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香港に迫る「防火長城」-中国のネット検閲と監視が常態となるのか

  • 本土に似たファイアウオールなら外国報道機関へのアクセス制限も
  • 世界で最も監視の厳しい上位10都市中8都市が中国-コンパリテック

香港は今、デジタル規制の強化に身構えている。昨年拡大した抗議活動に対する警察の取り締まりはすでに厳しくなっているが、700万人が住む香港で言論の自由や通信、集会が一段と制限され、中国のような監視社会となる可能性がある。

  香港ではここ数年、法執行当局が街頭やショッピングモールに数万の閉回路テレビ(CCTV)カメラを設置し、抗議参加者の携帯電話を調べるため広範に令状を取り、人混みの中でも活動家を特定することが可能な顔認証ソフトウエアを活用している。

One Year Anniversary of Hong Kong Protest Movement

警官に止められ調べを受けるデモ参加者(6月9日)

Photographer: Roy Liu/Bloomberg

  住民や活動家が抱いているのは、香港統制を強化し続ける中国が制定する方針の「国家安全法」で市民の自由がさらに浸食されるとの懸念だ。

  同法の詳細はまだ明らかになっていないが、香港保安局の李家超局長はサウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)紙に対し、同法が施行されれば、新たに設置される機関に中国政府の治安関連省庁が関与する見込みだと説明。「必要な場合」には本土機関が香港で業務を行うと述べ、香港の憲法に相当する基本法が定める本土による干渉への制約に関する変更を示唆した。

  抗議参加者やプライバシー擁護派が恐れるのは金融の中心地としての自由を謳歌(おうか)してきた香港に本土の「常態」が持ち込まれようとしていることだ。

  本土では「防火長城(グレートファイアウオール)」と呼ばれる大規模なインターネット情報検閲システムが、ツイッターやフェイスブック、ワッツアップといった香港で使われている多くの会員制交流サイト(SNS)やウェブサイトを遮断。「微信(ウィーチャット)」や「百度(バイドゥ)」など政府公認のアプリは定期的に監視され、オンラインでのやり取りで用いることを政府が禁止したキーワードや、禁止に相当する可能性のある画像が自動的に検出される。

  本土に似たファイアウオールとなれば、香港でも大半の外国報道機関へのアクセスが制限され、ニュースのウェブサイトは政府の承認と検閲の対象となり得る。

Hong Kong Demonstrators Swarm to Airport, Disrupting Transport

香港空港の外にある監視カメラをハンマーで破壊するデモ参加者(2019年)

Photographer: Paul Yeung/Bloomberg

  

  防火長城に関する著書もあるジャーナリストのジェームズ・グリフィス氏は、香港で中国側が部分的なデジタル管制を敷くことは可能だと指摘。「香港は結局、とても小さい。都合よくインターネット企業に停止通告書を出し、特定のウェブサイトを遮断するよう求めることは可能だろう」と話す。

  コンパリテックの調査によれば、1000人当たりのCCTVカメラ数で測ると、世界で最も監視の厳しい上位10都市のうち8都市が中国。ウイグル族100万人余りが一時的に収容所に入れられたとされる新疆ウイグル自治区のような地域では、警察は令状なしに人々を呼び止め、携帯電話を調べることできる。

  香港政制・内地事務局の陳帥夫副局長は昨年11月の立法会(議会)議員への書簡で顔認証テクノロジーについて、「合法的に実行可能であれば決められた手順」を通じて調査の一環として法執行当局によって使われる可能性はあるが、「行き過ぎたものにはならない」との認識を示した。

Smart Lampposts In Hong Kong

啓徳地区の「スマート街灯」に取り付けられたパノラマカメラ

フォトグラファー:ポール・ヨン/ブルームバーグ

  2014年の民主化デモ「雨傘運動」を率いた黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏のような活動家は、国家安全法は警察のやり過ぎを悪化させるだけだと懸念する。黄氏は「無認可の集会を組織」したなどの理由で昨年夏に逮捕された。法執行当局は黄氏らの携帯電話を差し押さえ、パスコードを破ることのできるソフトウエアを使って調べた。捜査の詳細を記した警察の声明と、令状は違法だとする黄氏の高等法院への申し立てによると、警察はテレグラムとワッツアップの数百通のメッセージにアクセスし押収した。

  黄氏は国家安全法が施行されば、抗議活動に参加した場合、香港ではなく本土で共産党が認めた判事によって裁かれる可能性があると恐れる。「私を標的とするかもしれない。香港ではなく中国で訴追される可能性がある。北京の強硬な取り締まりの下では決してないとは言い切れない」とインタビューで述べた。

News Conference With Demosisto Co-Founder Joshua Wong As Trump Signs Bill Backing Hong Kong Protesters

黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏

フォトグラファー:Justin Chin / Bloomberg

  アムネスティ・インターナショナルは17日の公開書簡で、香港国家安全法の「具体的な詳細はまだほとんど明らかになっていないが、これまでに知り得た全てのことが香港の人々の基本的権利と自由を脅かすことを示唆している」と指摘した。書簡には80を超える人権団体が署名している。

原題:China’s Great Firewall Looms Over Hong Kong As Surveillance Grows (1)

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