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日銀ETFの減損リスク、J-REIT「159億円」が残した教訓

  • 日銀が前年度にREITで減損計上、2010年以降の買い入れ政策で初
  • 日銀の購入方法ではリスクは右肩上がりに-セゾン投信・瀬下氏

日本銀行が進める資産買い入れ政策のうち、不動産投資信託(J-REIT)で前年度末に減損損失が発生したことをきっかけに、上場投資信託(ETF)でもいずれ同様の問題が発生しかねないと警鐘を鳴らす声があがっている。

  「日銀からの国庫納付金が減るという点で、ついに国民負担が発生した」。ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、日銀が2020年3月期決算でJ-REITの減損損失159億円を計上したことに危機感を示す。日銀は会計方針で、ETFやJ-REITなどで「時価が著しく下落した場合」は銘柄ごとに減損処理している。

BOJ Sits Tight While Taking Gloomier View of Economy This Year

7月決定会合後の記者会見での黒田日銀総裁.

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  東証REIT指数は、新型コロナウイルスの感染拡大による懸念で2月高値から3月安値まで一時50%安、3月月間でも21%安と急落した。日銀によると、2010年12月の開始以来、J-REITとETFを含めて期末に損失計上したのは初めて。239億円の配当によってJ-REITの運用損益全体ではプラスを確保した。

  SBI証券アナリストの並木幹郎氏は3月のJ-REIT急落の背景を、新型コロナの影響に年度末特有の決算対策売りが重なったためとみる。同氏はかつて経験したことのなかった値動きを「リーマンショックの時も1年5カ月で半減、それが1カ月で起きて市場は相当凍りついた」と振り返る。

3月の急落が減損につながる

  現在、東証REIT指数は3月末に比べて約9%高、日経平均も半年ぶり高値となるなど、世界的に新型コロナによる急落を埋める中で同様のことがただちにETFに起きると危惧するのは少数派だ。しかし、買い入れ手法が独特であるがゆえに、保有簿価が上昇し続ける将来のリスクを危ぶむ声もある。セゾン投信運用部の瀬下哲雄運用部長は、「下がったところだけ金額を増やすのが投資のセオリー。上がったところで買えば買うほど減損リスクは高まる」と説明する。

  日銀がETFやJ-REITに投資を開始した10年前から日本株は上昇基調をたどったが、目的だったはずの物価は上がらなかった。その間も規模だけは拡大させてきた結果、「自ら取得単価を上げてリスクを高めた」(瀬下氏)。実際、ETF購入の損益分岐点を日経平均株価に引き直すと右肩上がりだ。ニッセイ基礎研によると、導入当初は9000円台だったが、ことし7月末には2万0130円と月末ベースで初めて2万円台に乗せた。

日銀保有ETFの日経平均ベースでの損益分岐点

直近では2万円台まで上昇

出所:ニッセイ基礎研

  前期は一部銘柄の下落による減損にとどまったが、もし保有総額全体で簿価が時価を下回るようなら損失引当金を積む必要がある。ニッセイ基礎研の井出氏は3月にJ-REITが最も下がった時点では配当金でも含み損を賄えなかった懸念があるほか、ETFでは最大3.5兆円の含み損を抱える場面があったと試算する。「タイミング悪く3月末を迎えていたら、当期赤字の恐れもあった。新型コロナや米中摩擦といった相場環境次第で、日経平均は今後いつ2万円を割ってもおかしくない」と、同氏は述べた。

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