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エピックとアップル・グーグルの対立、「パックマン時代」に起源

  • ゲーム関連収入の30%を徴収する慣行、ファミコン時代に原型
  • エピックの抵抗、新たなプラットフォーム誕生につながる可能性も
relates to エピックとアップル・グーグルの対立、「パックマン時代」に起源

PHOTOGRAPHER: CHRIS DELMAS/GETTY IMAGES

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人気ゲームソフト「フォートナイト」を手掛ける米エピック・ゲームズは、「壮大な」という意味を持つ社名に値することを証明しようと躍起だ。 アップルとアルファベット傘下グーグルがプラットフォーム上でのゲーム収入の30%を自社の取り分としていることに反発し、両社を相手に壮大な闘いに挑んでいる。エピックが時代遅れで不当だと主張するこうした手法は、ゲームカートリッジと初期のゲーム機が使われた1980年代の日本に一つのルーツがあり、同社をはじめ世界のゲーム開発企業からここにきて疑問の目を向けられている。

  プラットフォーム「税」と呼ばれるこうした慣行は、莫大な資金の分配を決めている。エピックのフォートナイトはゲーム内課金アイテムなどからの売り上げが年間10億ドル(約1060億円)を上回ると推計される。エピックがアップルとグーグルへの抵抗をエスカレートさせたきっかけは、両社の課金システムを介さずにフォートナイトのユーザーにアイテムを直接購入できる選択肢を提供したため、アップストアとグーグル・プレイからフォートナイトが削除されたことだ。その後エピックはアップルとグーグルがいずれも市場での支配力を利用して課金していると主張し、両社それぞれを相手取り提訴した。

アップル、グーグルが「フォートナイト」の配信停止-開発元は提訴

  2016年までアップルでアプリ審査の責任者を務めたフィリップ・シューメーカー氏によれば、アップストア担当チームにアプリの購入・定額利用について30%ルールを言い渡したのは、共同創業者スティーブ・ジョブズ氏だったという。グーグルのアンドロイド端末用アップストアもアップルと同様の料金体系を採用している。

  しかし、この30%の取り分はそもそも何に対する対価だったのか。1980年代初頭に最初にこうしたプラットフォーム料金を導入したのは、家庭用ゲーム機「ファミリーコンピューター(ファミコン)」だった。「パックマン」の開発で知られ、アーケードゲームにおける主要業者だったナムコは、任天堂が83年に発売したファミコンを介してゲームの販路拡大を目指した。独立系業界コンサルタントでゲームアナリストの平林久和氏によれば、ナムコは別のゲームメーカーで「ボンバーマン」の開発元でもあるハドソンを巻き込む形で、任天堂に社外ソフトウエアメーカーへのプラットフォーム開放を説得したという。

  平林氏によると、ナムコは自社でカートリッジを生産できるよう任天堂に対して10%のライセンス料の支払いを申し出た一方、そうした生産能力がなかったハドソンに対しては任天堂に追加で20%程度を支払い生産委託することを提案。任天堂がこれに同意したことから、ライセンス料と生産委託料の2つから成る手数料体系が生まれ、現在の30%「税」の原型となった。

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1980年代の任天堂ファミコンをベースに2016年発売されたNESクラシックエディション

Photographer: Guillaume Payen/Getty Images

  カートリッジがディスクに取って代わられる中で変動した手数料は、ゲームの流通経路が劇的に変化した中でも十分な議論を経ずに代々のゲーム機やその他プラットフォームで課されてきた。ゲーム購入が物理的形式かデジタルダウンロードかにかかわらず、アップルとグーグル、任天堂、ソニーバルブマイクロソフトはいずれもソフトウエアメーカーから売り上げの30%を徴収している。これらのプラットフォームの全てが自社の取り分を公表しているわけではないが、こうした手法は業界標準として知られる。

  ソニーはソフトメーカーに対し、デジタル商品に対する自社の取り分は決済手数料とサーバー維持コスト、ライセンス料で構成されると説明しており、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は、同社がセキュリティーや開発サポートを提供するとともに、中小企業が前払いすることなく10億人規模のユーザーとつながる機会をもたらしているとしている。

  エピックのティム・スウィーニー最高経営責任者(CEO)は長年、こうした説明に反発し、ソフト開発者の分け前を増やすのが当然だと主張してきた。2018年に同社はバルブのウィンドウズPC用ゲーム配信サービス「Steam(スチーム)」に対抗する「エピック・ゲームズ・ストア」を立ち上げ、クリエーターがゲーム収入の88%を確保できる仕組みを導入した。

  一方、売り上げを7対3で分割する商慣行の発祥の地である日本のゲームソフトメーカーはこうした分け方をあまり懸念していないが、ゲーム定額サービス「アップル・アーケード」での最近の戦略変更は、一部ゲーム開発者との契約打ち切りにつながり、アップルへの不信感を招いている。ただ、平林氏の話では、「開発者は必ずしも30%からの引き下げを望んでいるわけではなく」、むしろ30%の取り分に見合うだけの良いサービスを開発者に提供するようアップルに期待しているという。

  モバイル業界を牛耳るアップル、グーグルの2社とエピックとの闘いは、新たなプラットフォームの誕生につながる可能性もある。任天堂のゲームカートリッジの生産コストが膨らんで手数料が30%を超える事態となった時も同様のことが起き、その後ソニーは製造コストが安価なディスクを採用したゲーム機「プレイステーション」を投入。「低めの」手数料に戻してゲーム開発者を引きつけた。新型コロナウイルス感染が拡大する中、任天堂が携帯型ゲーム機「スイッチ」でこのところ成功していることは、スマートフォンを超えたモバイルゲーム市場の存在を証明するものだ。

  ゲーム業界の利益は過去最高水準にあるだけに、売り上げ分配方法の決定はこれまで以上に重要になっている。アップルとグーグルはフォートナイトという収益性の高いゲームタイトルの1つを失う事態に直面するとともに反トラスト法の観点からの議会の監視強化と向き合うが、古いゲームカートリッジの時代に由来する手数料へのこだわりをいずれ断念させられるかもしれない。

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)

原題:Epic’s Battle With Apple and Google Has Roots in the Pac-Man Era (抜粋)

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