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日本企業のサプライチェーン再構築、中国離れの恩恵は東南アジア

更新日時
  • 日本政府はサプライチェーン多元化に取り組む企業に補助金支給
  • 企業の移転が進む東南アジアでベトナムが大きな受益者に

新型コロナウイルス時代に中国に偏った企業のサプライチェーン(供給網)見直しを促す日本政府の取り組みは、東南アジア諸国に恩恵をもたらす可能性がある。

  日本政府は、新型コロナの感染拡大や米中関係の悪化を踏まえ、サプライチェーン強靱(きょうじん)化プログラムの第1弾として、東南アジアで生産を増強する企業30社に計約120億円の補助金を出す。日本は中国など一国へのサプライチェーンの依存低下を目指しており、こうした補助金によって中国からより生産コストの安いベトナムやタイなど近隣諸国への移転が加速する可能性がある。

  半導体製造装置用の部品などを製造するフジキン(大阪市)は、今回の支援で恩恵を受ける企業の1社だ。同社は中国からべトナムへ生産を一部移転するコストの3分の2相当の補助を受け取る。

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フジキンのベトナム生産拠点

Source: Fujikin Inc.

  フジキンの野島新也社長は3日、「補助金制度が出る前から増強は考えていた。タイミングよく、ぴったり支援制度が合致した」と語った。

  今年に入り新型コロナ感染拡大の影響でフジキンの中国の外部協力工場が操業を停止した際、部品の出荷を巡り顧客に不安が広がった。移行を考え出したのは今年。「中国からの調達はありませんか、納期は大丈夫ですか」という問い合わせが顧客からあったという野島氏は、米中摩擦を含めてリスクが高まる可能性を踏まえ、「ベトナムでも作れるようにしておこう」と考えたと説明した。

中国拠点の見直し

  新型コロナの感染拡大、そしてロックダウン(都市封鎖)と続き、世界中の企業経営者や政府当局者は、生産拠点としての中国への依存を減らすためにサプライチェーンの見直しを迫られた。

  日本は新型コロナ感染症が拡大する前から、人口が若く増加している東南アジアの幾つかの国で既に主要なプレーヤーとなっている。過去10年の日本によるベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア、タイの5カ国への投資は、対中投資のほぼ2倍のペースで増加した。   

  投資の大部分はインフラ開発で、日本はインドネシアやフィリピン、ベトナムなどでは鉄道や病院の建設で中国企業と競争している。米中貿易戦争や東南アジアにおける中国のプレゼンスの拡大を巡る懸念も、日本と東南アジア諸国との経済関係の強化を促している。

日本が中国を引き続きリード-東南アジアのインフラ開発競争

東南アジアに流れる日本資金

直接投資を拡大

出所:財務省

  シンガポールのISEAS・ユソフ・イサーク研究所が1月公表した年次調査によると、東南アジア諸国において日本は最も信頼のおける主要国と評価されている。5つの専門分野にわたる1308人のうち61.2%が、日本は公共の利益のために「正しい行動を取る」と信頼していると回答した。

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フジキンの野島新也社長

Source: Fujikin Inc.

  こうした双方の信頼関係の下、日本からベトナム、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピンへの過去10年間の純投資額は1390億ドル(約14兆7000億円)に上った。

  日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部アジア大洋州課の北嶋誠士課長代理によると、「今回のコロナ、米中貿易摩擦が起きる前から中国からの生産移管、いわゆる『チャイナ・プラスワン』という動きはあった」という。

  ベトナムは中国に隣接していること、人件費と電力コストが比較的低いこと、外国からの投資に開放的であることから、多くの製造業者の大本命の移転先として浮上してきた。過去9年にわたって両国間のビジネス促進に携わってきた北嶋氏は、リーマンショック後の2009年を底に日本の対ベトナム直接投資はきれいに右肩上がり、基本的には投資件数は増えていると語った。

ベトナムブーム

  フジキンの野島氏によると、ベトナムの賃金は日本の10分の1で、中国よりも低い。北嶋氏によれば、多くの企業がベトナムの若さと急成長する国内市場にも注目して移転している。投資家も安定した政治や新型コロナ感染を封じ込める能力が高いベトナムを信頼している。

  海外サプライチェーン多元化支援の対象となった30社のうち半分は、ベトナムへの投資に補助金を活用することを計画している。

ベトナムブーム

日本からの純直接投資は増加傾向

出所:財務省

  そのうちの1社が、25年にわたりベトナムで婦人服縫製加工などを行っている昭和インターナショナル(東京)だ。新型コロナ感染拡大の影響で医療用ガウンやマスクの需要が高まる中、同社の西澤和男社長は月に最大15万着のガウンの生産が可能になるとみている。

  「まだまだガウンもマスクも足りない」と言う西澤氏は、世界中で需要が高まる中で「まず日本に安定したものを供給するという使命がある」と語った。

  サプライチェーン強靱(きょうじん)化支援の第1弾では、生産拠点の国内整備へ57社に計574億円、海外での生産増強へ30社に計約120億円を補助する。

国内生産拠点への投資に政府支援574億円、新型コロナで供給網再構築

インドネシア投資

  東南アジア最大の経済規模で、世界で4番目に人口が多いインドネシアも、ジャカルタ初の地下鉄網整備など日本からの投資拡大で恩恵を受けている。インドネシア当局は6月、外国企業7社が中国からインドネシアに工場を移転し、総投資額は8億5000万ドル相当になると発表した。そのうち3社は日本企業で、パナソニックデンソーが含まれている。

  インドネシア投資調整庁のユリオット副長官は、「日本からの直接投資は高水準を維持、あるいは一段と増加している。特にジャカルタ都市高速鉄道の第2期プロジェクトが近く始まることが大きい」と説明。他の理由としては「日本企業が工場を中国からインドネシアへ移すトレンドがある」と語った。

  日本国内ではサプライチェーンの確保で圧力が高まりつつある。

  安倍晋三首相の盟友である自民党の甘利明税制調査会長は先月のブルームバーグとのインタビューで、「従来は経済合理性で突き詰めていく。コロナ禍の下では経済安全保障の視点からリスク分散をするという考え方に代わってきている」との認識を示した。

原題:Japan’s Push to Cut China Reliance Boosts Southeast Asia (1)(抜粋)

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