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米中、「中立地帯」で直接対決-両国が競う東南アジアの動画配信市場

  • 東南アジアでネットフリックスはここ半年勝負に出ているとの指摘
  • 中国は経済だけでなく政治・文化的主導権のモデルも供与可能と着想
relates to 米中、「中立地帯」で直接対決-両国が競う東南アジアの動画配信市場

PHOTOGRAPHER: THOMAS TRUTSCHEL/GETTY IMAGES

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ストリーミングが世界のメディア環境を変えつつある中で、米国と欧州、中南米、インドの動画配信市場では欧米企業間の競争が激しい。だが東南アジアにおいては、テンセント・ホールディングス(騰訊)と愛奇芸(iQIYI)がネットフリックスやウォルト・ディズニーと競合しようとしており、この市場で米中の企業が初めて真にぶつかることになる。

  百度(バイドゥ)傘下の愛奇芸は6月、ネットフリックスで東南アジアの各国政府との渉外を担当していた郭又銓氏を採用。その数週間後、テンセントはマレーシアのアイフリックス(iFlix)を買収した。愛奇芸とテンセントはこのところ、タイやインドネシア、フィリピンなどの市場でローカルコンテンツ制作・ライセンス契約や人員増強に向けた取り組みを強化している。

Top Streaming Platforms

Minutes streamed, Q1 2020

Data: Media Partners Asia

  「テンセントビデオ(騰訊視頻)」と愛奇芸にとって、東南アジア市場への投資拡大は中国国外での最も大きな事業進出だ。メディア企業の外資規制が厳しい中国では、ネットフリックスも「ディズニー+(プラス)」も事業を展開していない。米中間の綱引きが激しさを増す中で、世界に物語を伝える直接対決の場が東南アジアになるというわけだ。

  テンセントはこの記事に関してコメントを控えているが、同社の国際ストリーミングサービス「ウィーTV」を東南アジア全般に拡大する計画の一環としてアイフリックスを買収したと説明。愛奇芸は「さまざまな市場のユーザーにサービスを提供」するよう取り組んでいるとコメントした。

  東南アジアのストリーミング市場で盤石な地位を築いている企業はまだない。コンサルティング企業メディア・パートナーズ・アジアによると、世界市場でリードするネットフリックスは東南アジアのどの国でも加入者が100万人に届いていない。

  事情に詳しい関係者によれば、米国でネットフリックス最大のライバルであるディズニー+は年内に東南アジアでサービスを開始する計画。東南アジアは「中立地帯」で、「中国勢は好機を見いだしている」とメディア・パートナーズ・アジアを率いるビベク・コート氏は指摘する。

  シンガポールなど豊かな数カ国を除けば、東南アジアでは平均年収1万ドル(約106万円)未満が多数だ。東南アジアで人口が最も多いインドネシアでは数百もの異なる言語が話され、政府の検閲も特に厳しい。従来型の有料テレビ放送が極めて安く、どこでもユーチューブを楽しむことができることから、たとえ低料金でもストリーミングサービスにお金を払ってもらうことは難しい。コート氏が言うには、テンセントのアイフリックス買収は「本物の取引ではなく、不良化した資産の売却」だ。

  ネットフリックスは最近、モバイル端末でしか視聴できない安価なプランを提供したり、ローカルコンテンツの制作を強化したりすることで、顧客を増やし始めた。約80万人が加入するフィリピンでは市場をリードし、タイでは60万人近くを集め、「ラインTV」に次ぐ2位。「ネットフリックスは特にここ6カ月、勝負に出ている」とコート氏は語る。

エンターテインメントを利用

  すでに中国のテクノロジーが日常生活に根付いている多くの東南アジア諸国では、中国企業がスマートフォン市場を牛耳り、北京字節跳動科技(バイトダンス)運営の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」も人気だ。ただ欧米の豊富なコンテンツをそろえるネットフリックスとディズニーに中国勢が対抗するには、ローカル番組に力を入れ、韓国・中国のヒット作品を配信するライセンスを得るため多額の投資が必要になる公算が大きい。

  中国のメディア企業は元々、国外での事業拡大にさほど関心はなかったが、アナリストらによると、ここ数年、エンターテインメントを利用して世界に影響を及ぼすという着想に魅力を覚えつつあるのが中国政府だ。

  「中国のトップリーダーは経済発展だけでなく政治・文化的主導権のモデルも中国は供与できると感じている」と調査会社ギャブカル・ファゾム・チャイナは分析。「COVID19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミック(世界的大流行)中にこうした感覚が強まった」との見方を示している。

原題:Next Streaming Showdown Is a Race for Eyeballs in Southeast Asia(抜粋)

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
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