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「ゾンビ企業」の増加警戒、終了時期が焦点-日銀コロナ対応オペ

更新日時
  • 必要以上の長期化は規律面でマイナスの見方も-企業支援延長観測に
  • 経済回復スピードは緩やか、支援はまだかなり続ける必要-日銀総裁

日本銀行が企業の資金繰りを支援する新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペは、企業破綻を回避する上で一定の評価を得ている。一方、必要以上に支援を長引かせれば、企業の生産性向上を妨げ、日本経済の長期的な停滞にもつながりかねないとの懸念が浮上している。

  日銀が3月に導入した新型コロナ対応オペによる金融機関への貸出残高は、8月27日時点で約35兆円。利用残高に応じて日銀の当座預金に0.1%の金利を付けるのが特徴で、マイナス金利下の厳しい経営環境にさらされている金融機関にメリットとなることもあり、積極的に利用されてきた。

積極的な活用進む

日銀の新型コロナ対応オペによる金融機関への貸出残高

出所:日銀

  住友生命保険・運用企画部の武藤弘明上席部長代理は「日銀のコロナ資金繰り対策は効果的で、特にコロナ危機の初期に効果を発揮した」と指摘。「企業の先行き懸念を和らげ、企業活動に必要な資金を供給した」と述べた。

  今後の焦点は、資金繰り支援の終了タイミングに移りつつある。JPモルガン証券の西原里江アナリストは、リーマン危機後に施行された中小企業金融円滑化法を例に挙げ、長期間の支援が中小企業の労働生産性向上を妨げ、「ゾンビ企業がいつまでも残ってしまった」と指摘。必要以上の長期化は「コロナ対策ではなく、市場規律の部分で負になる」との見方を示す。

  日銀のコロナ対応オペは当面、来年3月末までの予定。しかし、武藤氏は新型コロナの終息時期が不透明で、経済も弱いままであることからオペを継続せざるを得ないとみている。過去の経済政策で繰り返されてきたように、「一度政策を始めると止めるのは難しい」と語った。

Bank of Japan Governor Haruhiko Kuroda News Conference As Central Bank Ramps Up Asset Buying, Holds Rates Steady After Fed Cut

必要以上な融資はモラルハザードの問題にもつながると懸念

  大和総研・金融調査部の長内智主任研究員は、今回の新型コロナ対応オペは、リーマンショック時に実施した資金支援のピーク時の残高と比べて4倍以上の規模に膨らんでおり、金融機関が「かなり積極的に活用している」と指摘。その上で、政府と日本銀行による支援策が長引けば、緩い審査の下で融資を必要以上に増やすなど「モラルハザード」(倫理観の欠如)の問題につながる懸念を示した。

  日銀が8日に発表した8月の貸出・預金動向(速報)によると、銀行と信用金庫を合わせた貸出平均残高は前年同月比6.7%増の573兆7897億円となり、伸び率、残高ともに過去最高を更新した。河西慎・金融機構局金融第一課長によると、大企業の資金需要についてはおおむね一巡したとみられが、中小企業については実質無利子融資を中心に当面は貸し出しが増加する可能性が高いという。

  日銀の黒田東彦総裁は7月15日の会見で、退出すべき企業が長く生き延びて経済全体にマイナスになるという「ゾンビ企業論」が「今の時点で議論になり、深刻になるとは思っていない」と懸念を否定。経済回復のスピードが緩やかであることを理由に、資金繰り支援は「まだかなり続ける必要があるのではないか」と述べた。

  東京商工リサーチによると、7月の全国企業倒産件数は前年同月比1.6%減の789件。7月としては過去30年間で5番目の低水準だった。JPモルガンの西原氏は、新型コロナによる打撃で「短期的にはフルに支えるべき」と考えるが、1年を超えたあたりでどうするかは金融当局も気にし始めており見極めが必要だと述べた。

足元はリーマン危機時を下回る
(7段落目を追加します)
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