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コロナ禍で半導体需要増の波に乗る日本の半導体部材株、高シェア強み

  • 半導体部材株は3月安値から大きく反発、日産化学は2倍に
  • 半導体市場の成長期待もあり電子材料株の注目高まる-ゴールドマン

新型コロナウイルスの感染対策としてデジタルトランスフォーメーション(DX)化や在宅勤務の定着が見込まれ、通信インフラへの設備投資加速が半導体関連産業の事業環境を明るく照らしている。「ウィズコロナ」を手がかりとした投資家の物色が世界で圧倒的なシェアを誇る日本の半導体材料株に波及している。

  かつて世界の半導体の製造をけん引していた日本企業は、今や株式時価総額が28日時点で世界10位の台湾積体電路製造(TSMC)の姿が遠いという状況。それでも半導体のニッチな材料の多くでは日本企業だけで世界のトップシェアを占め、ほぼ100%という材料もある。

Photoresist

Applying photoresist to silicon wafer at Tokyo Ohka Kogyo.

  シェアが高いと利益も出やすい。ゴールドマン・サックス証券のアナリスト池田篤氏らは、トラックレコードが非常に重視される半導体材料は、一般的に量産ラインで一度採用されると他の材料に切り替えられることはまれだと説明。高い参入障壁を背景に国内の半導体材料メーカーの事業利益率は高く、「半導体市場の成長期待もあって電子材料系企業に対する市場の注目度は一段と高まる」と同氏らは予想する。

  同証券によると、300ミリシリコンウエハーの市場シェアは信越化学工業とSUMCOで55%、フォトマスクブランクスではHOYA、信越化、AGCの3社で95%、フォトレジストでは信越化やJSRなど5社で95%を占める。

  事業環境に追い風をもたらしているのが皮肉にも新型コロナウイルスだ。リモート会議システムやテレワークといったリモート関連でのオンラインサービスやデータトラフィックの増加を支える情報通信インフラの需要が伸びると野村証券の岡嵜茂樹アナリストは分析。「半導体や半導体材料の事業機会は構造的な拡大が期待できる」と同氏はみる。

TOPIXや化学セクターをアウトパフォーム

  株式市場での存在感も高まってきた。東証1部化学セクターで半導体部材の売り上げ構成比が比較的高い5社(信越化学工業、日産化学、JSR、東京応化工業、トリケミカル研究所)の株価を加重平均したインデックスは、東証1部株価指数(TOPIX)が安値を付けた3月16日から7月28日までで50%以上上昇した。同期間のTOPIXの27%、東証1部化学指数の30%を大きく上回る。

Photoresist

JSR’s photoresist.

  アナリストも強気の投資判断で調査を開始した。シティグループ証券は16日に信越化とSUMCOの投資判断を新規に「買い」とし、17日にはゴールドマン・サックス証券も新たにJSRや東応化など5社を「買い」とした。池田アナリストは電子材料メーカーはサーバー向けシリコンやAIや高性能計算(HPC)向け先端ロジック、5Gスマートフォン向けの需要増に加え、極端紫外線(EUV)を含む微細化技術の進展を背景に高い成長を見込む。

  信越化は28日に4-6月期決算を発表、コロナ禍でウエハーの在庫積み増しの動きがみられ半導体シリコンの需要は堅調だとした。東応化はアジアを中心に半導体材料が好調なことなどから今期の業績計画を上方修正した。

日産化学が上昇率トップ

  半導体部材を扱う化学株の中で、3月安値からの反発が大きいのが日産化学。28日時点の上昇率は2倍を超える。東海東京調査センターのアナリスト、中原周一氏は「他の企業が減益見通しやそもそも見通しが出せない中で、安定した業績と株主還元が評価されている」と話した。今期は増収増益に増配を計画。スマートフォン向け商材の減速懸念もある中、半導体向け材料の好調で補えるという方針を出していることがポイントだと中原氏は指摘する。

3月安値から7月28日終値までの上昇率ランキング
日産化学105%
東京応化工業79%
トリケミカル研究所76%
JSR52%
信越化学工業51%

  ブルームバーグのデータでは、日産化学は化学セクターで会社計画が増収増配の銘柄のうち、自社株買いと配当の総額を少数株主前利益で割った直近の総株主還元性向が最も高い。コロナ禍でも自社株買いを行うなど「株主還元では日産化学が化学株でNo1であることへの評価は高い」と中原氏は言う。

  半導体最大手の米インテルが23日に生産の外部委託に柔軟に臨む姿勢を示したことも日産化学に恩恵をもたらす可能性がある。日産化学のIR担当者は、インテルがTSMCに外部委託した場合、日産化学の半導体用反射防止コーティング材「ARC」や多層材料がTSMCに採用されているため恩恵があるかもしれないとコメントした。

  岩井コスモ証券の斎藤和嘉シニアアナリストによると、ARCはアジアでの販売のみを行える形態となっているため、「TSMCがアジアで部材調達を行った場合、日産化学は売り上げ増加が見込める可能性がある」と述べた。

中長期的成長期待も

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘チーフ投資ストラテジストは、日本株の中でもソフトウエア、半導体、半導体製造装置に加えてそれらの製造に不可欠な部材関連の銘柄は「中長期的に高いパフォーマンスを出すだろう」と話す。今週発表予定のアップルやアマゾン・ドット・コムといった米国企業の決算が良ければ、「連想買いが入ってさらに上昇する可能性が大いにある」と述べた。

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