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音の臨場感やアスリートの思い、延期五輪で新たな魅力発信へー室伏氏

  • 「五感で楽しむ五輪」、簡素化や感染症対策の本格的議論は9月から
  • 普段通りに力出せれば成果に-選手当時と同じ信念で五輪に向き合う

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「ハンマーが飛んでいく音を聞いたことがありますか?」。東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会スポーツディレクター(競技運営監督計画責任者)の室伏広治氏は、インタビューでこう問い掛けた。

  ハンマー投げで2004年アテネ五輪の金メダル、12年ロンドン五輪の銅メダルを獲得した室伏氏は、21年に延期された大会では、スポーツの新しい魅力を発信するきっかけを作ることができると考えている。

  延期が決まった当初は、「ゴールを目の前にして、突然こんな状況になってしまった」と戸惑った。しかし、観客数を制限したスポーツ大会に接するうち、陸上選手のスパイクが地面を蹴る「ガシャガシャ」という音や、野球でボールが捕手のミットに収まる音が会場に響き渡るのを聞いて、スポーツを「五感で楽しめるようになった」と感じている。

Koji Murofushi Interview

インタビュー中の室伏広治氏

Photographer: Andy Hung/Bloomberg

  東京五輪を無観客で行うことは想定していない。それでも、簡素化されることが決まっている大会では、音で臨場感を伝えるほか、延期された五輪にどのような思いで取り組んできたかなど、アスリートたちの「ストーリー」にフォーカスするのも選択肢だと目を輝かせる。

  自身の経験から「勝敗の9割は準備段階で分かっている」と明かす。極限までの練習を4年間積み重ね、普段通りに力を出せれば成果を得られるという信念を持ち、延期五輪にも同じ気持ちで向き合っている。

  新型コロナウイルス感染の終息時期が不透明な中、延期五輪開催に向けた運営は手探り状態が続いている。6月には組織委の森喜朗会長が、「華美なお祭り騒ぎ」では多くの人の共感が得られないと述べ、簡素化を図る方針を表明。運営やサービス水準など、アスリートに関わる分野以外は聖域なく見直す方向で議論を進めている。

疾風勁草  

  延期に伴う費用を最小化しながら、感染症対応でも安全な環境を構築するのは容易ではない。室伏氏は、現状は皆が目の前のことに精いっぱいで大会成功に自信を持てているわけではないとしながらも、苦難に見舞われて初めてその人の強さが分かるという意味の「疾風勁草」という言葉を引用し、底力を試されていると述べた。

  3月の延期決定後、組織委は政府の緊急事態宣言下で全ての競技会場を来年も使えるように手配。7月22日には新たな競技スケジュールを発表した。アスリートたちは、改めて1年後に状態をピークにもっていく練習に加え、トレーニング費用の捻出も必要となる。

  室伏氏は、競技団体が支援を求める手紙を企業などに何十通送ってもほとんど返事を得られていない現実もあるとした上で、「何とか来年の大会で試合に打ち込める環境を整えてあげたい」と語った。

  東日本大震災からの「復興五輪」を掲げていた大会は、新型コロナの感染拡大という未曽有の苦難を経験したことで、「人類の希望」や「一つとなって取り組む力」の象徴と位置付けられている。

  簡素化や感染症対策の本格的な議論は9月に始まり、内容がまとまった段階で追加費用を確定する。その後、オペレーションの検証を重ねながら来年3月にはテストイベントを開始。7月23日に開会式を行う予定だ。

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