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在宅できないトレーダーも、日銀オペ対応に苦慮-最重要決済システム

  • 日銀はセキュリティー上の理由で自宅からの接続には慎重な姿勢示す
  • 欧米の中央銀行では在宅対応可能、災害時など想定し日本でも議論を

新型コロナウイルスの感染が全国的に再び拡大する中、政府は企業に在宅勤務の活用を呼び掛けている。金融業界でもトレーディングフロアから自宅に移るトレーダーがいる一方、在宅勤務できないトレーダーもいる。日本銀行による国債買い入れなど、いわゆる日銀オペを担当する金融各社のトレーダーだ。

  日銀による資産買い入れオペに参加している複数の金融機関は、この先コロナ感染拡大が悪化しても、オフィスに設置された専用端末しか使えないことを不安視している。少なくとも3社の金融機関が日銀に対し、在宅などのリモート勤務に対応できないか問い合わせていたことが分かった。日銀はセキュリティー上の理由で運営方針を変えることには慎重だという。複数の関係者が匿名を条件に明らかにした。 

There's Another Culprit for Treasury Rout Besides Japan, China

スクリーンに表示されたデータを確認するトレーダー

Photographer: Akos Stiller/Bloomberg

  現在、56の金融機関が日銀の国債売買を手掛けている。これらの金融機関は、オフィスに設置した専用端末を通じて「日銀ネット」に接続し、日銀オペに参加する。ミスを防ぐため二重チェックの必要性から、少なくとも2人は出社しなければならない。米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が在宅からのオペ参加を許容しているのとは対象的だ。

  新型コロナ感染者が再び拡大に転じた7月、日銀による国庫短期証券と国債の買い入れは21営業日中、14日間で実施された。また、財務省の国債入札に参加している金融機関は、さらにもう5日の出社対応を迫られた。同じシステムを使用しているためだ。

  ジェフリーズ証券の伴英康アナリストは金融機関にとって、日銀の資産買い入れオペへの参加を見合わせることは「基本的に不可能」と指摘する。量的緩和政策で日銀が国債の大量買い入れを続けているため、銀行や証券会社は財務省から落札した国債をすぐに日銀に転売することでほぼ確実に利ざやを稼げるからだ。こうした手法は「日銀トレード」と呼ばれ、超低金利下での貴重な収益機会となっている。

  伴氏はまた、「オペのタイミングでポジションを処分したいという顧客の玉もあると思う」と述べ、「トレーダーの在宅勤務はなかなか難しい」との見方を示した。

日銀の国債保有残高の推移

  関係者によると、日銀の中にも金融機関に何らかの便宜を図る必要性を認識している人々はいる。多くの金融機関はBCP(事業継続計画)の観点から、通常のオフィスとは別に勤務できる場所を確保しているが、日銀ではコロナ問題を受けて、この臨時オフィスに設置している専用端末を常時使用することは許可したという。

  一方、トレーダーの自宅に専用端末の設置を認めることには慎重だ。1日に200兆円を超える決済が行われている国の金融インフラの要である日銀ネットの専用回線につなぐ必要があり、日銀内にはセキュリティー上の問題点を懸念する声が上がる。

  日銀はブルームバーグの問い合わせに対してコメントを控えた。

  元日銀審議委員で野村総研の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「日銀ネットは日本で一番重要な決済システム。不具合が起きれば非常に深刻であり、セキュリティーを厳しくすることは妥当」と指摘。一方、大震災などの災害時にはオフィスも被害を受けて専用端末を使用できない事態も想定されるとし、今後議論を深める必要があるとも述べた。

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