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時価総額1000億円超AIインサイド、コロナ下の効率化追い風 (訂正)

訂正済み
  • 今期の営業利益は33%増見込む、特別定額給付金の関連業務にも一役
  • 株価はクラウド特需のイメージ先行で形成との声も-アイザワ証券

人工知能(AI)を駆使して手書きデータをデジタル化するクラウドサービスなどを手掛けるAIインサイドの時価総額は、株価の急伸により上場から半年で1000億円を超えた。市場の注目度が高まっている背景には、新型コロナウイルス感染拡大で国内企業にとってテレワークの推進や業務効率化が急務となったことがある。

  AIインサイドの主要サービスは、申込書や受発注帳票などの手書きの定型書類を読み取ってデータ化する光学式文字読み取り装置(OCR)「DX Suite」。独自のAI技術を導入し、日本語やアルファベットの手書き文字を高精度に読み取る。同社のウェブサイトによると、このサービスはAI-OCR市場で6割を超えるシェアを占める。

AI inside handouts

渡久地択社長CEO

Source: AI inside Inc.

  「DX Suite」はソフトバンクや、パーソルホールディングス傘下のパーソルテンプスタッフ、アフラック生命保険、JALカードなどデータ入力に多くのリソースが割かれてきた業界で導入が進んでいる。製品の販売はNTTデータや大日本印刷など全国に販売網を持つ大手パートナー企業79社が受け持つ。NTTデータによると、手書き文字の約98%をデジタルデータ化することができるという。

  同社の株価の9日終値は3万1650円と、2019年12月25日に東証マザーズ市場に上場した際の公開価格3600円から779%上昇。時価総額も同日終値ベースで約1174億円と、同市場ではSansanやマネーフォワードに次ぐ規模まで急成長した。

AIインサイドの時価総額推移

  15年創業で、前期には5期目にして初めて黒字化を達成。21年3月期の営業利益は33%増を見込んでいる。5月の業績計画発表時点で前期と今期の「DX Suite」の契約目標は計3546件だったが、6月1日時点で既に3000件に到達。中小企業向けの低価格版も好調だ。

  渡久地択社長CEO(最高経営責任者)は電話インタビューで新型コロナの影響について、テレワークの推進で企業が出社人数を絞る動きが加速し、同社のサービスを使った業務の効率化に追い風となったと説明。契約件数が伸びたのは「うれしい誤算だった」と話す。 

地方公共団体も導入

  新型コロナ感染拡大を受けた特別定額給付金の申請受付業務にも一役買っている。給付金の支給期間である5月から7月までの3カ月間は、地方公共団体向けサービスで協業するNTTデータが費用を持つ形で無償提供している。

  渡久地社長は、稼働が止まってしまった場合の社会的インパクトも認識し、「安定稼働が最重要課題。継続的に活用してもらえる基盤をより強固にしていきたい」と語る。

  同社のサービスの地方公共団体による導入事例は、4月時点で東京都や奄美大島など40以上に上る。ボックス型の装置を契約先に設置してLANで接続でき、組織内ネットワーク(庁内LAN)を利用。ネットワーク内のデータセンターにデータを保存しておくことができるため、安全性が高い。 

  このほか、画像・動画認識に加え同社が強みとする機械学習などのAI学習基盤を生かし、顧客が現場のニーズに合致したAIを作ることができるサービスの提供も一部のユーザー向けに開始している。

  この基盤を利用すると、顧客に専門知識がなくても、AI開発者を雇うことなく、画面上の簡単な操作で独自のAIを生成・利用することができるという。AIを活用する企業を増やすだけでなく、実際に作って操作することのできる企業を増やすことでさらに顧客層を拡大することが狙いだ。 

中長期的成長に期待

  岩井コスモ証券の川崎朝映アナリストは6月11日付リポートでAIインサイドについて、「業務のデジタル化が求められるテレワークの増加で中長期的な成長も期待できることに加え、自社AI技術をさまざまな業界に広げるプラットフォーム戦略を進めることで有力なAI企業になる可能性がある」と指摘。目標株価は4万円としている。   

  一方、株価の急騰に懸念を示す声もある。アイザワ証券の市場情報部の坂瀬勝義国内情報課長は「増収率で見ると高いが、時価総額が1000億円規模であっても売上高が約16億円と小さい」と指摘。「巣ごもり消費の特需の中でクラウドがテーマであることからイメージ先行で買われている印象」で、株価が調整を経てさらに上抜けるためには絶対的な収益が必要だが、計画の実現性を判断するのは難しい段階にあるとみている。

  上場から半年余りで株式の売買が少ないことに加え、渡久地社長の保有率が50%を超えており、「株の在庫が少ない中で期待を持っている投資家が買っているから上昇してきたが、売り物が出ても買う人がいなくなり急な調整となる可能性もある」との見方を示した。

(9段落の導入事例数を訂正します)
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