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日産新型EVはテスラ車に匹敵する高性能、ブランド再建の切り札

更新日時
  • アリアは最大400馬力、航続距離610キロも-500万円からで来年発売
  • EV期待でテスラ株の時価総額はトヨタと日産、ホンダの合計上回る

日産自動車は15日、新型電気自動車(EV)「アリア」を発表した。同社としては「リーフ」に次ぐ2台目のEVで売れ筋のスポーツ用多目的車(SUV)スタイルに自動運転やコネクティビティーなど最新の技術を盛り込んだ。米テスラの株価上昇で再び注目が集まるEV需要を取り込んでブランド力向上につなげ、業績不振からの脱却を目指す。

Nissan Motor CEO Makoto Uchida and New Electric Crossover Ariya

新型クロスオーバーEV「アリア」

Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

  日産の発表資料によると、アリアには二輪駆動と四輪駆動の2タイプを用意。容量が65キロワット時(kWh)と90kWhの電池を搭載し、最上位モデルは約400馬力で最大トルクは600ニュートンメートルと日産の市販車としては高級スポーツ車「GT-R」に次ぐ高いパワーを備える。

  フル充電からの航続距離は最大610キロメートルとリーフの最上位モデルとの比較で30%以上伸びる。2021年半ばにまず日本で発売する予定で、補助金などを考慮した実質的な購入費用は約500万円からを想定。21年度末までに米国や欧州、中国でも投入する予定で米国では4万ドル(約430万円)程度からになりそうという。

Nissan Motor CEO Makoto Uchida and New Electric Crossover Ariya

アリアの内装

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  テスラのウェブサイトによると、今年投入した同じSUVタイプの「モデルY」(日本未導入)の航続距離は500キロ前後で価格は4万9990ドルからとなっている。

  新型コロナウイルス感染拡大で自動車販売が世界的に低迷する中、EV専業のテスラの株価は大幅な上昇を続け、今月には株式時価総額でトヨタ自動車を抜いて世界トップに立った。足元の時価総額は約2800億ドル(約30兆円)とトヨタとホンダ、日産の合計も上回っている。

信頼を取り戻す

  カルロス・ゴーン元会長の逮捕以降、業績低迷が続く日産はテスラ車並みの性能を持つEV投入でブランドの立て直しにつなげたい考えだ。

  日産の内田誠社長兼最高経営責任者は15日の横浜市でのブルームバーグとのインタビューで、新型アリアには10年間のEV開発を通じて日産が培ってきた技術のすべてが詰め込まれていると強調。日産の事業構造改革は「実行のステージにある」とし、改革案を着実に実行に移すことが「社内や市場の信頼を取り戻す唯一の道だ」と述べた。

Nissan Motor CEO Makoto Uchida and New Electric Crossover Ariya

日産の内田CEO(15日、横浜市)

Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

  日産の株価は15日、新車への期待感もあって一時前日比8.5%高の423.6円と1カ月ぶりの日中上昇率となった。終値は418.6円だった。

  ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストは、10年前に初代リーフを投入したときはEVの先駆者としてリードしていたが今はテスラを初め競争相手が増えているとする一方、EV自体が一部の地域を除いてそれほど販売規模は見込めないと指摘。年間の世界販売台数は数万台程度ではないかとの予想を示し、「今まで新車がなかった日産にとっては良いニュースだが、ビジネスにこれが大きな貢献をするかというとそうではない」とした。

SBI証券の遠藤功治企業調査部長は市場投入を1年も先に控えた時期での発表について、先端技術を搭載した立派な新型EVが将来出る、と世間に期待を持たせる「イメージアップの戦略」があるのではないかとし、アリアは大きな販売台数は望めないものの「GT-Rのようなイメージリーダーになれば成功」だと述べた。

  アリアは新設計のEV専用プラットフォームを基盤に開発。ダッシュボードには物理的なスイッチがなく、車の電源を入れると表示されるアイコンで操作する。自動車メーカーの顔であるエンブレムのデザインも変更するなど新しさを強調したデザインにしている。

  また同社の運転支援技術「プロパイロット」の最新版を搭載し、一定の条件の下で同一車線内での手放し運転や高速道路の出口まで追い越しや分岐も含めた自動走行ができる。テスラ車で導入されている無線でソフトウエアを更新する機能も装備し、常に車を最新の状態に保てるようにした。

市場開拓の「先鋒」に

  日産は10年に初代リーフを市場投入。量産型のEVとしては三菱自動車の「i-MiEV」などと並んで最も早かった。その後、地球温暖化への懸念の高まりから各国が自動車の環境規制を強化する動きが高まり、走行中に排ガスを出さないEVへの注目が集まっていた。

  しかし日産は18年のゴーン元会長の逮捕以降、業績低迷が続いて前期(20年3月期)の純損益が6712億円の赤字に転落。5月には生産能力の削減などを通じてコストカットに取り組む一方、今後18カ月に12の新車を投入し、電動化や自動運転関連などの先端技術の搭載を急ぐことで立て直しを進める考えを示していた

  日産のイヴァン・エスピノーサ専務はアリアについて、日産が今後ラインアップを刷新し、市場を切り開いていく「先鋒 (せんぽう)」の役目を果たすことになると表現。日産が考える自動車技術の将来像を示していると述べた。

  エスピノーサ専務はまた、新型アリアの駆動用バッテリーに中国の寧徳時代新能源科技(CATL)製の電池を採用したことを明らかにした。日産はリーフには自社で保有していた電池メーカーのバッテリーを使っていたが、18年に中国企業に売却していた。

  

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