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安倍氏は大胆だった、だが次期首相はもっと大胆になる必要-社説

安倍首相

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Photographer: Pool/Getty Images AsiaPac
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安倍晋三首相が先週、健康問題を理由に辞任する意向を明らかにした。8年近く続いた日本歴代最長の政権だったが、それでも潜在能力を発揮し切れなかった。その理由が何であるのか、次期首相は理解しておくことが賢明だろう。

  安倍氏は何とか断行してきた多くの変革で相応に記憶されることだろう。金融緩和、財政刺激策、構造改革の3本の矢で構成する「アベノミクス」は成長と株価と雇用を押し上げるなど、初期には一定の成功を収めた。安倍政権は女性の職場進出と移民の受け入れをかつてないほど進めた。コーポレートガバナンス(企業統治)改革により、取締役のあり方や日本企業の行動にも変化が起き始めた。そして恐らく、安倍政権がもたらした最も劇的な変化は、日本の地政学的地位が強くなったことだろう。防衛力を強化し、欧州連合(EU)や米国が離脱した後の環太平洋連携協定(TPP)加盟国との自由貿易協定を推し進めることで、それを実現した。

  しかし、誰が次期首相になろうと、安倍氏が直面したのと同じぐらいの困難が待ち受けている。成長、賃金、インフレに持続的回復は見えず、新型コロナウイルス感染で打撃を受けた日本経済は今や、第2次安倍政権発足前の規模にまで縮小している。総額200兆円規模の経済対策と日銀の緩和策継続はコロナ禍による打撃をいくらか和らげるだろうが、それでも課題は山積したままだ。起業家精神やイノベーションを阻む規制は、まだまだ減らさなくてはならない。雇用の流動性と賃金の伸びを妨げる年功序列型の雇用システムは見直しが必要だ。福利厚生や出世の見込みが乏しい非正規雇用労働者はまだあまりにも多い。

  安倍氏が順調なスタートを切った分野でも、やり残された課題は多い。新型コロナ禍で、多くの女性の仕事が不安定であることが露呈した。男女間の賃金格差に対処するためにやるべきことは多い。女性が安定したキャリアを築くための十分な柔軟性と育児支援を提供すべきだ。安倍政権が推進した企業改革の多くは、当初の想定より限定的なもので終わってしまった。日本の企業文化を改善し続けるためには、取締役や最高経営責任者(CEO)を説得する強力なリーダーが必要になる。日本が本当に必要としている移民を質量ともに引き寄せるためには、より幅広い変化が必要になるだろう。

  安倍氏は自身の最大の功績を国際面に求めることができるだろう。日本は米国とのパートナーシップの下、そして自由貿易に関しては日本自身の手で、自由でルールに根差した世界秩序を力強く提唱する存在となった。また、中国の台頭に対する地域の対応の構築にも尽力し、中国の投資マネーに代わる資金を世界中で提供してきた。しかし、ここでも、安倍氏が不要な考えを持たなければ、もっと多くのことが達成できたのではないかとの思いが浮かぶ。つまり、韓国との不毛な貿易摩擦や、物議を醸す憲法9条改正への取り組みなどだ。

  支持率が最も高かった早期の段階で安倍政権がより抜本的な経済改革の手を緩めた理由は、このような不用意な取り組みで説明できるかもしれない。日本が人口動態面や財政面、および戦略面での険しい課題に対処するためには、次の首相に同じ間違いを犯す余裕はない。

原題:Shinzo Abe Was Bold; His Successor Must Be Bolder Yet: Editorial(抜粋)

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