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PB黒字化目標消えても日本格付け変更の可能性低い-格付け3社示唆

  • 増税などの取り組み、信頼に足る財政戦略、早期の景気回復を重視
  • 骨太方針の原案から25年度PB黒字化目標の文言なくなる

新型コロナウイルス感染拡大の影響で日本の2025年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化目標の達成が一段と厳しくなる中、外資系格付け機関3社は、25年度の達成目標が取り下げられても日本国債の格付け変更につながる可能性は低いことを示唆した。

  各社は期限を定めた財政健全化目標よりも、消費増税のような財政安定化への取り組みや信頼に足る財政再建戦略、早期の景気回復を重視する考えを示している。

  ムーディーズ・インベスターズ・サービスで日本国債を担当するクリスチャン・ド・グズマン氏は、「コロナショックが起きる前でさえ、25年度までのPB黒字化目標の達成は一層厳しくなっていたように思われた」と指摘。その上で、格付け判断でより重要なのは「昨年の消費税率引き上げが示すように、目標に向けたコミットメントと進捗(しんちょく)具合だ」と述べた。

  フィッチ・レーティングスのアジア太平洋ソブリン格付け責任者、スティーブン・シュワルツ氏は、格付けを維持する上でPB黒字化目標を堅持することは「必ずしも必要ない」との考えを示している。同社が格付けを付与する国で、債務残高の対国内総生産(GDP)比率が今年最も高い約260%が見込まれる日本においては、同比率が中期的に持続的に低下するような「信頼できる財政再建戦略」の重要性を強調した。

  新型コロナ対策の20年度第2次補正予算を受けて日本の財政安定化が後退するとして、6月に日本国債の格付け見通しを「ポジティブ」から「安定的」に引き下げたS&Pグローバル・レーティングのキムエン・タンシニア・ディレクターは、日本政府の格付けにとって「財政の改善はプラスになる」と述べる一方、格付けを支える主な要素は「パンデミック(世界的大流行)以前に近い経済成長レベルに戻ることだ」と指摘した。同社は日本の実質GDP成長率が20年度にマイナス2.9%に低下した後、21年度はプラス約4.3%に回復するとみている。

行政デジタル化の遅れ1年で集中改革、新型コロナで顕在化-骨太原案

歳出と税収の差、過去最大の100兆円

今年度税収計画63.5兆円も下振れ濃厚

出所:財務省(19年度と20年度の税収は見込み)

  政府が8日公表した「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太方針)の原案からは、過去2年盛り込まれていた25年度のPB黒字化目標が消えた。麻生太郎財務相は、目標が明記されていた18-19年度の骨太方針に基づいて経済・財政の一体改革を推進するとして、今回も目標は維持されていると説明。新型コロナ感染拡大で先行き不透明な中、「直ちに見直す必要があるとは考えていない」と従来の主張を繰り返した。

  野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは9日付リポートで、政府の「そうした説明を額面通り受け止める向きは少ない」とし、「従来の財政健全化方針はコロナ問題によって打ち砕かれ、短期間での修復は不可能となってしまった」と指摘。骨太方針がコロナで顕在化した弱点の克服というメッセージを持つのであれば、「コロナ対策の財源の議論、新たな財政健全化の方針もしっかりと示してほしかった」との考えを示した。

国債格付けS&Pムーディーズフィッチ
自国通貨建てA+A1
投資適格5番目5番目6番目
最終変更日15年9月14年12月15年4月

  S&Pが日本国債の格付け見通しを引き下げた6月、日本銀行の黒田東彦総裁は、「私自身は格付け会社の日本国債に対する格付けが客観的に正しいと全然思っていない」との見解を示た。黒田総裁が財務官だった当時の02年、ボツワナ並みの水準への格下げを巡って格付け3社に意見書を送り、論争を繰り広げた経緯がある。

「マネーアングル」ボツワナショック、シングルA目前最後の一手 

  ムーディーズのグズマン氏は、日本は債務水準が高いものの、「多額の民間貯蓄と国内投資家の『ホームバイアス』という、強力かつ安定した資金調達環境」によって格付けのバランスが保たれていると説明。新型コロナの影響で「民間貯蓄が永続的に損なわれたり、経常収支が構造的な赤字に転じたりするとは現時点で予測していない」と述べた。

  みずほ証券の大橋英敏チーフクレジットストラテジストは、過去の論争を踏まえ、格付け機関は「政府債務を増やしても名目GDPの上昇期待があれば容認するようになった」と指摘。またコロナの影響で債務が膨れ上がる中、「格付けアクションを遅らせており、格下げの動きはアフターコロナになる」とみる。その時点での格下げを防ぐためには、コロナ後に合わせた産業構造の転換や新陳代謝を図り、名目GDPを3-5年先に19年度のレベルに戻す必要があると語った。

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