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香港の法律制度巡る欧米の不信感、メディア界大物逮捕で原因あらわに

  • 香港との犯罪人引き渡し条約、ドイツや英国が停止-米国も追随か
  • 国安法の施行からわずか数週間、香港法制の信頼性は崩壊寸前に

香港メディア界の大物で蘋果日報(アップル・デーリー)創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏が10日に香港国家安全維持法(国安法)違反の疑いで逮捕されたことを巡り、中国本土と香港当局が出した声明は、国安法がいかに急速に香港の独立した司法制度を損ねているかを浮き彫りにした。

  香港警察はツイッターで、蘋果日報の編集局を令状なしで捜索したとの主張を否定した上で、黎氏らは国安法に「違反した容疑」で逮捕されたと強調した。香港政府も無罪の推定余地を残す言い回しで、国安法違反の「疑い」が持たれており、捜査が進行中だと説明した。

Enforcing Hong Kong’s National Security Law

Sources: Hong Kong Police Force, media reports, data compiled by Bloomberg

  一方、中国政府は既に事実上の有罪を宣告した。外務省の駐香港特派員公署は黎氏らを香港の長期安定を脅かす「反中のトラブルメーカー」と呼び、同氏の潔白を主張してごまかそうとしているとして香港外国記者会(FCC)を非難、「香港や中国全般でトラブルの種をまく勢力の側にいる」と論じた。

  香港と中国本土で発せられた対照的なコメントは、2つの大いに異なった法制度が相いれないことを示している。本土の法制度は共産党を権力の座にとどめることを目指し、香港では法の下の平等を標榜する英国流コモンローの流れをくむ。12日未明に保釈された黎氏は中国政府から長らく批判されてきた。昨年には共産党中央政法委員会の出版物が新たな「四人組」の1人として同氏を挙げていた。

Hong Kong Media Tycoon Jimmy Lai Released on Bail

黎智英氏

  この数十年にわたり、香港の法制度はアジアトップの金融センターとしての香港の地位を下支えしてきた。多国籍企業や世界のメディア企業にとっての一大拠点であり、主要企業のみならず外国政府も含めた国際仲裁で信頼に足る中立的な司法も有していた。国安法の施行からわずか数週間で、香港が築いてきた法制への国際的な信頼性が急速に崩れ落ちようとしている。

  香港との犯罪人引き渡し条約を巡ってはオーストラリアやドイツ、英国などが既に停止。今後も、香港に対する優遇措置を撤廃した米国などが追随する公算が大きい。

Second Thoughts

Countries are rethinking their extradition deals with Hong Kong

Sources: HKSAR Dept. of Justice, data compiled by Bloomberg

Note: French deal was signed, but never enacted.

  国安法が予測不能で、各団体が香港で会議を開くことに二の足を踏む可能性が高い一方、企業経営者には香港移転の再検討を促すことになるかもしれないと香港の弁護士会、香港大律師公会のフィリップ・ダイクス主席は話す。

  現在の状況は、香港が世界各国との犯罪人引き渡し条約を確保するため海外に政府の弁護士を派遣していた1990年代とはかけ離れているとダイクス氏は指摘。中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例改正案」をきっかけに抗議活動が昨年始まったが、それを抑え込む目的で制定した国安法が主要国との引き渡し条約に影を落とす結果となり、「何とも皮肉だ」とダイクス氏は語った。

原題:Jimmy Lai Shows Why the West Lost Faith in Hong Kong’s Courts(抜粋)

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