPモルガンの他の4人が刑事責任を問われるきっかけとなった。

  元トレーダーらの証言は、米司法省によるJPモルガンの刑事捜査に裏付けを与えた。事情に詳しい複数の関係者によれば、捜査は数日中に決着する見通し。米商品先物取引委員会(CFTC)と司法省による調査および捜査を決着させるため、同行は約10億ドル(約1055億円)の支払いに応じる見込みだ。

  疑われる不正行為には、同行に有利な価格で他者の売買を誘導するため、約定を意図しない見せ玉を注文してはキャンセルする「スプーフィング」が含まれる。

  ノーワーク被告と他の3人は無罪を主張している。エドモンズ元トレーダーとノーワーク被告の代理人はコメントしていない。JPモルガンは捜査に協力していると説明する一方、広報担当者を通じてコメントを控えると回答。司法省とCFTCもコメントを控えている。

  検察と米連邦捜査局(FBI)が、協力者であるエドモンズ元トレーダーにどのように近づいたかは明らかでないが、JPモルガン内部に警戒を引き起こさずに接触に成功した。元トレーダーはシンガポールへの異動のオファーを断って17年に同行を退職し、18年秋までには別の銀行で勤務していた。

  複数の業界関係者によると、ノーワーク被告の逮捕を受け、金属・自己勘定取引の業界には衝撃が走った。同被告は書類上や評判を聞く限りでは、この上なくクリーンであり、「彼が捜査対象になることがあり得るとすれば、誰がそうならないでいられるだろうか」と疑心暗鬼が広がったという。

原題:Inside the JPMorgan Trading Desk the U.S. Called a Crime Ring(抜粋)

(協力者の元トレーダーの情報などを追加して更新します)
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