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非世襲・無派閥からトップへ、「根っからの改革派」-菅新首相

  • 「国を動かす政治家に」と47歳で衆院初当選、師匠ゆずりの剛腕
  • 説明不足や人事権行使した官僚掌握に野党から批判も

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新首相に就任する自民党の菅義偉総裁は非世襲・無派閥という異例のキャリアでトップへの階段を駆け上がった。親交の深い人たちからは規制改革などを進める指導力に期待が寄せられるが、野党などからは官房長官時代の記者会見での対応や人事権を行使して官僚を掌握する手法への批判を受けている。

Japan's LDP Lawmakers Vote For Leader

菅義偉氏

  群馬県の山本一太知事は菅氏を「アニキ」と呼んで慕っている。無派閥で政界をのし上がっただけに「胆力が違う」と評し、首相としても「剛腕で、かなりのリーダーシップで引っ張っていく」と見る。ウイークポイントをあえて挙げると「あまりじょう舌ではない、コミュニケーション能力が高いとは言えない」と指摘した。

  菅氏は、官房長官を務めた7年8カ月の間に、政府のスポークスマンとして3200回以上の記者会見をこなしてきた。森友学園問題などで政権を追及する質問に「指摘は当たらない」とかわしてきたが、野党などからは説明不足との指摘を受けた。

  れいわ新選組の山本太郎代表は参院議員時代の17年に出した質問主意書で「説明責任の放棄と見なされたり異論をシャットアウトしたりするような言葉を用いることなく、より一層丁寧な答弁が求められる」と批判した。

  一方、1996年の衆院選で初当選した同期の桜田義孝元五輪担当相は、菅氏は律義で自分の信念を曲げない人だとし、「余計な失言はしない」点を高く評価する。菅氏自身は官房長官として最後となった14日の記者会見で、「しっかり準備し、丁寧に誠実に臨んできた」と語った。失言しないための工夫として「全てを発言せず、ある程度余裕を持って説明したのが良かった」とも述べた。

人事権行使し、官僚掌握

  菅氏は「政治の師」と仰ぎ、剛腕で知られた故・梶山静六元官房長官からの、「役人の説明をうのみにせず、自分の頭で考えろ」との教えを念頭に政治活動を続けていると繰り返し話している。そんな菅氏が官僚を使いこなすための「伝家の宝刀」と公言してはばからないのが人事権だ。

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総務相時代の菅氏(2007年4月)

Photographer: Haruyoshi Yamaguchi/ Bloomberg News

  2012年に出版した著書「政治家の覚悟」では、総務相時代に自らが進めた受信料値下げなどのNHK改革に後ろ向きな発言をした担当課長を更迭したエピソードを紹介。「改革に対する自らの決意を示すために人事権を行使しました」と振り返っている。安倍政権では14年に自らの下に設置した内閣人事局を通じて中央省庁全体ににらみをきかせてきた。

  菅氏の進める「政治主導」や人事権を行使して官僚を掌握する手法には批判の声も出ている。総裁選期間中に出演したテレビ番組で菅氏は、政権の決めた政策の方向性に反対する幹部は「異動してもらう」と語った。財務官僚出身で立憲民主党の大串博志衆院議員は、「人事を通じた官僚への『脅し』そのもの」とツイッターに投稿。「この高圧的な姿勢が『忖度』を生んだことを菅官房長官は全く理解していない」と非難した。

昭和のおじさん

  19年4月1日に新元号「令和」を発表したことで一躍、知名度が上がった。小泉純一郎政権の最終盤では竹中平蔵総務相を副大臣として支え、郵政民営化などに取り組んだ改革派の顔も併せ持っている。

Japan Announces The Name of New Imperial Era

新元号を発表する菅氏(2019年4月)

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  慶応大学大学院の岸博幸教授は「見た目は昭和のおじさん」だが、いまの自民党内で数少ない「根っからの改革派」だと評価する。岸氏は経済産業省出身で竹中氏の秘書官などを務めていた。

  総裁選の公約として掲げたデジタル庁創設や携帯電話料金引き下げなど、「たたき上げの人らしく、個別のイシューに強い」と岸氏は指摘する。個別の分野ではなく、首相として示すべき国家ビジョンについては、「期待はしているが、今の段階ではまだ分からない」とも語った。

菅学校

  国を動かす政治家になりたい-。初当選当時に秘書を務めていた伊波俊之助・横浜市議は運転する車の中で聞いた菅氏の言葉を今でも覚えている。同市議だった菅氏が国政に挑戦した1996年の総選挙から衆院は小選挙区制を導入。菅氏は小選挙区世代で初めての首相となる。

  仕事に関しては厳しかったという。いい報告よりも悪い報告をすぐよこせと注意されたり、二度と顔を見たくないと言われたりしたこともあったが、秘書に対しては「ぼろきれにしてポイ捨てする」わけではなく気遣いも忘れない人だったと振り返る。

  伊波氏は2009年に事務所を離れるが、ウェブサイトの経歴には「すが事務所卒業」と書いており、菅氏の事務所は政治を志す秘書にとって学校のような場所だという。16日午後はかつて菅氏も身を置いた横浜市議会の一員としての仕事をこなすが、国のトップに立つ恩師には「今までそうだったし、自身の思っていることをどんどんやってほしい」とエールを送った。

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