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景気は底打ちも回復緩やか、資金繰り支援かなり続ける-日銀総裁

更新日時
  • 追加策は3つの柱で対応、コロナ長期化なら企業の支払い能力に懸念
  • イールドカーブの低位安定が重要、担保拡充は現時点で必要ない

日本銀行の黒田東彦総裁は15日、金融政策決定会合後に記者会見し、新型コロナウイルスの感染拡大で大きく落ち込んだ日本経済について「全体として底を打って回復しつつある」との認識を示した。新型コロナの影響が残る中で、回復は緩やかなものにとどまるとし、企業への資金繰り支援策などは「かなり続ける必要がある」と語った。

  総裁は新型コロナの影響で4、5月を中心に大きく落ち込んだ日本経済は、政府の緊急事態宣言の解除などで活動が徐々に再開されており、「足元で回復のいろいろな兆候が見られる」と語った。特に、モノの消費や生産を中心に「景気は底を打った」とし、設備投資も比較的しっかりしているとの認識を示した。

  もっとも、感染第2波への懸念などでサービス関連の消費は「感染の心配がなくならない限り、完全には戻らない」とし、世界的に見ると「新興国は引き続き感染が拡大しており、問題は大きい」と指摘。こうした内外情勢を踏まえれば、先行きの不透明感は依然として強く、その回復スピードは緩やかなものにならざるを得ない、との見解を示した。

  会合後に公表した新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、2020年度の実質経済成長率見通しがマイナス4.7%(政策委員見通しの中央値)となった。総裁は、レンジで数字を示した前回4月時点の見通しよりも「若干、下の方に行っている」と小幅の下方修正との理解を明らかにした。

BOJ Sits Tight While Taking Gloomier View of Economy This Year

日銀本店で記者会見する黒田東彦総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  政府・日銀によるこれまでのコロナ対応策は「効果を発揮している」と評価。コロナの影響の長期化や感染第2波などで再び経済活動が低迷した場合の政策対応については、資金繰り支援などのコロナ対応特別プログラムや、国債買い入れ、上場投資信託(ETF)買い入れなど3つの柱で対応するとし、長短金利の引き下げを含めて手段は「いろいろある」と表明。景気の回復テンポが緩やかになる中で、「資金繰り支援はかなり続ける必要があるだろう」との認識を示した。

  金融機関からはコロナ対応特別オペを積極的に利用するためにも、日銀に適格担保の拡充を求める声があるが、総裁は既にかなり拡充していると指摘。現時点で「さらなる拡充が必要とは考えていない」としたが、「具体的な適格担保の拡充の必要が出れば考えていく」と語った。  

ソルベンシー問題

  また、コロナの影響が長期化した場合は、企業の支払い能力(ソルベンシー)の問題や、金融機関の信用コストの増加に発展する可能性にも言及。動向を注視するとしながらも、現段階でそうした可能性は大きくないと指摘するとともに、企業のソルベンシー問題に対応することは「中央銀行の役割ではない」と語った。

  上昇基調にある超長期金利に動向に関しては、「過度な低下が経済活動に悪影響を及ぼす可能性があるとの認識に変わりない」と述べる一方、債券市場の流動性低下や国債増発などを踏まえれば「債券市場の安定を維持してイールドカーブ全体を低位に安定させるということが最も重要な状況にある」と語った。

  コマーシャルペーパー(CP)と社債の買い入れが市場機能を歪めているとの指摘に対しては「市場の大きさに比べると日銀の買い入れはかなりの規模になっている」としながらも、「足元で社債あるいはCPについて市場機能が低下しているということはないと思う」との認識を示した。

エコノミストの見方

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミスト

  • 以前は楽観的で強気の見通しばかりだったが、コロナが起きて物価のモメンタムが失われてから日銀は現実的な物価見通しを置ける自由を得たように感じる
  • コロナが原因でと言えるのでそうやりやすいのではないか。日銀の物価見通しが市場アナリストより低くなるとは以前なら考えられなかった興味深い変化だ
  • 中銀総裁としてリスク要因ばかり話してはいられないので、底を打ったとのコメントは驚きではない
  • ただ、展望レポート、総裁会見全体でかなり明確に感じられたことだが、不確実要因が相当数あり、その一つでも狂ってしまえば、見通しを変えければいけない。日銀は非常に微妙な位置にいる

日銀会合に関する記事はこちらをご覧ください

(黒田総裁発言とエコノミストコメントを追加して更新しました)
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