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新鮮な肉や魚もネットで、新型コロナで浸透-アマゾンや専業会社攻勢

  • 関連銘柄の株価上昇、アマゾンはスーパーと組んだ宅配のエリア拡大
  • コロナ収束が見えない中、生鮮食品のEC化の普及は続くと専門家

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が対策本部を立ち上げた3月下旬、有機野菜などの宅配サービス「オイシックス」が新規会員の申し込みを停止した。急激な需要の増加で出荷能力の上限を超えたためだ。

Tokyo Considers Supermarket Restrictions to Curb Crowds

都内のスーパーで野菜を選ぶ消費者(4月8日)

Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

  既存会員からの注文も増え、3月の1人当たりの平均売上額は1-2月の平均に比べて約20%上昇。新規会員の申し込みを再開できたのは約1カ月後だったという。運営会社であるオイシックス・ラ・大地の高島宏平社長は生鮮食品をネットで定期的に注文する行為について、新型コロナの影響の長期化で「自宅にいることが求められている期間が続いたので、お客さまの習慣がつくられたという感じがある」と話す。

  同社の株価は2月の直近安値から2倍以上に上昇している。

  需要の高まりを受けて小売り各社はサービス拡充を急いでいる。ネット通販世界最大手のアマゾンはスーパーマーケットチェーンのライフコーポレーションの肉や野菜など生鮮食品を含む商品を配送するサービス「Prime Now」で、新型コロナを受けた顧客ニーズの増加に対応するため、16日から東京に加えて大阪でもサービスを始めるなど対象エリア拡大の動きを加速させている。

  アマゾンジャパンの広報担当者は、電子メールの取材で日本では実際に手に取り、目で見て確かめて買いたいという顧客の意向がまだ根強い状況と指摘。新鮮さを重視するため生鮮食品はあまり買い置きせず、買い物の頻度が高かったり、複数店舗で買い物したりする傾向がみられ、一度にある程度の量をまとめて購入することが前提のネット購買の比率が海外と比較して低い要因と分析する。

  日本で食料品のネット販売(EC)比率がまだ低いということは、今後の伸びしろが大きい分野であるとも言える、と述べた。ライフの株価も29日に一時5050円と上場来高値を付け、3月16日の直近安値から2倍以上に上昇している。

  スーパー国内最大手のイオンは9日、第1四半期(3-5月期)に同社が手掛けるネットスーパーの新規登録会員数が前年同期比で4倍超となり、売上⾼でも2割増えたと明らかにした。流通経済研究所が行った京浜地区の一部のネットスーパーの販売データ分析によると、3-5月の受注件数は前年同期比1.6倍に増えたという。

  経済産業省によると、世界の小売市場に占めるEC化率は2018年に10.2%。中国ではこれを上回る22.7%、イギリスでは19.3%、米国でも9.0%だったが、日本では7.3%にとどまる。さらに個人消費全体の約4割を占める「食品・飲料・酒類」のEC化率は約2.6%にとどまっていた。

下がるハードル

  アスクルでも個人向け通信販売のロハコ事業で3-5月にかけて、食品の販売が大幅に伸び、担当部署では毎日在庫確保に追われた。一方で、同社では保冷配送が必要になる3月に野菜や果物の配送を停止。新型コロナを受けて高まる生鮮品の宅配ニーズに対し、環境を整備し、来年は「チャレンジしたい」とLOHACO生活用品統括部の立花智子氏は言う。

  異業種同士での連携も進んでいる。料理レシピサイトを運営するクックパッドは6月、ローソンと連携し、生鮮食品を利用者が指定した宅配ボックスに届けるサービス「クックパッドマート」のローソン店舗での受け取りと宅配サービスを始めると発表した。

  今後は現在の東京、神奈川から千葉、埼玉を含めた1都3県に対象エリアを拡大し、商品の受取場所を2020年末までに6月末時点での約120カ所から数百カ所へ増加させることを目指す。広報担当者によると、クックパッドマートの5月の利用者数は1月の5倍に増えた。

  流通経済研究所主任研究員の池田満寿次氏は新型コロナ感染拡大以前は、実店舗網が整っている上、働く女性が増加する中で外出することが多いことなどから、ネットでの生鮮食品購買については「アゲンストの風が吹いていた」が、外出自粛の高まりでネットを通じた購入へのハードルが下がったとみる。

  国内の感染者数が再び増加傾向が続く中、コロナの警戒意識が続く以上はネットを利用した食品の購買は「底上げされていく」と指摘。多くのネットスーパーでは配送費用などがネックとなり事業赤字が続いていたが、「収益化できるようにオペレーションの改善を進めてきている」とし、各社の競争が激しくなる中では「利便性を高めていくことがこれからも求められる」と話した。

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