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ポスト安倍で優位の菅氏、アベノミクス継続も規制改革で独自色発揮へ

  • 携帯電話料金の引き下げ、地銀再編など一部規制業種の改革に意欲
  • 財政・金融政策は現行路線維持、経済回復と雇用確保へ追加措置も

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安倍晋三首相の後任を決める14日の自民党総裁選で優位に立つ菅義偉官房長官は、大胆な金融政策や機動的な財政政策を中核とするアベノミクス路線の継続を表明する一方で、規制改革に強い意欲を示すことで独自色も打ち出しており、一部の規制業種に変革を迫る可能性がある。

  菅官房長官は出馬表明の記者会見で、アベノミクスは為替安定、株価上昇、雇用増加に結び付いたと評価し、「アベノミクスを引き継ぎ、さらに前に進めていきたい」と述べた。その上で、「ポストコロナを見据えた改革を着実に進めていく必要がある」と指摘。地方銀行の数や、携帯電話料金の高止まりなどを問題視し、「縦割りの弊害をぶち破り、新しいものを作っていく」と述べ、規制改革に意欲を見せた。

菅氏の出馬表明会見に関する記事はこちらをご覧ください

Japan Chief Cabinet Secretary Yoshihide Suga Interview

菅義偉官房長官

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  菅氏の経済政策を巡る発言の一部を以下で紹介する。

金融政策

  菅氏のこれまでの金融政策に関する発言は、日本銀行に政策変更を迫るものではないが、必要に応じて追加緩和を促す可能性も示唆している。

2020年9月2日 出馬会見

「日銀との関係については、安倍総理と同じように進めたい。雇用を守り企業を存続させていくために、政府としては状況をみて必要であれば、しっかりと金融政策をさらに進めていきたい」

携帯電話料金

  菅氏は以前から、3社が市場の約90%を支配している携帯電話料金は高過ぎると批判してきた。より安価な料金を求める主張は、日銀による2%の物価安定目標の早期達成が、最大の関心事には含まれていない可能性を示唆している。

2020年9月2日 出馬会見

「上位3社が市場の約9割の寡占状態を維持しており、世界でも高い料金で約20%もの営業利益を上げている。事業者間で競争がしっかり働く仕組みをさらに徹底させたい」

財政政策

  菅氏は「経済再生なくして財政再建なし」という安倍政権のスローガンと違わぬ主張を繰り返しており、新型コロナウイルス対策に対する追加支出にも含みを持たせている。

2020年4月20日 定例会見

新型コロナウイルス対策の第1次補正予算案の閣議決定を受けて、「経済あっての財政再建であり、まずは感染拡大を防ぎ、経済を回復させることを最優先にして取り組んでいきたい」

2020年9月3日 フジテレビ

新型コロナウイルス対策の第3次補正予算について問われ、「状況を見ながらやるべきことはやる」

消費税

  菅氏は経済対策としての消費税率の引き下げには消極的だ。消費税は高齢化とともに増加する社会保障財源に必要なものだとの認識を示している。

2020年7月29日 定例会見

「現在一連の補正予算などで全国民に一律10万円の給付、収入が減少した事業者に最大200万円の給付に加え、家賃などの支援を行うなど総額230兆円を超える規模の対策を実施している。この中で収入が減少した事業者については税・社会保険料を1年猶予しており、消費税も納税猶予の対象となりますが、消費税自体については社会保障のために必要なものだと考えている」

2020年9月5日 読売テレビ

「社会保障の貴重な財源でありまして継続性、持続を考えたら私は今のままでというふうに思っています」

アベノミクスの成果

  菅氏は安倍政権発足以前に1ドル=75円、株価8000円前後だった国内市場が、経済優先のアベノミクス効果で回復したとの認識を示しており、それを継承していく方針だ。

2020年9月2日 出馬会見

「アベノミクスの結果として、現在は非常に厳しい経済状況の中にあって為替105円、2万3000円前後。アベノミクスを責任を持って引き継ぎ、さらに前に進めていきたい。日銀との関係については、やはり総理と同じように進めていきたい」

地方銀行

  菅氏は地方銀行の数が多過ぎることが収益低下の要因になっているとし、経営基盤を強化するための再編も一つの選択肢と主張している。地銀の収益悪化要因として、日銀のマイナス金利政策の影響よりも地銀の数の多さを強調している点は、日銀に大規模緩和が銀行収益に与える副作用の軽減を促していないようにも受け取れる。

2020年9月2日 出馬会見

「金融は、このような状況の中で企業を支えるためには必要だが、将来的には数が多過ぎるのではないかと思っています」

地方経済

  菅氏は地域経済を活性化させるため、観光立国を目指しており、

新型コロナウイルス感染症発生前に掲げた目標「2030年に外国人旅行客6000万人」の旗は降ろしていない。もう一つの重要な柱に位置付けている農林水産品の輸出目標についても「2025年に2兆円」「2030年に5兆円」を維持している。

2020年9月2日 出馬会見

「外国人観光客の誘致、インバウンドの拡大や農産品の輸出促進も、地方経済をもっと元気にしたいという思いからです。その思いは今後変わりません」

縦割りの弊害

  菅氏が出馬会見で豪語した「縦割りの弊害をぶち破る」という構想は、第2次安倍政権発足前の著書にすでに書かれている。官房長官時代に、異なる省庁が所管する水力発電用や農業用水用などの利水ダムを、洪水対策の治水ダムとしても利用できるように主導したのは、菅氏の縦割り打破が実を結んだ一例だ。

2012年3月 菅氏の著書「政治家の覚悟」

「恐ろしく保守的で融通の利かない官僚ですが、優秀で勉強家であり、海外の状況も含めて組織に蓄積された膨大な情報に精通しています。官僚と十分な意思疎通を図り、やる気を引き出し、組織の力を最大化して、国民の声を実現していくことが政治家に求められているのです」

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