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分断の米国、ウイルス感染拡大の温床-マスク着用さえ政治問題化

  • 長年にわたり醸成された米国の病弊、新型コロナであからさまに
  • ソーシャルメディアが偽情報の「スーパースプレッダー」にも
Patients wait in line at a walk up COVID-19 testing site at A+ Academy Secondary School on June 27, 2020 in Dallas, Texas. 

Patients wait in line at a walk up COVID-19 testing site at A+ Academy Secondary School on June 27, 2020 in Dallas, Texas. 

Photographer: Montinique Monroe/Getty Images
Patients wait in line at a walk up COVID-19 testing site at A+ Academy Secondary School on June 27, 2020 in Dallas, Texas. 
Photographer: Montinique Monroe/Getty Images

新型コロナウイルスが猛威を振るう中にあって、科学技術で世界をリードする国が市民に感染予防のマスク着用の必要性を説得できないのであれば、それは深刻な問題だ。

  7月4日の独立記念日を前に、米国が直面する現実はまさにそうしたものだ。1日当たりの感染者数が過去最多を更新する中で、公衆衛生の専門家は十分な数の米国民がリスクを把握していないか、さらに悪いことには、大統領・議会選の年にあって、政治的な視点から危機を捉える風潮があるのではないかと懸念している。

  感染症専門医でデューク大学医学部准教授のキャメロン・ウルフ氏は「マスクが政治的な文脈で語られる現状は、悲惨なものとしか言いようがない。自然に収束することはないという事実に目覚めるべきだ」と語った。

  生理学・医学などを中心に他のどの国よりも多くのノーベル賞受賞者を輩出し、ポリオワクチン開発でも他国をリードして、人類史上初の月面着陸を成し遂げた米国が今では、新型コロナ感染者数と死者数の「超大国」に成り果てた。

  米国における感染拡大への対応の不備は、トランプ政権に対する激しい批判を引き起こした。しかし、感染拡大があからさまにしたのは、科学の政治問題化やソーシャルメディアという「スーパースプレッダー」を通じた新型コロナに関する偽情報の拡散、さまざまな格差といった、長年にわたって醸成されてきた一段と根深い米国の病弊であり、それは米国の脆弱(ぜいじゃく)さを際立たせている。

  科学と公共政策が論争の的である場合、党派色が色濃く出てくる。ピュー・リサーチ・センターの世論調査によれば、科学に関する政策策定には科学者の知見を反映させるべきだとする回答は、民主党支持者や同党寄りの無党派層で約73%だったのに対し、共和党支持者や同党寄りの無党派層では43%にとどまった。

  一方、感染拡大を巡ってこのように対照的な見解を増幅させるメディアの情報発信の台頭がある。ハーバード大学行政大学院(ケネディスクール)ショーレンスタイン・センターが公表した3月の全米調査結果では、保守系メディアの視聴者は公衆衛生専門家について、トランプ大統領を攻撃するため感染の深刻さを誇張していると信じ、有望な治療法などに疑問を投げ掛ける傾向が一段と強いことが示された。

  このほか、人種間や所得水準における新型コロナの影響の格差にも深い分断が反映されている。APMリサーチ・ラブがまとめた最新データを見ると、米国の黒人の新型コロナ感染による死亡率は白人やアジア系の約2.3倍に上る。

  米国民がピクニックやバーベキュー、浜辺のパーティーに集まるこの時期、新型コロナに関する個々の意見にかかわらず、感染拡大の破壊力は背後に潜んでいるだろう。そして、データが強く警告を発しているように、現状のように分断された米国こそが感染のチャンスを狙っているウイルスにとって理想的な環境と言える。

原題:A Virus Preys on Divided America as Daily Cases Set Record (1)(抜粋)

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