5月実質消費支出16.2%減、01年以降で最大の落ち込み-コロナ影響
関根裕之
更新日時
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8カ月連続のマイナス、1世帯当たりの消費支出は25万2017円
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先行きの消費の回復の鈍さはしぶとそうだ-SMBC日興の宮前氏
総務省が7日発表した家計調査によると、5月の消費支出(2人以上の世帯)は物価変動を除いた実質ベースで前年同月比16.2%減と、減少幅は前月(11.1%減)を上回り、比較可能な2001年1月以降で最大の落ち込みとなった。
減少は8カ月連続で、これは16年3月から15カ月連続の減少以来の長さ。新型コロナウイルス感染拡大による社会経済活動への影響が続く中、教養娯楽や被服および履物などの落ち込みが目立った。総務省は発表資料で、「休校や在宅勤務の広がりによる巣ごもり需要や、外出自粛による影響などがうかがえる」と説明している。
キーポイント |
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エコノミストの見方
ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長:
- 4月と同様に5月もコロナの影響がはっきりと出た
- 少なくとも5月が一つの消費の底となり、6月以降は非常に低い水準からだが持ち直していくだろう。ただコロナ前の水準に消費が戻るのはかなり時間がかかると思う。年内は無理だろうし、見通すことができない
- 緊急事態宣言が終わっても外食は元のようには戻らないだろうし、雇用と所得環境が悪化したので消費を控える動きは続くと思う
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト:
- 実質季節調整値ベースで保健医療、交通・通信、教養娯楽の減少が続いている。5月は緊急事態宣言の段階的解除の影響もあり、サービス関連も持ち直すかと思ったが、かき入れ時の大型連休の弱さが響いたのではないか
- 5月は輸出、生産に加え消費もダメだったことが明らかになった。先行きの消費の回復の鈍さはしぶとそうだ
- 6月はさすがに持ち直すだろうが、そのペースは遅いだろう。主因は外出自粛やテレワーク継続で、賃金減少も一因
バークレイズ証券の前田和馬エコノミスト:
- 経済活動は徐々に再開されており、今後は持ち直していく可能性が高いとみている。ただペントアップ需要などの押し上げは数カ月で減退し、その後の消費はコロナ第2波への懸念もあり、かなり低調に推移するだろう
- 今日の指標が日本銀行の今月の金融政策決定会合に影響するとはみていない。景気の悪化度合いは想定内で、日銀としては現状するべき政策は打ち出し、それらの影響を見極める段階
詳細(総務省の説明)
- 消費支出、指数値としても過去最低の数値。コロナの影響もあったが、昨年の4月27日から始まった10連休というカレンダー的影響もある
- 今年は支払いの先送り、月決めの支払いがマイナスになっているものが多かった。その関係でマイナス幅が大きくなっている
- 直接比較はできないが、全国値を出し始めた1964年以降の消費支出全体の数字を見ても、実質減少率として16.2%減を超える減少はなかった
背景
- 5月の完全失業率は2.9%と3カ月連続で悪化し、水準としては17年5月(3.1%)以来の高さとなった。休業者は423万人と引き続き高水準で推移
- 5月の小売業販売額は前年同月比12.3%減と3カ月連続のマイナス。ただ、下げ幅は前月から縮小し、基調判断は「急速に低下している」から「下げ止まりがみられる」に変更された
- 緊急事態宣言は5月25日に約7週間ぶりに全面解除され、社会経済活動は再開に向け動き出した
(詳細とエコノミストコメントを追加して更新しました)
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