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報道の自由奪われた香港、世界の金融センターとしての評判も失墜か

  • アップル・デーリーは発行を続けることができないかもしれない
  • 黎智英氏と周庭氏、10日に相次ぎ逮捕される-国安法違反容疑で

香港が英国から中国に返還される前の1995年、黎智英(ジミー・ライ)氏は民主化支援も視野に香港紙「アップル・デーリー(蘋果日報)」を始めた。同紙はその後の四半世紀にわたり広告ボイコットや政治的圧力にさらされながらも、中国政府や親中派の立法会(議会)議員らの動きを手加減せずに報道してきた。

  だがアップル・デーリーはこの夏、発行を続けることができないかもしれない。警察は10日、香港国家安全維持法(国安法)違反の疑いで黎氏ら幹部を逮捕。数百人の捜査員を動員し、ニュース編集室などの家宅捜索を行った。

Hong Kong Media Tycoon Jimmy Lai Arrested in Latest Blow to Democracy Camp

自宅から連行される黎智英(ジミー・ライ)氏(8月10日)

  香港のケーブルテレビ、有線電視によれば、民主派団体「香港衆志(デモシスト)」の創設メンバーで活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏も同日、国安法違反の容疑で逮捕された。香港衆志は国安法の制定後、すでに解散している。

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警察によって連行される途中で車外に目を向ける周庭(アグネス・チョウ)氏(8月10日)

  オランダのマーストリヒト大学で教える政治経済学者イモジェン・T・リウ氏は「英統治下で制度化された市場の規律と透明性の評判故に、香港は国際的な投資家にとって魅力的だった」と説明。「自由な市場競争と政府不介入と共に、言論の自由がこうしたリベラルな印象の一部を成している」と述べた。

香港情勢緊迫:

  少なくとも2018年以降、報道関係者は香港での言論の自由に対する中国の締め付けを懸念し続けてきた。この年、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のアジアニュース担当エディターの就労ビザ(査証)更新を香港当局が拒否。1997年の返還後、外国人ジャーナリストが追放されたのはこれが初めてだったとみられている。

  懸念は今年に入り強まるばかりだった。ニューヨーク・タイムズ(NYT)とウォールストリート・ジャーナル(WSJ)、ワシントン・ポストで働いていた米国人を香港から追い出した中国政府は、香港ではこうした記者らは歓迎されないとしている。

  外国人特派員が所属する香港外国記者会(FCC)は、アップル・デーリー幹部の逮捕と同紙ニュース編集室の家宅捜索を非難。「香港の世界的評判を壊す暗い新たな局面」を示していると指摘した。

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アップル・デーリー紙

フォトグラファー:ロイ・リュー/ブルームバーグ

 

  中国外務省の香港公署は声明で、FCCは「真実をゆがめて伝え、国安法と香港警察の法執行で根拠のない主張」を重ねており、「犯罪容疑者の正当化を図っている」などと反論した。

  アップル・デーリーを含め、香港メディアで働く現場記者からは国安法の制定後、取材の範囲を狭めたり署名記事をなくす動きが社内であったとの指摘がある。当局とのトラブルを未然に回避し、記者を守るためだ。また、民主活動家が書いた本は香港の図書館の棚から排除されている。

  香港中文大学陳慶池教授(政治経済)は「図書館での本排除や民主活動家の逮捕はまさしく、この法律の機能を物語っている」と分析。「長期的に表現の自由はさらに一段と損なわれ、香港の国際金融センターとしての評判が徐々に失墜していくのだろう」と語った。

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アップル・デーリーのニュース編集室を捜索する警官ら(8月10日)

原題:Media Tycoon’s Arrest Sends Warning to Hong Kong’s Free Press(抜粋)

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