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豪州の対中意識に変化-モリソン首相は報復恐れず中国に対抗へ

  • 「志を同じくする」民主主義国家を束ね中国の膨張に対抗目指す
  • 豪政府は対中関係が恒久的に変わったことを分かっているとの指摘

中国の習近平国家主席は2014年11月、オーストラリア議会に招かれ行った演説で、「歴史問題に悩まされることもなく、根本的な利害衝突もない」豪中の関係はかつてないほど良好だとたたえた。そして中国と豪州は「良い時も悪い時も協力し合える隣人」になると誓った。

  5年後、悪い時が到来した。巨額の2国間貿易にもかかわらず、豪中間の溝は深まるばかりだ。4月に米国の同盟国である豪州が国際社会の中心となって新型コロナウイルスの発生源を巡る独立した調査を呼び掛けると、中国との関係は危機的状況になった。新型コロナの感染拡大が最初に始まったのは中国湖北省武漢だ。

  今や中国側は豪州の閣僚からの電話も拒否。キャンベラにある中国大使館と中国政府のプロパガンダ(宣伝工作)機関は、豪州が米国の傀儡(かいらい)であり、豪州にいる中国人学生・観光客への人種差別的攻撃を止める十分な措置を講じていないと主張している。

  オーストラリア国立大学のダレン・リム上級講師(国際関係・アジア)は中国の「継続的な威圧は自国の利益に反する豪州の将来的な行動や第三者の関与阻止を狙ったものだ」と指摘する。

  モリソン豪首相が試みるのは、同首相が「志を同じくする」民主主義国家と呼ぶ、例えば日本やインド、欧州諸国などを中国の膨張に対抗し得る多国間グループに束ねることだ。

  オーストラリア戦略政策研究所のシニアアナリストで豪政府の防衛顧問だったマルコム・デービス氏は豪州の国益と価値観が貿易への配慮の上に立つ時を迎えたとモリソン首相は認識しているとの分析を示した上で、「北京側が報復すると首相は分かっているが、それに屈することは選択肢ではない」と話した。対中関係の悪化に伴い日本は12年、韓国は17年に中国との通商面でも問題を抱えた。

Australia’s Top Partners

Data: UN Comtrade; Australia’s Department of Education, Skills and Employment; Australian Bureau of Statistics. Data is for 2019 except students (January to April 2020)

  豪国民の外交政策に対する見方を追うローウィー研究所の年次世論調査は先月、世界で中国が責任ある行動をすると信じていると答えた人の割合が23%と、2年前の52%から低下したことを示した。習主席の国際問題に対応する能力を信頼するとの回答は18年からほぼ半減し22%。

  デービス氏によれば、豪政府は対中関係が恒久的に変わったと知っている。「豪州の戦略政策コミュニティー内で豪中関係が改善されるとは誰も考えていないと思う」と述べる。

  「中国は台頭しつつあり、主張を押し通し、世界秩序をひっくり返すために覇権国になることを目指している。豪州は今、それを止めるため自国の役割を果たす必要があると自覚している」。

原題:Australia’s China Ties Fray Even as Two-Way Trade Booms (2)(抜粋)

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
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