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7月鉱工業生産8%上昇、1978年以降で最大の伸び-小売り改善一服

更新日時
  • 生産の基調判断は「持ち直しの動きがみられる」に変更
  • 生産の伸びは4-5月に止めていた分の巻き返し-野村証の棚橋氏

31日発表された7月の経済指標では、鉱工業生産指数が新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた後の経済活動再開の動きを映し、データをさかのぼることができる1978年以降で最大の伸びとなった。一方、小売業販売額は新型コロナ感染の再拡大が懸念される中で改善傾向が一服した。

  

キーポイント
  • 鉱工業生産指数は前月比8.0%上昇(市場予想は5.0%上昇)の86.6-前月は1.9%上昇
    • 製造工業生産予測調査によると、8月は前月比4.0%上昇-予測誤差を加工した試算値は1.7%低下
  • 小売業販売額は前年同月比2.8%減の12兆4360億円(市場予想1.7%減)-前月1.3%減

生産

  7月の鉱工業生産指数(15年=100)は前月比8.0%上昇と、2カ月連続のプラスとなった。市場予想(5.0%上昇)を上回った。業種別では全15業種のうち12業種が上昇。新型コロナ感染拡大の影響で大幅な生産調整が行われていた自動車工業が回復しつつあるほか、これに伴い自動車部品や乗用車用タイヤ、工業用ゴム、鉄鋼・非鉄金属なども上昇に寄与した。

  基調判断は、生産は「持ち直しの動きがみられる」と、従来の「下げ止まり、持ち直しの動きがみられる」から変更された。製造工業生産予測調査によると、8月は前月比4.0%上昇、9月は1.9%上昇する見通し。予測誤差を加工した8月の試算値は1.7%低下が見込まれている。

基調判断「持ち直しの動きがみられる」

 

小売り

  7月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比2.8%減少した。5カ月連続マイナスで、減少率は市場予想よりも大きかった。季節調整を加えた前月比は3.3%減と、3カ月ぶりにマイナスとなった。  

  業種別では9業種中4業種が減少。百貨店などの各種商品や織物・衣料・身の回り品などで減少率が前月から拡大した一方、自動車は縮小した。小売業の基調判断は「緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」とし、前月の「持ち直している」から変更した。

5カ月連続マイナス

エコノミストの見方

伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミスト:

  • 生産については、自動車関連の輸出が回復しており、特に米国向けが急回復している。中国向けも自動車部品中心に回復。国内の自動車販売も戻ってきている
  • ただ、予測指数は弱い。車ははっきり回復しているが、それ以外の回復は弱い感じ。それが予測指数の弱さにつながっている。内外需とも自動車を除けば本格的に戻っていないので、生産の戻りも弱そうだ
  • 小売りは7月前半まで戻りはわりと良かったが、新型コロナの感染再拡大で7月後半から回復の勢いが鈍っている。8月にもっと弱まる感じが出るのではないか。耐久財が給付金で7月くらいまでは元気が良かったが、そろそろ一巡するはずで、当面消費の回復が鈍る要因になる

野村証券の棚橋研悟エコノミスト:

  • 生産の7月の伸びは4-5月に止めていた分の巻き返し。8%の大幅増がこれからも続くわけではない
  • 上昇の自動車工業は需要自体が大幅に回復してきているものの、コロナ前の水準を回復するのはしばらく先になるだろう
  • 低下の生産用機械は、企業の設備投資を見直す動きが後ずれして出てきている。4-6月国内総生産(GDP)で設備投資が輸出や個人消費に比べてあまり減らなかったのはサプライズ、夏場にかけて計画見直しの動きが出ている
  • 小売りは前月比で6月の伸びが高かった分の反動と、7月にかけて国内の新規感染者が目立ってきて、人々が外出を控えやすかった影響が出ている
  • 今後の消費動向は感染者数次第という側面は結構ある。8月は新規感染者数は減ってきているが、サービスPMIは前月から低下、景気ウオッチャーの先行き判断も下がっており、先行きの見方が変わってきている

IHSマークイットの田口はるみ主席エコノミスト:

  • 生産については今回在庫も大きく減ってきており、ポジティブな数字が出てきた。これまで生産のネックになっていた供給の方も回復してきている
  • コロナの影響で自動車を使う人が増えているところはあるし、それを給付金がボーナスのような形で支え、国内自動車市場を支えたというのはあるだろう

農林中金総合研究所の南武志主席研究員:

  • 生産について、自動車がかなり落ち込んだので、その戻りが急ピッチで進んだというのが7月だろう。前月比で40%弱も増えているし、それだけで指数自体をかなり押し上げている
  • 一方、生産用機械や資本財は弱いという印象があり、設備投資は年後半にかけて調整色が強まるリスクはある
  • 自動車は3-5月に売れなかった分が今出ているだけ。乗用車なら夏の賞与も決して良くなく、冬はさらに減って来年の夏も良くないとか、アベノミクスが終わってしまうとベースアップもどうなるか分からない。家計の所得環境は今後厳しくなり、消費の戻りを弱めることは十分あり得る

背景

  • 新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済への影響が続く中、7月の輸出は前年同月比19.2%減少。マイナス幅は前月から縮小した
  • 内閣府は8月の月例経済報告で景気判断を「持ち直しの動き」に据え置く一方、輸出と生産の判断を上方修正した
  • 7月の景気ウオッチャー調査では、新型コロナ感染症の不透明感がくすぶる中、先行き判断DIが3カ月ぶりに前の月を下回った

   

(鉱工業生産と小売統計をまとめ、エコノミストコメントを差し替えて更新しました)
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