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中印の国境巡る衝突、なぜ再び起きているのか-QuickTake

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  • 1962年の中印国境紛争など両国には長い衝突の歴史がある
  • 今回の衝突の経緯や今後の見通しなどを5つの点で整理
An Indian Border Security Force soldier walks near a check post along the Srinagar-Leh National highway on June 16, 2020. 

An Indian Border Security Force soldier walks near a check post along the Srinagar-Leh National highway on June 16, 2020. 

Photographer: Anadolu Agency/Anadolu

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中国とインドの係争地で両国軍による衝突が起きている。ともに核保有国である両国は1962年に武力紛争を起こすなど、国境を巡る長い衝突の歴史がある。今回の衝突は、中国が主権をめぐる主張を強める一方、インドが新型コロナウイルス感染の深刻化と経済難に苦しむ中で起きた。

1. 衝突の背景は

  5月5日、中国はチベット西部とパキスタン占領下のカシミールに挟まれた要衝ラダックの2カ所を含む3カ所に軍部隊を展開してインドを驚かせた。この動きの理由は不明のままだが、同地域を連邦政府の直接の管理下に置くという2019年のインドの決定は中国の反発を招いていた。中国側は当時、インドが「中国の領土主権を弱体化させ続けている」のは受け入れられないとしていた。直近の衝突はガルワン渓谷地域とパンゴン湖近くを中心に起きている。

Contested Territory

Border clashes between India and China are adding to regional tensions

Sources: NASA, OpenStreetMap contributors and Natural Earth

2. 事態はどれほど悪化しているか

  数週間にわたる小競り合いで数十人の兵士が負傷した後、6月中旬にガルワン地域での激しい衝突でインド軍兵士20人が死亡したことで事態は危険な局面に突入した。中国軍の報道官は詳細を明らかにしなかったが、双方に死傷者が出たとしている。死者が出たのは約40年ぶりとなる。

3. 対立の歴史はどれほど長いか

  国境を巡る両国の対立は1950年代にさかのぼる。59年にはインドがダライ・ラマ14世の亡命を認めた後に小競り合いが報告されている。その3年後に中印国境紛争が起きた。曖昧な境界線を形成する現在の「実効支配線」は、部分的には英国が引いた境界線が基になっている。衝突は67年と87年にも起きたが武力行使には至らず、両国軍は拡声器を使って非難合戦を繰り広げた。93年から2013年にかけては両国政府が5つの条約に調印するなど関係は改善。両国の経済成長が加速する中で中国はインドにとって最大の貿易相手国となった。国境付近も平穏が保たれていたが、17年には中国とブータンがともに領有権を主張するインド国境近くのドクラム高原で数カ月間のにらみ合いがあった。

4. 今回と過去の衝突の違いは

  背景が異なる。インドは新型コロナの感染拡大に苦しんでいる。6月上旬までに感染者数は約20万人に上り、経済にも深刻な影響が出ている。またモディ首相は外交面で米国に近付きつつある。17年の中国とのにらみ合い以来、インドは米国との間で通信や武器に関する複数の重要な協定を結んだ。またインドは最近、中国企業による現地企業の買収を阻止したほか、国境地帯で道路建設を強化している。一方、中国は過去数十年にわたり国境インフラを構築してきた。その中には中国とパキスタンを結ぶ係争地を通るものもある。また中国は国際社会からの非難を受けながらも香港への国家安全法導入を強引に進めているほか、南シナ海では軍事的関与を強め、台湾に対しては独立に向けたいかなる動きにも警告を発している。

5. 緊張は一段と高まるか

  死傷者を出す衝突の前、インドは小競り合いの深刻さを否定し、中国は対話で問題を解決できるとしていた。多くの専門家は、双方とも事態のエスカレートを望んでいないため、武力衝突の可能性は低いとみていた。考えられる結末の1つはインドと米国の接近だろう。米国はインドも招いた拡大版の主要7カ国首脳会議(G7サミット)開催を呼び掛けている。トランプ米大統領による仲介の申し出は中印両国から退けられた。国境を巡る衝突が他の場所で再び始まる可能性もある。インドは今年、17年に中国と対峙(たいじ)した地域で軍部隊と武器の迅速な移動を可能にする橋を開通させた。

原題:
Why Chinese and Indian Troops Are Clashing, Again: QuickTake(抜粋)

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