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急成長のカーシェアが新型コロナで失速、接触忌避か-CASEの一角

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  • タイムズカーシェアが大幅減に、ウーバーの配車利用は世界で7割減
  • トヨタ、ホンダ社長は共有から個人用の移動手段への需要移行を予想

新型コロナウイルスの影響で、自動車業界で「CASE」と総称される新技術の一角として成長が期待された車のシェアリングサービスの利用が急減している。感染への恐れから消費者が他人と物を共有することを避ける傾向が定着すれば、業界全体として戦略の転換を迫られる可能性もある。

Park24 Chief Executive Officer Koichi Nashikawa Interview

時間貸し駐車場で待機するタイムズカーシェアの車両(2015年9月、都内)

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  国内最大手の「タイムズカーシェア」を展開するパーク24は15日、2020年10月期第2四半期(2-4月)の決算を発表。1997年の株式店頭登録から続いていた増収が途絶え、四半期ベースで初の営業赤字に転落した。

  パーク24は全国展開する時間貸し駐車場のスペースを有効活用してカーシェア事業に取り組んできた。スマホで予約して15分220円から車が借りられ、ガソリンや保険代も必要がない利便性から急速に普及。利用できる駐車場の数は1万3000を超え、法人を含めた会員数は130万人と過去5年間で約2.5倍に増えていた。

  だが、2-4月のカーシェア事業の売上高は前年同期比6.5%減の77億8500万円、営業利益は同53%減の7億3500万円に。西川光一社長は決算会見で、緊急事態宣言が全都道府県に適用されて外出自粛の動きが広がった5月のレンタカーを含むモビリティ事業の売上高は45%減となったと明かし、「移動ということに制限がかかっている中では非常に厳しい状況が続く」と話した。

  決算発表を受けて翌16日の株価は一時前日比15%と大幅に下落、終値でも8.1%安と3月26日以来の安値となった。西川社長は同社の国内事業が四半期ベースで黒字回復できるのは早くても2021年10月期の第2四半期(21年2-4月期)、回復が遅れれば第3、4四半期になる可能性もあるとし、正常化するまでコスト削減を続けて「耐え忍ぶ」しかないと話す。

GMは事業終了

  シェアリングは、電動化や自動運転、インターネットとの接続でさまざまなサービスを展開するコネクティビティーと合わせて「CASE」と呼ばれ、自動車メーカーや周辺の業界が対応を進めてきた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大を受けて日本だけでなく海外でも打撃を受け、急成長にブレーキがかかっている。

  ライドシェアを手掛ける米ウーバー・テクノロジーズの配車サービス事業はコロナの影響もあり世界全体で前年比70%の落ち込みになっていると、とダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)が3日に明らかにした。

  自動車のシェアリングサービスの代表格である同社は5月以降、全従業員の約25%に相当する計6700人の人員削減を明らかにしている。また、4月には米ゼネラル・モーターズ(GM)がカーシェア事業の終了を発表した。 

  カーシェア失速の背景には、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)を経て、不特定多数の人が触れる車などを共用する方式に衛生面から抵抗を示す消費者が増えていることもある。

  自動車調査会社、カノラマの宮尾健アナリストは、不特定多数の人が一つのハードウエアを使いまわすカーシェアやライドシェアは「引き継ぐときに消毒が難しい。ユーザー心理としては、前に使ったのがどんな人か分からない中ではちょっと怖いと思うのではないか」と指摘。

  各社は人を介さずに利用できることを売りにシステム投資をしてサービスの効率化に努めてきたが「裏目に出てしまった」とし、ワクチンや治療薬などが確立しない限り、「カーシェアのビジネスモデル自体厳しいのではないか」との見方を示した。

安全・安心な空間

  自動車メーカーの決算会見でもシェアリングやCASEを巡る状況の変化を指摘する声が経営トップから相次いだ。

  スズキの鈴木俊宏社長は、コロナの影響で海外も含めてシェアリングビジネスを巡る事業環境は厳しさを増しており、「今までの発想ではシェアリングは受け入れられなくなると思う」と指摘。

  衛生面の問題も含めて「考え直すというか入れ直すというようなことをやっていかなくてはいけない」との見方を示し、実車に触れることなく車の魅力が伝えられるような販売システムなどを構築していく必要があると述べた。

  トヨタの豊田章男社長とホンダの八郷隆弘社長はともに新型コロナの感染拡大で浸透した密集や接触を避ける傾向は今後も続き、安心して利用できるパーソナルな移動手段へのニーズが高まるのではないかとの見方を示した。

  世界最大規模の自動車部品メーカーで多くの完成車メーカーと取引があるデンソーの有馬浩二社長もコロナ後に消費者の中で安全・安心な空間が保証された車でなければ乗りたくないとの考えが強まる可能性があるとの見方を示し、CASEに「求められる中身が少し変わってくるのではないかと考えている」と話した。

  ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストは、コロナ後の世界では「誰が乗ったかわからないものを利用するのは難しい」とし、カーシェアはライドシェアも含めて厳しいとみる。その一方で、公共交通機関の利用を避けたいという人もおり、車の個人リースがより拡大するのではないかと指摘した。

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