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ゴールドマン松井氏、「女性は使いにくい」から脱却を-育成法を指南

  • 早い段階でタフなポストに、結婚・出産離職を回避へ
  • 課長級以上の女性割合、2018年度で11.8%-政府目標と大きな開き

ゴールドマン・サックス証券のキャシー・松井副会長は、管理職となる女性を育成するため、同社で実践している積極的な支援制度を取り入れるよう日本企業に促している。世界中で人材の争奪戦が繰り広げられる中、優秀な女性社員を獲得し、つなぎとめることは企業の業績に直結するという。

  1999年に女性活躍による経済活性化を指摘した「ウーマノミクス」を提唱した松井氏はブルームバーグのインタビューで、日本企業には「優秀な女性社員が豊富にいるが、いつの間にか消えてしまう」と指摘。女性を含めた多様な人材のポテンシャルを最大化しないと、「日本社会は成長しづらくなる」と語った。  

  9日に刊行された松井氏の著書「女性社員の育て方、教えます」では、経験ある社員が若手の相談者となるメンター制度に加え、2007年からゴールドマンのアジアの各拠点で、上司が優秀な女性社員を熱心に支援し、昇進に積極的に関与する「スポンサー制度」を導入していることを紹介。

Goldman Sachs' Kathy Matsui Says Japan Is Still Holding Back Talented Women

キャシー松井氏

Photographer: Junko Kimura-Matsumoto/Bloomberg

  成長の可能性がある女性社員には結婚・出産などのライフイベントを迎えた時に仕事を諦めず、職場に戻りたいと思わせるだけのモチベーションを生むことが重要だとして、できるだけ早い段階からタフなポスト、やりがいのあるチャレンジの機会を与え自信を持たせるほうが得策と訴える。松井氏は、「どうも女性の部下は使いにくくて」と漏らす男性上司に、こうした女性活用のコツを知ってほしいと同書で呼び掛ける。 

  安倍晋三政権は、「ウーマノミクス」をアベノミクスの成長戦略の柱と位置付け、2020年までに、社会のあらゆる分野で指導的地位に占める女性の割合を30%程度にするとの目標を掲げている。

  しかし、昨年7月公表の2018年度の雇用均等基本調査(確報)によると、全国の企業・事業所での課長級以上の管理職に占める女性の割合は、11.8%で前年比で0.3ポイント上昇したものの、政府目標とは依然として大きな開きがある。

ゴールドマン松井氏、日本女性の活躍道半ば-改革停滞なら人口の危機

  先月26日には、政府が目標の達成年限について、「2020年」から「30年までの可能な限り早期」に繰り延べする調整に入ったと毎日新聞が報じた。現状では30%にほど遠く、20年の達成は現実的に不可能と判断し、年内にも策定する今後5年間の取り組みを示す第5次男女共同参画基本計画に盛り込むという。

  新型コロナウイルスの感染拡大で経済が悪化する中、女性の雇用環境は厳しさを増している。4月の労働力調査では、女性就業者数が前年比で53万人減り、約8年ぶりに減少に転じた。非正規労働者が97万人減少しており、パートやアルバイトなど非正規の割合が高い女性就業者数に影響したとみられる。

昇進したがらない女性社員 

  企業が昇進を打診しても、女性社員自身が断るケースも少なくない。松井氏は、これは日本人女性だけでなく、欧米を含め世界中で見られる傾向だと指摘。女性は、「リスクを取るよりも確実な道を慎重に進む傾向がある」と分析する。

  前女性活躍担当相の片山さつき参院議員も、女性社員に役員登用を断られた企業から、「一度食事をして、説得をしてくれないか」などと相談を受けることがあると明かす。日本の女性は、仕事漬けの生活を送っている男性社員のような働き方をしたいとは思わず、「管理職にはならず専門職でいたいという優秀な人が多い」との認識を示した。

  松井氏は社内にメンターやスポンサー制度がない場合でも、昇進を打診されたら周囲に意見を聞いて前向きにチャレンジして欲しいと話す。自身は、一人では解決できない問題に直面した時、「パーソナルな取締役会」と称して信頼できる人たちからアドバイスを仰ぎ、判断してきたという。

  女性社員の扱いについては「日本だけでなく、どの国でも無意識のバイアスが存在している」と松井氏は言う。旧来の女性的な役割や男女差などのステレオタイプ的な考え方を改めるため、ゴールドマンでも長い時間をかけて取り組んできた。こうしたプロセスは、どの組織にとってもフルマラソンを走るような根気が必要な作業だとも語った。

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